第二話 ~ 白い光 ~
第二話 ~ 白い光 ~
「ねえねえ、
「その髪と目って生まれつき? 珍しいよね、灰色なんて!」
人だかりの中心。そこには確かに、あの少女がいた。灰色の髪に灰色の瞳。どこか近寄りがたい雰囲気をまとった少女が。
その少女を、陰から覗くように見る少年の影があった。
「......気になるなら、いけばいいのに」
「だから、別に気になってなんかないって言ってるだろ」
「どうだか」
「お、アンリ、嫉妬か?」
「ち、違うわよ! なんで私が
「うわー、テンプレすぎて逆にひくな、これは」
「ひくな!」
このテンプレすぎるツンデレ、略してテンデレ(笑)な少女はアンリ・ビショップリング。いいとこのお嬢様らしい。少しつり上がった大きな金の眼に、白い肌、華奢な手足、端正な顔立ちは、男子のみならず、女子からの人気も高いようだ。
しかし、本人はお嬢様という立場が気に入っているわけではないようだ。その結果、気品のかけらもない言動をとる少女へと成長してしまったわけである。
「で、彼女は誰なの?」
「やっぱ嫉妬じゃん」
「......っ、し、知り合いなの?」
「俺にもわからない、会ったのは初めて......だと思う」
「......はぁ、なによそれ? どうも煮え切らないわね」
「ちょっとごめんね、
「え、いや、俺はそんなこと」
笑ってごまかしながら、瑞希がその場から離れようとする。しかし、
「聞きたいことが......あるの......」
「俺に......?」
尋ねる
「な......っ!」
「きゃあ!!」
困惑と恐怖の入り交じった悲鳴が耳をつんざく。幸い建物の倒壊はなく、皆軽傷を負う程度で済んだ。
「いったい何が......」
状況の整理がつかない中、キンと校内放送のスイッチが入る音がした。
『初めまして、俺は
荒唐無稽、誰もがそう思った。しかし、現実はそんな事を考える時間すら与えてくれなかった。
「動くな!」
重装備の集団が教室へと乗り込んできた。男達は廊下側の壁を背に並び、逃げ道を塞ぐ。彼等が持っている銃が向けられているのは自分達。意味が分からなかった。だが、放送はなおも続く。
『俺達の目的はただひとつ、
「そ、そんなことできるわけないじゃない!」
「そうだそうだ! お前達テロリストが約束を守るわけないだろ!」
理不尽な要求に生徒達が声を荒げる。皆の声に励まされ、心強く感じた。そんな矢先だった。
「黙れ、人形共が!!!」
正直、まだどこかで楽観視していた。自分達は学生で、狙われる理由なんて持ってなくて、だから大丈夫だと。現実がこんなに残酷だったなんて知らなかったから。
銃声が轟いた。
「や、やめろ......」
その呟きはあまりにも小さく、自分の弱さを表しているかのように幾重にも重なる発砲音に掻き消される。
「やめろ......」
隣でまた一人、頭の半分を消し飛ばされて倒れる。見ているしか、出来なかった。
『ゼス、止めろと言っているだろ』
「う、うるさい! 任務は目標の保護だ! それ以外は殲滅でも構わないだろ!」
インカムを通して
「やめろおぉぉぉおお!」
怒号と共に
「これは......!」
光が弾け、現れたのは、
虚ろな目のまま、
「あれは、
ゼスが慌てて指示を出す。無様に背中を晒すゼスを氷のような視線が射抜く。
「
「聞けばわかる。......だめだな、部下の統制も出来ないとは」
「本部の連中がバカなだけです。
「それでも、部下を失ったのは事実だからな」
先程、
「
「了解」
それだけを伝え、モニターに映る少年に視線をやる。モニターの少年は、血溜まりの中で呆然と立ち竦んでいた。
「俺の考えすぎか、もしくは......」
そう独り言ち、雪夜は瑞希たちのいる部屋へと向かった。
視界は、真っ赤に染まっていた。
後ろには理不尽にも凶弾に倒れた友人が、前にはなぜか身体を分割された名も知らぬ人たちが、何の違いもなく、平等に、赤い湖にその身を埋めていた。
しばらく呆然としていた
「
「よかった......」
カツン――
廊下から足音が聞こえた。
徐々に足音が近づき、そして、男が一人現れた。
「初めまして、
「......っ!」
「すまないが、今お前に用はない。大人しくしていてくれ」
愕然とする
だが、一瞥しただけで
畏縮する体を叱咤して、
「何がしたいんだよ! なんで......こんな!」
「用はないと言ったが?」
「お前になくても、俺にはあるんだよ! なんで皆を......それに、なんで
バイザーのせいで表情が読めない。だが、
「何もしていない......何も、していないからだ」
「何...だよ、それ......?」
「お前に言ってもわからないさ」
そう言って
「ひっ......」
「単刀直入に言う。その子を返せ。お前といるのは危険だ」
「何を今更......!」
「それもそうか......」
けれども、
そして―――
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