第119話:ノーフロス・カダマ〜巨大浮遊物体現る〜

 人生、何事も唐突に発生するものだ。

 大事件なんかは特に。


 いつも通りの昼下がり、最近遊びに来るようになった少女と、うちの子マニナが外で遊んでるのを下から眺めながらゆったりしていると、空が暗くなった。

「ガダマさん!なんですかアレ」

「なんだろうなぁ」

 空になんかが浮いてる?

 遠すぎて良くわからないけど、かなり大きい。

「ちょっと、近くまで見に行ってみる?」

「いくー!」

「私も行ってみたいです!」

 二人ともついてくるらしい。

「そうだなぁ、個人機やマニナの翼ではちょっと高すぎるからついてきて、ちょっと大きいのに乗って行きましょうか」

 そう言って研究館の裏にある格納庫へと向かう。

 六人乗りの小型飛行機にお昼ご飯や軽く調査に使う道具を載せて、二人を後ろの席に乗せて、私は運転席に乗り込む。

 魔導エンジンを始動すると、ぐぉんぐぉんと魔力が空間に干渉する音を鳴らしながら機体が少し浮かび上がる。

 そのまま、格納庫の天井を開けて、出発準備はオーケー。

「安全帯はしっかりつけた?」

「ばっちりー!」

「大丈夫です」

「よーし、少し揺れるからしっかり掴まっててね!」

 そうして、私達三人を載せた小型飛行機は垂直に上に向かって発射した。


「大丈夫だった?」

 垂直発射の揺れも収まって、機体が安定したので後ろを見て確認する。

「あんまり、大丈夫じゃないです」

「はわわー」

 まぁ、少しビックリはしているが大丈夫だろう。

「しかし近づいてみたものの、まぁーなんにもわからんなぁ」

 今いるのは大体浮遊物体の真下、

 下からでは、表面はツルツル、浮いている原理を調べてみると、座標操作系の何らかしらで飛んでいるらしい。

「上に行ってみましょうよ!」

「そうだね、下からではなんにもわからないしね」

 一気に加速したかったが後ろの二人のことを考えて、ゆっくりと加速しながら浮遊物体の縁を目指す。

 結構な速度で飛んでいるが、すごい時間がかかった。

 下手な町よりもでかいんじゃないかこれ。

 上がっていくにつれてだんだん全景が見えてきた。

 これは卵か、でかい卵。

 町よりもでかい卵が空を飛んでいる。

 中に空気よりも軽い気体が詰まっている風船みたいなものかとも思ったが、この世界で卵といったら転生卵という可能性もある。

 だとしたらどんだけでかい生物だよこれ、空飛ぶ巨大生物の代表格、飛び鯨でもここまででかくはないぞ。

「降りてみないんですか?」

「降りるって、これの上に?」

「せっかく上ってきたんですし」

 マジかぁ、好奇心凄まじいなぁ。

「もうちょっと様子を見てみようか」

 周りを見てみると、私達と同じように興味を持った人たちが上がってきている。

 しかし、実際に降りてみる人はいなさげだ。

 そんな感じで様子を見ていると卵にヒビが入った。

 やっぱり、転生卵だったっぽい。

 バキバキと砕けていく卵を眺めていると、眺めていると中から街が出てきた。

 え、街?

「すごいですよ、街です街、転生してきたってことはあの街、生きてるんですかね」

「転生してきたってことはそういうことなんだろうね」

 巨大生物の背中に街がある、そんな感じだろうが、最初から街を背負っている生き物なのだろうか?

「あ、あそこ辺りに降りられそうですよ!」

 あ、やっぱり降りてみたいのね。

 まぁ、空飛ぶ街ならばあまり危険でもないだろう。

「ようし、行くよ」

 うまいこと広くなっている場所に着地できた。

 街は迷路のようになっていて、転生してきたばかりなのだから当然、破損などは見られない。

「これは、防衛都市型生物かな」

「防衛都市型生物?」

「そう、たぶんこの街は元の世界が戦争をしていて、敵から守るために街を飛ばすようにしたんだと思う、こうやって生き物にしてね」

 やけに入り組んだ作りになっているのも都市の防衛力を上げるためだろう。

「まぁ、こうして転生してきたってことは落とされたんだと思うよ、住んでた人もどっかのターミナルに転生してきたりしてるんじゃないかな」

 その人たちがこの都市に戻ってくるのかどうかはわからないけど、まぁ、この世界ならこの空飛ぶ都市生物もゆったりと空を漂い続けることが出来るだろう。

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