第34話ライマリー=ナーズ~空の向こうと世界を繋ぐ旅~

 俺はライマリー=ナーズ、今から俺は空の上に見える国を目指して旅に出る。

 なぜか向こうの国とは今まで交流したという記録はなく、ワープゲートもつながっていない。何度か空の向こうの国に手紙とかを飛ばしたという記録は残っているのだが、それらの結果はどれも消息不明になっている。

 あらゆる異世界の技術が集まっているこの世界で、流石に見えている場所にたどり着かないなんて道理がないだろう。

 そんな、浅く楽観的な考えで俺は空の向こうの国を目指すことにしたんだ。

 まぁ、たどり着いたら英雄になれるだろうしな。この世界の歴史に名前を残すというのも悪くないだろう。

 思い付いてから長い時間をかけて俺は準備をした。あらゆる世界の航空術、航宇宙間術を学び、空の向こうを目指すための乗り物を用意し、万が一に備えた魔法修得や、道中訪れるであろう困難を乗り越えるためのトレーニングや道具の数々を思い付く限り用意した。

 動機は楽観的で浅慮だったかもしれないか、実現するに当たり、予想される事態にはすべて対処できるようにして、今日、今この瞬間を俺は迎えた。

 準備をしていた段階で、様々な取材が来てそれに応え続けていたことで俺の知名度は高く、出発のこの瞬間を目撃しようと数多くの人々がこの場所に集まってくれた。

 出発する前最後の言葉を、集まってくれた人達に送り、これで出発する前にやるべきことは全て終わったことを確認し、俺はデュア バークス空の向こうに乗り込んだ。

 システムの動作を一通り確認し、大衆の見守る中、俺は空の向こうを目指して旅に出た。


 とても静かだ……

 今の今まで、大衆から熱烈な声援を受けていたからか、今の一人きりの空間がとても静かに感じる。

 静かだが、無音というわけでもなく、重く響く大出力魔導エンジンの駆動音、各種計器が発する電子音、俺の衣擦れの音と様々な音が響いてはいるが、孤独から来る静寂感はどうにもならない。

 やはり、一人ではなく、複数人で来るべきだっただろうか、あの時、あの取材で「誰か一緒に行く人はいるんですか?」という質問に「いませんよ、一人です」で終わらせるのではなく「共に空の向こうを目指す仲間を募集しています」と付け加えるべきだったのだ。

 準備万端だと思っていたのに、出発してからこういうことに気づいてしまうと気分が沈む、せめて通信機ぐらい積んでこればよかったんだ。会話できないということがここまで辛いことだとは思っていなかった、そもそも、昔はずっと一人だったし、最近の常に人に囲まれてる状況の方がおかしかったんだ。

 失敗したなぁ、と思いつつも、空の向こうを目指す旅は続く。

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