第2話 不死の亡者ノエル

心臓を失ったはずのノエルが、そこに立っていた。つるぎで、鬼の腕を、首を、薙ぎ払っていく。つるぎをお手玉のように手から手へ、手から手へと舞わせる。足で鬼たちを牽制し、踊るように鬼たちを倒していく。つるぎが、鬼の頭上へ落ち、垂直に脳に刺さる。跳躍し、つるぎを引き抜くと共に、ナイフを投げて、鬼の目をつぶす。側転し、着地するとすぐさまつるぎで鬼たちの足を薙ぐ。くるり、とターンをすると背後の鬼の心を刺す。つるぎの先端には、鬼の臓器が刺さっていた。

 鬼の臓器を投げすてたノエル。見ると、鬼たちは全員、屍と化していた。

「あ、ありが…とう…」

結衣姫は自分が戦ったわけでもないのに、まるで激しい死闘を繰り広げたかのように疲弊し、息を切らしていたが、とにかく礼を言った。

 しかし、ノエルは確かに一度死んだはず。なぜ。

 ただ、安心感が結衣姫にみなぎった。もしかしたら、この人なら…私に協力してくれるかもしれない。安心感に満たされると、右腕の痛みにまた注意が向く。

「痛……」

「………く、ない?」

不思議と、痛みはひいていた。しかも、問題なく腕が動かせるではないか。

「あの…ノエル…さん」

呼ぶと、いや、呼ぶ前から…気づくと、ノエルは膝からがくりと崩れ落ち、また、“亡者”の体勢に戻っていた。うめき声をあげて、鬼の血の上を泳ぐように這う。

「姉……さん」

「え?」

ノエルは、消え入るように、奈落の奥深くへと去って行った。

「待って…!」

結衣姫は、ノエルを追おうとするが、恐怖と疲れからか、足が思うように動かない。

 声だけが、聞こえる。

「僕は………姉さんが……生きてる限り………生き続ける」

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