第89話:ファクタ=フォークスⅡ〜フワフワペタペタ〜

 先日、まだ人の手が入っていないらしい森に行ってきて、新種の動物を見つけたのだが…………、なつかれた。

 どうやら、天敵となる動物もおらず、餌になる植物は豊富にあるという世界で暮らしていたらしい。

 見た目は首辺りに毛がふさふさと生えており、顔は狐に似ているが、体は爬虫類の体だ。

 よくいる、合成獣キメラタイプの動物だな。

 あまり珍しくないが、狐の頭に爬虫類の体をもつやつは初めての発見で、命名権も手にいれたが、合成獣タイプの新種は命名の自由度が低いので、命名権は売ることにしたのだが、その動物自体にはなつかれてしまったのだ。

 遺伝子データを提出しさえすれば、その動物をどうしようと勝手なのだが、なつかれてしまったのは初めてだ。

 今は、ペットトカゲよろしく、肩に張り付いている。

 うーむ、顔の部分はもふもふしてて暖かいのだが、からだの部分はひんやりだな。

 蒸し暑かったり、寒かったりとちょうど今の時期にぴったりな温度感だ。

 最初は変温動物なのか恒温動物なのかわからず、どういう飼い方をすればいいかわからなかったものの、最近はずっと肩にへばりついた状態で生活しているし、それで問題がなく生活できている。

 まぁ、この手の動物は世界を管理する程度の力をもつどっかの神が造って、箱庭の中に放していた系の動物らしく、見た目通りの生体をしているかどうかも怪しい。

 意外と丈夫で弱らないのだ。



 今日は久々に行きつけの喫茶店にやって来た、ここのマスターは動物が好きだし、きっと喜ぶだろう。

 ドアベルの音を響かせながら店内に入るとすぐ、見覚えのない子供がいた。

「おっと、」

 お客さんだろうか、珍しい。

「いらっしゃい、ませ」

「あら、いらっしゃい。お久しぶりですねぇ、最後に来たのはいつ頃でしたっけ?」

「ああ、確か春季の終わりぐらいだったから半年ぶりぐらいかな」

 入ってすぐ目の前にいる子供を避けながら、カウンター席まで移動する。

 何なんだあの子供は、やたらとこっちを見てくるし。

「あら、その子は」

「ああ、俺がこないだ見つけたんだが、なつかれてしまってね、名前はまだついていないんだ」

 命名権は既に買われたのだが、決めあぐねているようだ、申請された記録がない。

「私がつけちゃダメですか?」

「残念だけど命名権はもう売ってしまったよ、残念だけどね」

「違いますよ、種族の名前じゃなくて、この子の名前です」

 ああ、そういうことか。

 そういえば、個体名は考えたこともなかったな。

「決めてしまってもいいよ、俺は名前をつけるセンスが良くないみたいだからな」

「そうですねぇ、ふわぺたちゃんとかどうです?」

 俺と同等、もしくはそれ以下の名付けだな、まぁ、いいか。

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