第64話:レールン‗ダルー~前世の知り合いは知り合っていない~

 目を覚ました時、そばにいた女性から聞いた話が本当ならば、俺は死んだらしい。

 困ったな、パーティの中では俺だけが蘇生術を使えたから、誰も俺を蘇生させる奴がいない。

 まぁ、街に戻って探せば蘇生術を扱える者ぐらいすぐに見つかるだろう、そうなれば俺は再び彼らの蘇生術師として彼らの冒険を再びサポートできるし、彼らの冒険に支障はない、のだが…………

 俺はあっちの世界で蘇生されてもこの世界にいる俺が元の世界に戻れるわけではないとも聞いた。

 つまりだ、向こうの世界で生き返るにしても、俺はこっちの世界で新しい生活を始めなければならなくなったのだ。

 とりあえず、元の世界で死んだ人たちが集まっている街を紹介されたのでそこに来たのだが、なるほど、殆ど同じような景色が広がっている。

 街という規模ではないがな、あの世界の大国よりも規模がでかいのではないか、見慣れぬ道具や衣服を纏っている者達もおるし、獣人や亜人が差別なく暮らしている、あの世界と風景はあまり変わらずとも、いろいろと違うことが多いな。

「おう坊主、転生してきたばっかりか?」

 若者に話しかけられた、見たところ17といったところか。

「俺を坊主だと?今はこんなナリだが、貴様の倍は生きていたのだぞ?」

「じゃあ、俺は坊主の三倍は生きてるぜ?一回死んだがよ」

 そうか、幼くなっているのは自分だけではなく、他の者もそうなのだったな、見た目で自分を判断されたくないのと同じように、他者も見た目で判断はできないのだな。

「この街のことを教えてやるよ、いろいろ元の世界と違って面倒が多いからな」

「あの世界よりも暮らしやすい世界に見えますが」

「暮らすだけならな」

 この世界、人を騙すメリットなどないような話を先ほど聞いたが、この若者、信用していいのだろうか。

「早くついてきなよ、最近退屈しててな、あっちの世界の話も聞かせてほしいんだ」

 どう暮らすかなどは、実際に暮らしている人から聞いた方がいいかもしれないな。

 ついて行ってみるか。



「ほぉー蘇生術師やったんか坊主、そうかそうか、そいつはいろんなパーティから引っ張りだこって奴やな」

カフェのオープンテラス席に入って話を聞く、この人、昼間から酒を注文してるぞ、ここはカフェであって酒場ではないと思うのだが。

「そんでな、まぁあれよ、この街には同じ奴が複数おる場合があって、」

「お兄さん、ちょっと待って」

今、見間違いでなければ、俺のパーティメンバーが通りを歩いていた、まさか、一緒に死んで来たのか?

「ちょっと知り合い見つけたから、行ってきますね」

「おいおい、話は最後まで聞いて行けよ」

「見失いたくないので」

お兄さんの話を適当に切り上げてさっき見かけたパーティメンバーを追いかける。

別に相手は走っていたわけではないので、すぐに追いつく。

「おい、あんた、モリィだろ」

「え?」

振り返った顔を見て確認する、こいつは俺のパーティにいた破砕魔法の使い手、モリィだ。

「あの、確かに私はモリィなのですが、別の人と勘違いしてませんか?私はあなたのことを知りませんから」

「え…………、すまない、人違いだったようだ」

「おいおい、坊主、人の話は最後まで聞くもんだぞ?今まさに教えようとしたことに突っ込んでいくんだから、びっくりしちまったぜ」

「これは、どういうことなんだ」

モリィだと思った人は既に歩き去ってしまっていた。

「つまりだ、この世界には死んで生き返ったりしてる奴は複数人いるんだよ、例えば今のやつなんかは、見た目23くらいか?つーことはだいたい18年ぐらい前に死んでこっち来た奴ってことだな、お前とそいつが知り合ったのはいつだ?」

「6年前…………」

「そら知らなくて当然だな、出会ってから死んで蘇生したことがあるんなら探せば見つかるさ、同じ奴は一緒に暮らしてることもあるから自分のことを知らない奴に自分のことを知ってる自分がいないかを聞いてみるってのもありかもな」

なるほど、あのモリィは俺と知り合う前のモリィなのか。

「坊主のことを知ってる彼女は大きくても11歳以下だからな、小さい彼女には積極的に話しかけてみな」

「そんな小さいころの彼女の姿なんて知らないですよ」

しかし、今まで蘇生した数だけ同じ人がいるというのはなかなか不思議な街だな。

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