第94話:ジャン-ベイヤーⅢ〜ロボット戦争(模擬)〜

「我らと勝負せよ!」

 普段通りに営業しようとロボの整備をしていたら、なんか、巨大ロボ、それも、迷彩の塗装が施され、ゴツゴツした装甲で覆われた、元の世界では戦争で使用されていたタイプの重装備な巨大ロボとは違い、おもちゃみたいな、輝く純色の装甲で、細部が尖って、簡単に欠けそうな、確かにかっこいいが、それはどうなのだろう、そんな印象を受ける。

 そんな、巨大ロボが6機、模擬戦用フィールドの高くなっている場所にそれぞれ白、赤、黄、緑、青、紫、の順番に並んで立っている。

 夜のうちにあそこに移動したのだろうか、流石に営業中に入り込まれたら気づくし、巨大ロボの起動キーは厳重に管理しているとはいえ、もう少し防犯意識を強化するべきだな。

 それで、さっきの台詞からするとあいつらは俺たちに宣戦布告するってことか?

 とりあえず、あそこにいられても邪魔だし無視するわけにいかない、話を聞くだけ聞いてみよう。

 どうせ、外部集音マイクぐらい搭載しているだろうと、距離はあるが気持ち大きな肉声で返す。

「繰り返す!我々と勝負せよ!」

「「勝負せよ!」」

 どうやら聞こえなかったらしく、今度は1機だけでなく、他の機体も声を合わせてきた。

 正直、うるせぇ。

 機体内から外に語りかけるなら、指向性スピーカーとか、せめてもっと音量を下げろ。

 理想を言えば、普通にうちのホームページに連絡先があるからそこから問い合わせろ、殴り込みとかお互いに面倒なだけだぞ。

 というか、外部集音マイクもないのかよ、攻撃的な要求だけして聞く耳持たずとか、印象最悪、もし外交なら即反撃から戦争だな。

 さてどうするか。

 といっても、現状から想定できる外部通信装備のレベルから、取れる手段などこれぐらいしかない。

「おめーらさっきからうるせーんだよ!」

 すなわち、俺も拡声器を使い、大音量で相手に話しかけることだ。

 一方的に攻撃されるぐらいならばこちらからもやり返す、外交の基本だ。

 これは普段、外部集音マイクが被弾によって故障したとき、かつ、なんか通信がうまくいかないときのために用意してある、大音量拡声器だ、ある程度指向性はあるが、精度はそこそこ、近くにいると結構うるさい、他の職員には本当にすまんと思う。

 やっと聞こえたのか、返事がきた、返事はきたが、会話する気はないのか、最初の要求が聞こえたことを確認したので次の話に進めたいだけのようだ。音量は変わらない。

「我々はペルフラムス機工騎士団である!この世界で最大の機工戦力を保持していると言われている君たちと勝負がしたい!」

 つまり、実力が知りたいから模擬戦闘がしたいと、いつの間にうちが最大戦力になったんだ、ついこないだまでこの世界には巨大ロボなんてなかっただろ。

 面倒な、とは思いつつも整備を終えたばかりのコンヴァクトの武器を載せ換え、起動する。




 その後、なんとかペルフラムス機工騎士団とやらのリーダーを機体から引きずり出し、説教した。

 とりあえず、粘度の高いトリモチのようなものをばらまき、予想通り高かった機動性を潰し、他のパイロットが操る各種機体で包囲、うちには20機あるから数で圧倒させてもらった。

 俺が先に機体を降りて、相手の機体によじ登る、先程も使った指向性拡声器でコックピットがある場所に直接大音量で話しかけ、穏便に機体を降りてもらった。

 まずは、突然の押し掛けに対してと夜間の侵入、あとは、検分したら武器が模擬戦用ではなかったことも、いろいろとまとめて説教をして、最終的に彼らはうちの職員として働くことになった。

 機体も回収し、装備を模擬戦用に載せ換えて運用することになった。

 今までうちに足りなかった、というか、考えてもなかった軽装で機動力に特化した機体が入ったし、デザイン面でも実用性に乏しい気はするが、好評だし万事うまくいったと思う。

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