第95話:マルクス〜レベルシステムと冒険者ギルド〜

 死んだと思ったら転生していた。

 転生って概念は僕のいた世界にもあったし、転生してきた人が、他の世界の知識で世界を良い方向に変えたという話も聞いたことがある。

 彼らは転生したときにユニークスキルを獲得したりして、知識の拡大に役立てたらしい。

 もしかしたら、僕も転生したことによりユニークスキルが手に入っているかもしれない。

 体も子供になってしまったし、ついでにレベルも確認してみよう。

「ステータスオープン!」

 …………

「あ、あれ?ステータスオープン!」

 …………でない、ステータスウィンドウがでない!

 もしかして、この世界ではこの世界のステータスを開くコマンドがあるのだろうか。

 そういえば、案内してくれた人も、共通語を覚えた方がいいとか言っていたな、翻訳のスキルがあれば楽なんだけど、僕は持っていない。

 案内してくれた人は普通に僕に通じる言葉で話していたし、翻訳スキルを持っているんだろうな、うらやましい。

 しかし、ステータスが見られないとなると困ったな、とりあえず、スキルはいいからレベルだけでも知っておきたい。

 レベルを知っておかないと、魔物に出会ったときに逃げるか戦うかも決められない。

 しかし、どうしたらレベルを知ることができるだろうか。




 やはり、実際に体を動かしてみるしかないか。

 とりあえず、走ってみる。

 遅い。

 さらにジャンプをしてみる。

 膝の高さまでしか跳べない。

 落ちていた石を拾って投げてみる、5マトル(マルクスの元世界、ナローズにおける距離の単位、大体5メートル)も飛んでない。

 これは、レベル1だな。

 確かこのぐらいの年齢の時はもうレベル6はあったし、ここまで体が思うように動かないのは初めての経験だ。

 このレベルだと、最弱レベルのフシメコが襲いかかってきただけで死にかねない。

 とにかく、レベルを上げなくては。



 最初のレベル上げといったらやっぱり誰かに付き添ってもらって、ラストアタックを貰うのが一番安全で効率がいいだろうか。

 パワーレベリングだ。

 と、それはいいのだけども、そういうのの護衛を頼むにはどこへ行けばいいんだろうか。

 今いる町は、元いた世界の人が集まっているらしい町で、景色は馴染みのある感じだし、もしかしたら冒険者ギルドも、あるのかもしれない。

 ステータスウィンドウを呼び出すコマンドも冒険者ギルドへ行けば教えてもらえるかもしれない。

 よし、行ってみよう。




 冒険者ギルドはあった、馴染みの建物だ。

 しかし、あまり人がいない?元の世界での冒険者ギルドは常に冒険者で賑わっているものだったのに、どういうことだろうか。

 とりあえず、依頼をするために依頼用窓口に行って、ついでに話を聞いてみよう。

「あのー、依頼をしたいんですけど」

「ギルドカードはお持ちですか?」

「はい、あ、いや、ないです」

 いつもの癖ではいって返事をしてしまったが、この世界に来たときに、なにも持っていなかったことは確認してたんだった。

「もしかしてあなたは、転生してきて間もないのでは?」

「実はそうなんです、それでパワーレベリングの依頼とあと、ステータスウィンドウの出し方を聞きたくて」

「パワーレベリング、ですか?ああ、あなたはご存じないのですね、この世界では冒険者ギルドは日常のちょっとしたお手伝いを依頼してそれにお手伝いさんを派遣するだけの業務になっておりまして」

「どういうこと?」

「実は冒険者ギルドはこの世界で主流の魔物ハンターギルドに負け、未だに冒険者ギルドの方が慣れてるからこちらを利用したいという人が利用しにくるだけのものになってしまいました」

「つまり?」

「パワーレベリングのご依頼は魔物ハンターギルドの方へどうぞ」

 まさか、冒険者ギルドがこんなことになっているなんて。

 元の世界では教会と王国と並ぶ三大勢力の1つとまで言われていたのに。

「あと、ステータスウィンドウの件ですが、こちらをご存じですか?」

 そう言って見せられたのはカードのようなもの、ギルドカードとは違うな。

「こちらは、携帯端末デバイスと言いまして、この世界の誰もが持っているマジックアイテムのようなものです」

 マジックアイテムの、ようなもの?

「初めて見ました」

 いや、確か最初に案内してくれた人が持ってたような?

「そうですか、この世界でステータスを見るにはこの携帯端末デバイスが必要になるので、買っておくと良いですよ、最初に支給されたお金はこれを買うためのようなものですから」

 そういえば、5000パソ入っているというカードを貰っていたな、よくわからなかったが、これが財布の代わりになっていて、支払いはこれを出すだけでいいみたいなことを教えてもらっていた。

 今は5000とカードの表面に浮かんでいる。

「とりあえず、携帯端末デバイスを買うことができる場所への地図を書くので、まずは買ってくるといいですよ」

 僕は地図を受け取り、お礼を言って携帯端末デバイスを買えるという店に走った。

 相変わらず、走るのが遅い。

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