第172話:皇勇人Ⅹ〜謎の石像〜
しまった。
いつもスライムを狩っている草原に見慣れない石像が置いてあったから、なんだこれ?とじろじろ見て観察して触ったら知らない場所にいた。
なんだここ。
ダンジョンってやつか?
あの石像は罠だったのか、なんであんな何にもない草原の真ん中に置いてあったのかはわからないけど、現実としてあの石像に触ったらダンジョンの中に転移させられてしまったのだ。
ダンジョンがあるって話は聞いたことがあったけど、まだしばらくは行くことなんてないと思ってたのに、こんな形でいきなりダンジョンに放り込まれてしまうとは思わなかった。
どうしようかなぁ、スライムを狩って卵を取るだけの予定だったから、大した武器とか持ってきていない。
いや、そもそもダンジョンにモンスターがうろついているのだろうか?
この世界は転生してきた生物以外は存在しないらしいし、このダンジョンがどういう経緯で作られたかはわからないが、このダンジョンの中に都合よく転生してくるモンスターがいるとも思えない。
なんだ、もしかしたら案外どうとでもなる気がしてきた。
ただ、転移で入ってきたから出口が判らないんだよな。
一応、転移してきた場所には草原にあった石像と同じものがあるが、こちらは触っても何の反応もない。
同じものだし、元の場所に帰れるんじゃないかと最初の時点で考えていろいろ試してみる。
草原でしたように、周囲をぐるぐると回ってから触ってみたりもした。
結果は今ここにいることで示されるように、失敗なのだが。
とりあえず、部屋の外は迷宮っぽいし、うかつに出て迷うのも嫌だなぁ。
もしかしたら、この部屋にいたら俺と同じように石像に触って転移してくる人がいるかもしれない。
しばらく、この部屋で休んでいることにしよう。
どれくらい経ったっけ…………。
あれから結構な時間が経ったが、石像で転移してきたのはスライムが4匹だけだ。
すぐに倒したが、人が転移してこない。
俺、もしかしてここで死ぬのか?
転生してきて一年も経っていないのに、こんなどことも知れないダンジョンの中で最後を迎えるとかないなぁ。
こうなったら一か八かで、迷宮の方に出るしかないか。
大丈夫だろうか、本当にモンスターとか出ないよな?
とりあえず、迷路の攻略法の右手法を試してみようかな、迷路の中に放り込まれたときは意味がないと聞いたことがあるけど。
やらないよりはマシだ。
「うーん」
ずっと右手を壁について歩いていたら一切迷うことなく外に出てしまった。
結局案じたモンスターと遭遇することもなく、出口は草原の近くにあった。
帰りに草原の方の石像を見に行ってみたらスライムに溶かされてボロボロになっていた。
何だったんだあのダンジョンのようなものは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます