第49話:ライマリー=ナーズⅡ〜太陽の高さから見る世界〜
空の向こうを目指し出発して大分経って、かなり太陽の近くまで来た。
太陽の熱量は凄まじく、完璧に断熱している機体でなかったら、焼け死んでいたかもしれない。
俺の元いた世界では太陽は強い重力を持っていて、近づけば吸い込まれて焔に焼かれてしまうとされていたが、この世界の太陽は全く引力を持たないどころか、逆に微量な斥力を持っているらしく、予定の航路を徐々に逸れていっている。
まぁ、予定の航路はあくまでここを通ろうという程度で逸れたからと言って、特に問題があるわけではない。
そして、下を見れば無限に広がる大地に点在する街があるのが見える、普段の移動はワープゲートを使っているため、気づかなかったが、街と街は案外離れており、直前の道で近くの街と繋がっている。
そして、遠くの方を見る程、街の数は少なくなっていき、その先は燃えている大地があったり、氷の山があったり、不自然な形の雲が浮いていたり、妙な光を湛える森があったりと、想像以上に不可思議な光景だ、今挙げたのはほんの一部で、恐らく今俺が見ている光景は、この世界でも俺一人しか見ることのできないものだろう、そう考えるととても優越感を感じるな。
空の向こうを目指してよかったと思う。
こういう時は一人で来てよかったと思う、友人ならばよいが、大衆から募った見ず知らずだったりしたら雰囲気台無しだからな。
そうだ、こういった高い場所からの景色を撮影しておいて、帰ってから写真集を売りだそう。
さらに、自叙伝なんかも出したら大儲けだな、今日から日記をつけることにしよう。
出発から73日目、藍の日
太陽の真横を通過中、何の気なしに下を見ると素晴らしい景色が広がっていた、空の向こうにある大地にはこれ以上に素晴らしい景色があると俺は信じている。
出発から86日目、緑の日
依然太陽の真横を通過中、そろそろ太陽の半ばを越えてもいい頃だと思うのだが、未だに太陽の半ばを通過中だ、もしかして、何らかの力場があり、太陽の位置を越えることができないようになっているのだろうか。
出発から102日目、紫の日
太陽の半ばを越えられない理由がわかったかもしれない。
今は太陽は地上から離れていく時期で、それに合わせて飛行しているだけのようだ。
…………困ったな、このままだといつまで経っても太陽の位置は越えられないし、書くことも代わり映えしない、このままでは数日もしないうちに内容が「今日はなにもない素晴らしい日だった」ばかりになりかねない。実際今ここに挙げた以外は大体そのようなことが書いてあるだけだ。
そんな日記に意味はないので、もう、何かが起きた時に記録をつけるだけにしよう。
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