第31話:イムデラ‐ラストル~見えない魔物~

 俺はイムデラ‐ラストル、魔物ハンターだ。しかし、ギルドに登録しているわけではない。俺の狩る対象は、ギルドでは引き取ってもらえないし、その魔物を狩る武器はギルドでは貸し出してもらえない。

 俺が狩る魔物はこの世界のズレた位相に存在している、電獣ビリ。それはこの位相からでは目で見ることはできないため、携帯端末デバイスに特殊なアプリを入れてカメラ越しに見つける必要がある。

 電獣ビリを放っておくとそこら中の機械を狂わせてしまうし、成長したものになると生物の脳に寄生したりする危険な魔物なのだが、この世界でも知っている者は少ない。元の世界でも俺が所属していた組織以外の人間で存在を知っていたのは、電獣を悪用しようとしていた敵の組織ぐらいだ。

 この世界に転生してきて、暫くはこの世界に電獣がいるなどとは思っていなかったが、昔死んだ、組織の人間が電獣を見ることのできるアプリを開発し、連絡を取ってきたのが俺が再び電獣狩りをするようになった原因だ。


 強い電獣の気配を感じ、やってきた都市はテルヴィア。この街は魔力を用いるアイテムを全く使用せず、電力で全てを動かしているという珍しい街だ。まったく、電獣が好みそうな街だ。

 街に入るときに、何重にもボディチェックをされ、魔力を用いる製品を全て預かられた、携帯端末デバイスは魔力を用いる機能を全て封印することで所持を許可されたが、電獣と戦うためのアプリは魔力を用いないのでまぁ問題はない。


 街に入ると、なにやら皆が携帯端末デバイスを見ながらうろうろしていたり、数人が徒党を組んで何かを追いかけているような会話をしている。

「室長、そんな遊んでいないで戻りましょうよぉ、普段そんなに出歩かないじゃないですか」

「何を言うか、これも研究の一環だぞ?人々の間で何が流行り、それによって何が必要とされるかの調査は、私たち研究者に必要なものだ、実地調査というものだよ」

「そんな無茶苦茶な」

 そんな会話をすれ違った男女がしていた、どうやら携帯端末で遊んでいるだけで、電獣狩りをしているのではないようだ。これは好都合だな、携帯端末を用いなければ、電獣の姿を見ることができないのだが、周りから見たら結構滑稽に映るのだ。電獣はその性質上、街中に出現しやすいため、結構注目されてしまう。

 しかしこの街はそういう行動をしている人がなぜか多いため、気にしなくて済む、ありがとう、この街で流行っている遊び。


 周りの目は気にしなくて済むが、この街、元居た世界よりも電獣の反応が多い。科学都市というのはこういうものなのだろうか。

 少し歩いただけで、すぐに反応がある。


 一日歩き回って、40匹程の電獣を狩った。それでもまだ沢山の反応がある。これ程、この街に電獣が出るとなると、俺はこの街に住んだ方がいいな。今日は宿に泊まるとして、明日は電獣を狩りながら役所を目指すか。

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