第63話:ユーノン-ロッコ〜奇妙な球体と出会う〜

 学校からの帰り、今日はあまりいいことがなかったとうつむいて歩いていると、足元に変なものが転がってきた。

「なにこれ?」

 変なものといっても、一見、模様があるボール、模様、模様だろうか?

 黒い点が2つ並んで、その下に切れ目がひとつ、顔かもしれない。

 どこかの世界の珍獣?町中に野性動物が現れるって珍しいなぁ。

 まぁ、興味はないかな。

 丁度、蹴りやすい場所に転がってきていたし、思いっきり蹴り飛ばす。

 プギュ、と妙な音をたてて球体は飛んでいく。

「あ、」

 飛んでいった球体は、放物線を描き飛んでいく、ことはなく、壁から出っ張った標識に当たり跳ね返ってきた。

 そしてそのまま、私のおでこに当たった。

「あーもう!なんなのよ今日は」

 何をやっても裏目に出る、何なんだ。

「きさま、いきなり蹴り飛ばすとは、私がいったい何をしたというのだ」

「は?」

 今の誰?透明人間?さっき蹴り飛ばしたときに当たっちゃった?

「こっちだ馬鹿者」

 下から声が聞こえる。

 恐る恐る足元に目を向けると、さっきの球体が喋っていた。

「なんだ、白い下着の少女よ、謝る気があるのか?」

「きゃあああああ!!」

 もう一度、蹴り飛ばした。



 あの後、飛んでいった球体がどうなったかは確認してはいないが、私はその場から走って立ち去った。

 人型ではない知的生命体の話は授業で聞いたことがあったけど、ああいうのもいるんだ。

「ふむ、いい家に住んでいるのだな。マナも安定していて居心地がいい」

 さっきの球体が部屋の中に現れた。

「なんで、私の部屋にいるのよ!」

 唐突なことに慌ててイモヌカのスティック(相手の放つ魔法弾を先端に篭のついた棒で掬いとり、ゴールにぶちこむスポーツ。スティックは先端に篭のついた棒)で、その喋る球体を掬いとり、窓から外に放り投げる。

「なんとまぁ乱暴な小娘だな」

「何で戻って…………」

 その後、何度も窓の外に捨ててもすぐに戻ってくるので諦めた。

「で、何の用なのよ」

「きさま、私を蹴り飛ばしたり投げ飛ばしたり、散々しておいてその台詞か?なかなか胆が座っておるな」

「あ、それは、すみませんでした」

 私は掌を地面に向けて謝罪の意を示す。

「それが、貴様の世界での謝罪なのだな、まぁいい、それよりだ。きさま、我の契約者にならぬか?力を授けよう」

「力ってどんな?」

 もしかして、悪魔の類いだったのだろうか?

「聞いて驚くな?明日の天気が100%わかる力だ!」

「…………いらない」

「なぜだ?突然の雨に降られることもなく、便利だぞ?」

「あんた、これ知ってる?」

「なんだ?」

 見せたのは携帯端末の画面、天気予報のページ。

 この世界の天気予報は120%当たる、予報は絶対に的中するし、五回に一回は人工的に天気を変えてる。

「そんなものが…………、ならば、これはどうだ?濡れた服が一瞬で乾く力!」

「それも魔法アプリでできるし」

 速乾アプリも見せる。

 その後も様々な力を提案されたが、どれもできることだ。

「ぐぬぬ、この世界の技術力は恐ろしいな」

「もう諦めなよ、エロ玉」

「なんだそのエロ玉って」

「あんた、最初に私のパンツ覗いてたじゃない」

「あれは不可抗力と言うやつで、そういう意図は一切ない、そ、そうだ、この力はどうだ?絶対にスカートの中が見えない力!」

「そんなのもあるの?」

「ああ、どうだ?」

「うーん、いらない」

「なんだと!」

「そんなわけだから、私じゃない人を探しに行きなよ」

「それはできない」

「は?」

「私は既にきさまに取り付いてしまった、きさまが力を受け取り、死ぬまで離れることはできん」

「つまり?」

「一蓮托生というやつだな」

 そんなことって、ないでしょ。

 今日はやはり、最悪の日なのだろう。

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