たまには「セカイ」の話でも
突然ですが、私ってこのジャンル大好きなんですよね。
セカイ系。
昔ほどではないですけど、やはりこのジャンルの放つノスタルジーには抗いがたい魅力があります。
まあ、そこでなんですが、たまには「セカイ」の話でもというわけで、私の好きなセカイ系作品の紹介をしていきたいと思います。
『セラフィック・ブルー』
これなんですよね。
私を「セカイ」の闇に引きずり込んだすべての始まりです。
知ってる人は知ってるけれど、知らない人は全く知らないフリーゲームの超大作。
それが、セラフィック・ブルーであります。
冒頭から文学的な言い回しや漢字を必要以上に多用する独特のスタイルのせいで人を選ぶことに余念が無い当タイトルで御座いますが、ハマる人にはとことんハマる。
実際、私はこれほどまでに作りこまれた設定とストーリーを他に知りませんし、今作を上回るゲームに未だ出会うことができずにいます(それに匹敵する可能性を秘めているのが、ニーアシリーズですがその話はここでは措くことにします)。
何が見事かといえば、物語の終盤で展開される怒涛の伏線回収です。
物語の途中でも伏線回収はあるのですが、それすらも最後の伏線回収に向けた伏線である、という徹底した演出が本当に素晴らしいのです。
で、このゲームが本当の輝きを帯びるのが、以外にも二周目からでありまして、一周目は全く理解できなかった(というより、日本語でOK状態な)キャラクター同士の会話が面白いぐらいに分かるようになるのです。
最近のゲームでよくある強くてニューゲームという姑息な手段を使わなくとも二周目を楽しませることが出来るということをストーリー構成によって証明した文句なしの超大作です。
でも、やっぱりコンシューマー化は無理だろうなぁ。
『戯言シリーズ』
出ました。
西尾維新のデビュー作。
ミステリ作家の登龍門であるメフィスト賞を受賞した『クビキリサイクル』から始まる戯言遣い・いーちゃんのセカイ系ミステリであります。
主人公のエキセントリックさは然ることながら、あの当然顔でミステリからセカイ系ラノベへとシフトしてみせた手腕は凄まじいものがあります。
それも、当然。
だってこれ『ブギーポップシリーズ』のオマージュなんだもん。
セカイ系やらないほうがおかしいよね(爆笑)。
それは、さて措き、私はこのいーちゃんというキャラクターのメンタリティが非常に大好きで、一時期(というか今もだけど)むちゃくちゃハマりました。
恐らく、第二作目の『クビシメロマンチスト』から読み始めたせいだと思うのですが。
この精神性がぶっ飛びまくってそのぶっ飛び方の勢いは最早、留まることを知らない『いーちゃん』というキャラクターに私はどうしようもなく惹かれてしまった訳です。
なので、私的には『クビシメロマンチスト』から読むことをオススメします(正直、素直に『クビキリサイクル』から読んでいたらここまでハマらなかったと思いますので)。
『NHKにようこそ!』
日本放送協会じゃあないよ(念のためww)。
日本ひきこもり協会だよ。
これを終始ノンストップひきこもりギャグ小説として読むことができたあなたはきっと超絶リア充で人生が楽しくてしょうがない方なのでしょう。
末永くお幸せに。
残念ながら私はそうではありませんでした。
主人公に共感・感情移入しまくりで終盤に至っては鬱が止まらなくて、ホームセンターで丈夫な縄でも買ってこようかな? と考えるくらいには気分が落ち込みました。
序盤が笑えるだけに終盤で食らうダメージがやたらとでかい。
けど、近年まれに見る(と言っても15年前の作品ですが)傑作ですよ、これは。
一読の価値は有りかと。
けどまあ、この主人公ってどう考えても『ひきこもり』じゃないんだよなぁ。
今の基準からすれば、ただのニートだし。
あ、余談ですが、作者の滝本竜彦氏はこれを書いた後、重篤なスランプに陥ったそうです。
パワーを持った作品を生み出した代償、といったところでしょうか。
『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』
村上春樹の転換期を代表する作品、なんですかね?
それまでは、独自の文体によって読者を異界へと誘ってきたこの作家が実際に異界を描くことを決意した作品であると私は思っているのですが。
つまり、非現実的な人物描写(まあ、生まれてもいない時代のことをいうのもなんですが、あんなアメリカナイズな喋り方をする人間とかマジでいないでしょw)とあの文体によって読者をある種の楽園に引き込んでいた訳です。
それを、今作では2部構成にすることにより片や現実を(と言っても『やみくろ』なる地底人染みた化物やら秘密結社っぽい二つの勢力が存在するラノベのような世界ですが)片や異世界を描き、いままでになかった異界を構成してみせた訳です。
そして、そこに表出したのは私たちが愛して止まないセカイ系でした。
それに続く『ねじ巻き鳥クロニクル』や『海辺のカフカ』などもはっきりと異界を描写し、やはりと言ってはなんですが、どちらとも気持ちがいいほどのセカイ系なのであります。
まあ、『羊をめぐる冒険』でその予兆はあった訳ですが(いや、でも、その続編である『ダンス・ダンス・ダンス』で結局は鼠三部作で描かなかった異界を見事に描いてしまいましたが)。
でも、村上春樹はセカイ系やらなかった頃の方が好きなんですよね、私。
登場人物の名前をはっきりとは出さずに彼、彼女、渾名で済ましてしまうスタイルとアメリカナイズな会話とあの文体のハーモニーに身をゆだねることが出来たなら、読者は彼の構築する『楽園』をいつでも体験することができたのですから(金持ちが反吐が出るほどに嫌いだが、自らも金持ちである、という苦悩を鼠が抱えていたとしても、或いは、ある日突然部屋に転がり込んできた双子に新聞を読み聞かせている場面で、『僕』が「殆ど誰とも友達になんかなれない」というどうしようもないことを言っていたとしても、そこに広がっているのは絶望的なまでに完成された『楽園』なのです)。
『ブギーポップは笑わない』
正直に言いますと、このシリーズは『歪曲王』までしか読んでないんですよね。
だから、詳しいことを語れと言われても無理なんですが、セカイ系でははずせないかな、と思いいれてみました。
謎の怪人『ブギーポップ』が『世界の敵』なる存在と対峙し世界を救う、というのが主な話の流れですが、その遺伝子に組み込まれたのは『ミステリ』でした。
というのも、誰が『世界の敵』なのか明確に示されないままに物語が進行していきます。
つまり、読者は『ブギーポップ』が物語の最後に現れるまで『世界の敵』が誰なのか知ることができないのです(まあ、推測はできますが)。
セカイ系ミステリの先駆け、という訳ですね。
この作品群が後進作家に与えた影響は凄まじく、上遠野浩平が現れなければ、奈須きのこを初めとするセカイ系作家は存在していなかっただろう、さえ言われるほどです。
……紹介したい作品はまだまだあるのですが、疲れたので、今回はこの辺で。
駄文、失礼しました。
追記
奈須きのこ先生! フェイトとかもうどうでもいいんで、『DDD』の続きを書いてくれませんかね? いや、ホントに。何年、放置プレイするつもりですか?
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