第48話:デヴィン・クルッセⅡ〜元勇者の集い〜
「元勇者の集いに新しい仲間が入りました!はい、拍手ー」
司会の人が音頭をとったが、手を叩き鳴らす者、口笛を鳴らす者、腕を頭上で振り回す者など、各々、自文化での歓迎の意を示す。
今日、俺が来ているのは『元勇者の集い』。
元の世界で世界の危機と戦ったりした人たちの集まりだ。
魔物を狩っていたら声をかけられ、元勇者であることを話すと、元勇者の集いに参加する資格があるとかなんとか言われ、あれよあれよと連れてこられたという次第だ。
集まっている人たちも、流石に元勇者というだけのことはあり、すごい強そうな人ばかりだ。
「さて、自己紹介をしてもらいましょう!まず名前と、どこの世界でどんな冒険をしたか、とか?」
「あー、そうですね名前はクルッセ、元の世界はイグニカです。俺が戦っていた魔王は、世界の全てを闇に染めるとか言ってましたね、それが何を意味しているのかはわかりませんでしたが、俺が唯一魔王を倒せる血筋とかいう理由で魔王を倒す旅に出ることになったんです。生まれたときから魔王が世界の危機を脅かしていて、」
流されるままに話始める、話ながらあんまり、今までのことを改めて思い出すことなんてもうないと思ってたなぁ。
「野営の見張り中にペクティがこっそり来てなぁ」
冒険中のロマンスの話に皆が生唾を飲んだり、
「その時現れたのが魔王軍の幹部の死霊術師、こいつの罠にかかった俺たちは無限に沸いてくる死霊の群れに苦戦していた、その時に現れたのが聖騎士のカッツで」
絶体絶命の危機をなんとか脱した時には歓声が上がった。
「そうして、魔王に止めを刺すために剣を振りかぶったとき!俺は死んでしまったのさ」
そうして話を締める、死んで終わったことに、皆は「嘘だろ」「おいおい!世界救えてないのかよ!」「ペクティちゃんは無事なのか!?」とか声が上がる。勝手にペクティちゃんとか呼んでるんじゃねぇ。
「ところがどっこい、世界は救われたのさ。俺がこの世界に来た直後、同じ世界からの転生者が来た、それを聞いたとき俺は仲間が魔王に殺されてしまったのだと思ったのだが、その転生者こそ、なんと魔王だったのさ」
場の盛り上がりは最高潮、雄叫びをあげる者、それに対しうるさいとどつく者、関係なしに酒を煽る者がいた。
「つまり、俺は魔王に殺されてしまったものの、世界を救うことには成功したってわけだ」
今度こそ話を締める。
その後は普通に飲み会になって、酒を飲んでの歌って踊っての馬鹿騒ぎが続いた。
騒ぎ疲れた俺が外の空気を吸いにテラスへ出ると、先客がいた。
見た目は30台程の少しくたびれた印象を受けるおっさんだ。
「お前が魔王を倒すとはなぁ」
話しかけられた、なんか、あの魔王を知ってるような話し方だな。いや、魔王をというより、俺をか?
「俺は魔王の元までたどり着くこともできんかったからなぁ、精々魔王軍幹部と相討ちが精一杯だった」
俺はおっさんを訝しげに見ているだけだったがおっさんは懐かしい日を思い出すように語る。
「俺は死んでしまったが、世界に魔王を倒すための光は残してきた、用意したときは、本当にこの光が魔王の作り出す闇を照らすことができるのかと思っていたが、まさか本当に魔王を討つとはなぁ」
まさか、このおっさんは…………。
「お前は、ちゃんと子供を残してきたんか?デヴィンよ」
「あんた、もしかして俺の、親父なのか?」
「そうだ、ある意味はじめましてって奴だな我が息子よ」
確かに親父は俺が生まれて間もなく死んでしまったと聞いていた、確かにこの世界に来たのが俺よりも25年程前ならば、確かにこのくらいの年になるのだろう。
聞けば俺の親父も勇者として魔王軍と戦っていたらしい。確かに魔王を殺せる血族だと言われていたのだから当然といえば当然か。
そして、魔王軍の力がかなり弱くなり、数年間姿を見せなくなった時期に生まれたのが俺で、その後現れた魔王軍の幹部と戦い命を落としたということだったらしい。
俺が「死んだということは知っていたが、勇者だったなんて知らなかった」と伝えると、「そりゃ、そんなことを子供に伝えてもどうにもならねぇからな、恨みとかで弱いうちに無茶されても無駄に死ぬだけだしよ」と笑いながら返された、そして、その後はしばらく生まれてはじめて、いや、死んでやっと、親父との語らいをした。
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