第7話:ウナ‐ローン~科学の都に住む最強の魔導士~

 ここは科学の都、テルヴィア。元の世界で科学技術とやらが発達してた奴らが集まった国らしく、魔法や錬金術といった、その世界では発展しなかった技術を一切使わないという都らしい。その分、不便なことも多いようだけど、私含め、この街でしか生きられないような人もいるから、助かってはいるね。

 私はウナ・ローン。元の世界では最強の魔導士とか言われてチヤホヤされてた存在だ、そんな私がなぜこの魔法禁止の科学都市テルヴィアで暮らしているかと言えば、それは私の死に方に問題があったとしか言いようがないだろう。私が最強の魔導士と言われてチヤホヤされていたのは五十代前半まで、その辺で国家間戦争が終わって、世界は平和になった。その後私の存在は世界に脅威となるとか言われて、世界中が私の命を狙い始めた。一応、表向きは私は世界平和の立役者みたいな扱いを受けていたが、パーティーに参加しては私の食べる物には毒、飲む物にも毒、帰り道では夜盗の襲撃、死角から何重にも気配を消して飛んでくる死の魔法。そのすべてを私はいなし続け、何年も経ったある日、もう何もかもが面倒になって私は自ら世界の敵になることにした。正直、戦争が終わって、大きな戦いが起きなくなった日々に退屈していたし、そこに現れる命を狙う刺客も低レベルすぎて話にならない。そこで私は、全ての国に攻撃を仕掛け、中立地帯に城を建てて、周囲の猛獣を魔法で操った。

 それに対して、世界の国々は私を討伐対象として定め、世界は再び戦争の渦に飲まれると思ったのだが、思いの外私以外の魔導士も強かった。一対一では絶対に負けない自信があったが、毎日毎日城を攻撃されて眠れてない日々を送っていたとなると流石に私といえども勝てなかった。私は捕らえられ、魔法を封じられて暫く地下の牢獄に封じられていたのだが、地下の牢獄は存外静かで快適、毎日快眠だった私は調子を取り戻し、ちょちょいと私を封じる枷を破壊して、牢獄を破壊、再び世界の敵になるといったことを繰り返していたら魔力が尽きてしまった。そして私は処刑され、この世界に転生してきた。

 魔力が尽きた状態で転生してきたからなのか、私はこの世界では自身の魔力を使う道具どころか、バッテリーに魔力を貯めて使う道具も一切使うことが出来なかった。つまり私はただの人以下になってしまったのだ。

 そうして、私はこの都での生活を余儀なくされたわけだ。実際のところ、この都での生活は初めに聞いていたよりも不便ではなく、楽な生活を送れている。この都での私の仕事は魔術の知識を用いた、新しい機械の開発「魔術に頼らない都」と謳っているいる割には技術の一部は魔術の考え方も使ったりしている。まぁ、そうでもなければ私がこの都で働くこともできなかったので、それはそれで都合がいいというものだ。ありとあらゆる世界から様々な生物が転生してくるとは言っても、私のように魔術が使えないのに、魔術の知識をたくさん持っている人間というのはレアだし、替えが効かないのは私が一番わかっている。

「つまり、長々と私の過去について話したが、何が言いたいかと言えば、どうせ、絶対に仕事をクビになったりすることはないのだから、今日の仕事はサボって家で寝てたいって話なんだ、また世界に敵対するわけにもいかないしね」

「そんなこと言ってないで、出てきてくださいよ!やらなきゃいけない仕事が溜まってるんですってば!ていうか、もうあんたには世界に敵対する力もないでしょうが!」

 研究室の助手君が朝からうるさい。本当に世界を滅ぼしてもいいんだぞ?

「なにおー、じゃあ試してみるかってんだー?」

「そんなこと試す余裕があるんなら仕事してくださいよ!」

 仕方ない、今日も世のため人のため、便利な道具を開発させていただきますか。助手君もうるさいしね。

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