第2話 剣道少女からのお知らせ

 私たちの世界は、【火】、【水】、【風】、【土】の4つのエレメントで構成されています。

 万物は水であると言ったり、万物は数であると言ったり、昔の偉い学者様が、結局万物はこの4つのエレメントであると結論づけました。私たちは、そんな世界に生きる中で、一人ずつ、神より与えられたエレメントを一つずつ持っています。

 私は、【火】のエレメント。ですから、火に関するものなら、簡単な魔法が使えます。でも、悲しいかな。火の玉を出したところで、おっぱいは大きくなりません。

 さきほどは、魔法学校なのだから! と豪語しましたが、実は私、魔法もろくに使えません。それもそう、魔法を使うには、緻密な論理設計…つまり数学の能力、呪文を読み書きする力…つまり国語の能力、魔法に関する法律を理解する力…つまり社会科の能力など、魔法の力と学力は、比例する関係にあるのです。

「どうしようー…武奈あー…」

私は幼なじみで唯一の友人である、井口武奈に泣きつきました。武奈はあからさまに顔をしかめて、「ウザっ」と言いました。武奈の家は、和風の屋敷で、庭は広く、そこで武奈はいつも訓練をしています。

「就職するか、勉強しなさいよ…」

武奈は、【水】のエレメント使いだけあって、冷たいです。でも、本当は思いやりのあって優しい良い子なんですよ。私が教科書を忘れてきたら貸してくれるし(武奈に言わせれば、全部暗記してるから問題ないって言うんですけど、さすがにウソに決まってますよねー。ツンデレめー、このこの)。

「ねえー…おっぱいってどうやって膨らむのかな?」

「【風】のエレメントがあれば、ぷくーっていかないかな」

そう。憎き宝満えり子は【風】のエレメント使い。あのGカップは、所詮風で膨らましたに過ぎません。風船おっぱいなんて、まがいものです!

「……ふっ!」

武奈は、竹刀の素振りを始めました。彼女は、剣道部の主将なのです。でも今のかけ声、ちょっと苦笑がまじってませんでした?

「……整形したら?」武奈は、さらっと言います。

「でた! 【金】のエレメント!」

「そんなエレメントはないよ」あくまで冷静に、武奈は言います。「魔法に頼って、アイドルになって、それで桃乃は嬉しいのかい?」

「え……うーん、でも、アイドルになれたら…」

私は、少し返答に迷いましたが、続けます。

「みんなが、応援してくれるし……」

武奈は、こちらをちらり、と横目で見てから、また素振りを続けます。

「そう」

それっきり、武奈は素振りに夢中になってしまいました。


「魔法に頼って、アイドルになって、それで桃乃は嬉しいのかい?」


私は、モヤモヤとしたものを抱えながら、武奈の家の庭を後にしました。

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