第四話 ~ 紅い怪物 ~
第四話 ~ 紅い怪物 ~
崩壊する空の向こうには気味の悪い光が蠢いていた。奇妙なほど色鮮やかな光は、生理的な気持ち悪さを感じる。どう考えても、地球上の生物ではなかった。
「アレス、て......?それに、なんで空が......」
「アレスは.........人類の、敵だ」
沈黙が部屋を包むと思ったとき、勢いよく扉が開き、アンリが息を切らして部屋に入ってきた。
「
「......分かってる、
「......了解」
「
その質問の解答に
眼前の光景に、短い言葉を絞り出すのが精一杯だった。
「これが......」
「そう、
目の前に立つ巨神達に圧倒される
「これは量産機のMPTW-03
呆然と立ち尽くす
現に
「アレスにもいろいろあって、それに合わせて
「そうだけど......聞きたいのは別のことなんだけどな......」
アンリは恐らく自分のであろう
この数日でいろいろなことが起こった。自分がそれに深く関わっていることもなんとなく察した。だが、それだけだ。皆は何かを隠すように、知られることを怯えるように、
「はぁ......」
嘆息する
不意に冷たい感触を首筋に感じ、
「うわ!......て、なんだ
「なんだ、てなによ......折角お茶持ってきたのに......」
「あ、ありがとう、貰うよ」
「あ、あの、アンリさんも飲みますか?」
「......私はいいわ、ごめんね」
「あ、いや、いいですよ、謝らなくて!失礼しました!」
なぜかアンリに謝罪し、その後、
「今出せるのは何機だ?」
「六機が限界かと......」
「アレスの規模は?」
「推定1000体以上と思われます。うち、
「
「どうしますか?」
「
そう結論付け、
「隊長!」
「どうした!?」
「外からの通信なのですが、恐らく救援が来たとの連絡が......」
「本当か!?」
部下の言葉に
「現在戦闘中の機体は機体番号FCCO-B02......ティルピッツと思われます!」
「......っ!ティルピッツ......だと?!」
明らかな怨嗟を込めて、
コックピットの中で、
『
画面の向こうで
「私は大丈夫です。私より、この建造物内の人をお願いします」
精一杯の笑顔を見せたつもりだった。しかしその表情は出雲から見れば、いや、誰から見ても痛々しく、無理をしているのは明白だった。
だが、
『...分かった。でも、無理はするなよ』
「分かってます。では、行ってきます」
その言葉と共に、目の前のハッチが開く。光が射し込み、
黒をベースに黄色いラインの入った機体は、重厚さよりも先に美しさに目を惹かれる。人間のようにシャープな造型も機動性能よりもデザイン性を意識しているように思える。肩にはこの機体の型式番号『FCCO-B02
だが、なんといっても特徴的なのは、機体の至るところに備えられた、紅い光を放つ水晶のような装甲だ。その装甲は、目下に群がるアレスの身体にも同じようについていた。
ハッチが開ききり、ティルピッツが一歩を踏み出す。そして、そのままアレスの大群の中へと落下していった。
「
言葉と共に
「
「システムオールグリーン、形成開始」
その言葉を合図に、紅い光が輝きを強め、そして霧散する。その後、ティルピッツの手には紅い結晶でできた日本刀のような剣だけが残った。
「『
静かに呟き、
その戦力差に顔色ひとつ変えず、
金属を擦り合わせたような断末魔が空気を割って響いた。手足が六本の人型アレス、
仲間を殺され、アレス達がいきり立つ。ナメクジのような体躯の
尚も群がってくる
遠距離からの攻撃は厄介だが、対処法さえ知っていればそれほど強い敵ではない。
そう言っているかのように
アレスにも感情があるのか、一瞬たじろいだように見えた。だが、
迅速に、正確に、安全に。それを体現するかのように、1010体ものアレスは瞬時に無力化された。
アレスの屍の上に立つティルピッツは、窮地から救ってくれた救世主でも、破壊の象徴たる死神でも無く、ひたすらに孤高の戦士にしか見えなかった。
ティルピッツの全身を覆う紅い装甲と手に持っていた刀が消失する。
一瞬の事だった。遠方からでも分かる破格ぶり。通信を受けて直ぐに地上に上がったはずだったが、その時にはもうほとんど終わっていた。
「紅い......怪物......」
風に紛れて誰かが呟く。その驚異的なまでの強さは、怪物と呼ぶに相応しいのかもしれない。だが、
夕焼けに佇む機体はただ儚く、そして、ただ美しいものだったから。
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