すべての人間の脳に刻まれた『地獄』を呼び起こすためのレクイエム 『虐殺器官』ネタばれ注意!

 

 ということで、今回は伊藤計劃の『虐殺器官』について、あれこれ考えてみたいと思ってます。

 なので、ネタばれ要素を含んでいるので、ご注意を。

 



 警告を入れたところで色々とすっ飛ばしてあの話をします。


 何故、主人公のクラヴィス・シェパードは自らを罰するためとはいえ、あんなことをしでかしたのか。

 劇場版では、ルツィアのため、とか言っていますが、私は違う見解を示しています。

 つまり、どういうことか?

 あの時点で彼は誰かのために行動することをやめている訳です。

 死者は誰も許すことが出来ない。

 だから、ルツィア・シュクロウプやジョン・ポールの死がクラヴィス・シェパードの内面に大きな影響を与えたとしても、彼らはその動機にはなりえない。

 もう、クラヴィス・シェパードを許すことのできるひとはいなくなってしまった。

 だから、彼は自分を罰することにした。

 自らの故郷を戦乱の坩堝に放り込むことによって。

 要するに、彼はなってしまったのだ。

 伊藤計劃氏が恋焦がれた世界精神型の悪役に(このあたりの説明は伊藤計劃記録Ⅱに詳しく記載されているので、気になる方は読んでみられては?)。

 つまり、ダークナイトのジョーカーに。

 劇場版パトレイバーの帆場暎一に。

 劇場版パトレイバー2の柘植行人に。

 クラヴィス・シェパードはそうした世界精神型の悪役になってしまったのだ。

 人間の大脳の襞のパターンに刻まれた『地獄』を心底見たくなった訳だ。

 目を閉じ、耳を塞いでも消えることなく存在するその『地獄』を。

 だからこそ、彼はアメリカ中の人々が互いに殺し合うように祈りを込めて、あのレクイエムを歌ったのかもしれない。


 今日はこのへんで。

 駄文、失礼しました。

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