第96話:ユーリメニアスト〜神殺され〜

「なんでこんなことになってしまったかなぁ」

 岩に腰掛け、呟きながら煙草を出そうとするがうまくいかない。

 形だけの物なのだからなくても構わないが、今までできたことができないのは、イライラする。


 この世界は不便すぎる。


 なんなんだこの世界は。

 先刻、この世界に来てから色々確認しているが、まず、この世界を管理しているはずの神が存在しない。

 うっかり他の神が管理している世界に迷い混んでしまったのかと思ったが、神の姿も見えないし、そもそも世界に満ちているはずの神の力を感じない。

 放棄された世界なのだろうか?

 そして、この世界から外に出るためのリンクが無い、迷い混んだからには俺の管理していた世界とどこかで繋がっているのかとも思ったが、それらしいものは見当たらない。

 そして、世界の果てすらないとは。

 まさか、世界を無限という設定で作った結果、神力を薄く広げすぎて消えてしまったのか?


 次に、俺の神力で世界の侵食ができない。

 普通は他神たにんの世界でも自分の周りに神力を広げることで侵食し、一時的に自分の世界と同様に扱うことができるというのに、この世界ではできない。

 神力が濃い世界ならまだしも、こんな全く感じられない程度まで薄いとそんなことはあり得ないはずなのだが。

 侵食が全くできないからタバコも出せない、まったく、誰がこんな世界を作ったんだ。

 そもそも、なんで俺がこんな世界にいるんだ?

 きっかけはなんだ?

 俺はここにくる直前、何をしていた?

 思い返す。

 確か、戦っていた?そう、俺は戦っていたんだ。

 何とだ?神である俺と戦う奴が俺の世界にいたか?

 そんな奴はいなかったはずだが、そもそも、あの世界で俺の存在を知っているやつなんていなかったはず。

 いや、そういえば、何年か前に異物が現れたことがあったな。

 その時は気にもとめていなかったし、たまたまリンクが繋がってしまった他神の世界から迷い混んだ何かがある程度にしか思っていなかった。

 それは他神の神力を内部に持っていて、俺の干渉できない存在だったということもあって、放置していた。

 そのうち、俺の神力に侵食されるだろうと考えていた。

 そう、それだ、その時は全く気にしていなかったのに、それはいつの間にか、強大な力を持つようになっていた。

 それを観察してみようとしたが、未だに神力が残っているらしく、よくわからなかった。

 危険な存在になることを危惧して、力を削いでやろうとも考えたが干渉することもできなかった。

 それは、俺のところにやって来た。

 よくわからないことを捲し立てられ、勝負を挑まれた。

 しかし、俺ではそれに直接干渉することはできず、周囲を改変して戦ったが、神核にそれが持っていた神力をぶち込まれて、俺自身を侵食したんだ。

 それで、俺は消えたはず?

 ここは、人間たちが死の不安を和らげるために空想していた死後の世界のような場所なのか。

 まさか、人間たちの空想が実在していたとはな。

 俺は、力を失った神として、この世界で何をすれば良いのだろう。

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