第四部 『ワガママ』

ねぇちゃんと戦おう Act1

「……変だ」


 洋弓銃ボウガンの矢を見た瞬間、セイリは不思議そうに声を漏らす。

 今、彼女にはかつての仲間と戦う恐怖や躊躇ちゅうちょが感じられなかった。


「どうしたんだっ?」


 対して俺は、どこからか敵意を向けられていることに背筋が寒くなる思いだ。

 しかし、襲われている筈の現状に焦らずただただ不思議そうにするセイリを見ていると、恐怖に支配されずに済んだ。


「襲撃のタイミングが思ってたよりずっと早い。それに、数が少ない」

「早い? 数? どうしてわかる?」


 セイリに質問した瞬間、今度はぐいっと彼女に体を引っ張られる。


「うわっ」


 思わず声が漏れた直後、先程まで倒れ込んでいた場所に新たに矢が一本刺さった。


「立って『お兄ちゃん』! まず屋敷の中へっ」


 俺はセイリに支えられながら立ち上がるとドアを開け、屋敷の中へ逃げ込む。

 そして、ドアが閉まるなりセイリは即座に内鍵を掛けて俺に振り向いた。


「とりあえず、あさぎ、史と合流。話は歩きながらでもできるっ」


 有無を言わせないセイリに俺は頷き、屋敷の奥へと進んでいく彼女に付き従った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る