第2話 夕陽または夕日

「夕陽」については、書く事は少ないが、心の中に強くある景色だ。

 一番強く残っている夕陽の景色は、家の近くにある小学校兼幼稚園の、幼稚園の裏門側にあるかなり傾斜のついた坂の頂上から見える夕陽だ。

 裏山のようなものに合わせたような坂で、小学校兼幼稚園もその山に合わせて造られている。その山自体が、周辺では小高い丘ぐらいの高さなのだが、実は、市自体も県内では海抜の高い、安全な市となっている。そう考えると、総合的には、結構な高さのある山なのかもしれない。


 坂の頂上は、坂の上にある家々で全体を見渡す事は出来ないが、その家々が隠す事で、見渡す事の出来る範囲の景色を際立たせている。

 その坂は、歩道と車道一車線の少しだけゆとりのある田舎道で、ずっと見ていると、車が通っていく。その車が、坂道を下っていき、それもまた夕陽の中に程よく合っていたりする。

 右手には、裏山にある小学校所有の畑に繋がる、小さな原っぱ。左手には、こぢんまりとしていて、それぞれに小さな庭のある家々。そして、その間に夕陽とそれに照らされた街。

 小学校の時は、その坂を登る事が少なかった為、中学校に上がって初めて、通学路で通ったそこからの夕陽の景色を知った。中学校の後半になると、坂の傾斜に負け、他の道を選ぶようになってしまったが、それでも、時たまに坂の頂上から見える夕陽を見に行っていた。

“同じ景色は二度見る事は出来ない”

 と、どこかで聞いた事があるが、坂の頂上からの夕陽を見て、本当にそうだと思った。

 毎日、違う夕陽。

 何が、何処が、どう違うのか。

 説明するのには時間がかかるし、人の見方によっては、かなり意見が食い違う。説明なんて出来ないが、毎日違う夕陽を僕が楽しみにその坂を登っていたのは、間違いない。僕の友人の何人かも、その夕陽は綺麗だと言っていた。

 その坂からの朝日も見てみたいが、案の定、夜型人間である僕に、そんな事は出来なかった。

 チャンスがあるならば、いつか挑戦してみようと思う。

 これを書いていると、あの夕陽をまた見たくなってきてしまった。

そんな夕陽について書いてみると、書く事は少ないと言ったものの、今までで一番書いてしまったようだ。

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