第二十二話 ~ 三十分 ~
第二十二話 ~ 三十分 ~
遠くから見たモルドレッドは、細長い指を持つ手は短く、足も短い。対して、頭部が妙に長い。その姿は、なるほど、まさしく闇夜に浮かぶ一輪の夜桜の様だった。
小さくて、美しく。可憐で、儚い。パイロットの少女を思わせる様な、そんな光景だった。
「いいか、お前は大人しくここにいろ」
「え? でも......」
「この距離ならコーラル・シーの全速力で振り切れる。だから、じっとしていろ」
「状況は?」
「例の
「大気圏降下までの時間は?」
「およそ三十分後に降下体勢に入ります」
返答を聞き、
「援軍が望めればまた状況は変わっていただろうが......言っても仕方ないか。一応、対
「はい」
ピリピリとした緊張感が肌を刺す。難しい単語が行き交い、その中で、
艦長席に座るのは、自分と同じ顔の持ち主。今は混乱を避けるためかバイザーを着けているが、中身は自分と同じ人物なのが
「隊長、ミサイル来ます! 数は......八!」
「拡散弾で誘爆させろ! 撃ち漏らしは対空射撃で対応! 頼んだぞ」
「はい!」
艦の後方で起きた爆発の衝撃が、微かに振動として伝わってくる。拡散弾から逃れた一発が
「第二射来ます!」
「撃ち落とせ!」
小刻みに感じる揺れに身を任せる。何も出来ずに、ただメーターに眼を落としていた。
不意に、一際大きく艦が揺れる。非常事態を知らせるアラームが鳴り響き、ブリッジ内が赤く染まった。心臓がどくんと脈打ったのが分かった。
「何が起きた!?」
「艦後部の第三ブースターが被弾した模様! 航行に影響は......!!」
「どうした!?」
報告を行っていた人が、何かに気付いてはっとする。その反応にただならぬ危機感を覚え、
「て、敵機との相対速度、マイナスに転じました! このままですと五分後に接触します!」
「な......っ!!」
降下体勢に入るまで残り約十五分、このままでは間に合わない。
「足止めは出来ないのか!?」
「やってます! ですが、敵機の速度、依然落ちません!」
「くそっ!」
「仕方ない......!」
そんな過ぎ去った、今更どうしようも無いことを考えるよりも、次の行動を起こそうと
「
「
声を上げて立ち上がった
「分かった。ハッチに向かえ」
「......え?」
「十分足止めしろ。いいな?」
『ん? あぁ、
「馬鹿が一人そっちへ行った。自慢のあれを渡してやってほしい」
『あれって......いいのか?』
「あぁ、すまない」
通話口の向こうからやれやれと言った溜め息が聞こえる。それでも快く引き受けてくれた事に、
少しすると、今度は
『
「煌粒子砲の試作品だ。艦砲用に一応造らせてみたが、取り付ける時間が無くてな。小型とはいえ
『わかった』
「なんだ?」
「いえ、本当に良かったのですか?」
「良かったかと言われれば、良くはないだろうな」
「なら......」
「だが、あれには
『聞いてください! シルヴィアさん!』
「......あいつ、オープンチャンネルだとこっちにも筒抜けって気付いてないのか」
コーラル・シーの甲板で
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