第157話:ニール_キッポⅡ〜本来の目的〜
鬱蒼と繁る森の日の届来にくい場所で闇を身に纏いゴブリンを狩る。
亜人のような見た目だが魔物だ。
かなり低いが知能はあり、道具も扱う。
それでも、魔物として狩られる対象に認定されているのは知能はあっても知性はないかららしいが、我にとっては感触さえ人に近ければなにも言うことはない。
はずだったのだが、やはりゴブリンはゴブリン。
弱いからとかそういうことではなく、何かが違うという、そういう感覚が最近生まれた。
この感覚はどうしたら治まるだろうか。
やはり、人を殺せばいいのだろうか。
そういえば、なぜ我はゴブリンなど狩っているのだったか。
人を殺せない理由などあっただろうか、いやない。
法も人を殺すことを禁止していないし、護身具も無効化できる。
なにより、技術がある。
なのになぜ我はゴブリンなど狩っていたのか、なぜだっただろうか、全く思い出せない。
ゴブリン討伐の証として、一番大きな牙を折り、稼ぎになるから、趣味と実益を兼ねてゴブリンの討伐をしていたのだっただろうかと思い当たる。
違う気がするな、この世界では働かずとも食うに困らぬし、ある程度は衣服も住むところすらをも支給される。
わざわざ、稼ぐ必要がない。
稼ぐためでもないのなら本当になんのためにゴブリンを狩っているのかわからないではないか。
本当に、なんのためだ。
さて、ゴブリンを解体するだけ解体したので、埋めて帰ろうか。
赤く染まった地面を必要もないのに完全に隠したりしていたら夜になってしまった。
人を殺すならばやって損は無いがゴブリンを狩るときにはあまり意味のない行為に思える。
これは、もはや癖だな。
今日の夜は緑で、地面が赤いと目立ってしまうということもあって、普段よりも入念にやってしまったな。
赤い夜だと軽くで良いのだが。
さて、帰るか。
3日後、準備を整えたので人を殺すことにした。
赤い夜だ。
闇に潜み、赤い夜の太陽を見ながら獲物が来るのを待つ。
赤い夜、なんだか妙に引っかかるな。
やめておくか?
いや、問題はない。
準備は抜かりないし、獲物がここを通ることは調べた。
この辺りは人も通らないし、なにも心配はいらない。
さて、獲物が歩いてきた、立ち止まって空を見上げる。
今だ、と闇の中へと引きずり込み、口を抑え、腕を固める。
ひっくり返して、顔を見る、どこかで見たような気がする。
いや、思い出した。
闇よりも暗い目だ。
「なんだ、また貴様か」
その一言を最後に我の意識は闇に溶けた。
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