第28話 最終デバッグ
【前回までのあらすじ】
尿路結石になったボスケテ!
【シナリオの完成】
不意に押し寄せる激痛に苦しめられつつも、自分のシナリオは無事に完了・実装しました。あすかさんの方も、最終的には自分がチェックをして、細かい部分を修正、実装が完了。それまで常に苦しめられてきたシナリオが、すべて終わったのです。
あすか「オラも大変だったけど、オーナーも大変そうだったよね。終わって良かったよ!」
俺の病気は終わってないけどな(^ε^ )
何事も、終わってしまえばあっけないものです。スクリプトをツールにかけて台本を作り、すぐにボイスコさんたちに渡しました。
【ボイスコさん不足】
ただ、ボイスコさん達とのやりとりの中で、何も問題が出なかったワケではありません。「だよね」と思う人もいるかと思います。つまり音信不通です……が、何ら義務はないですし、こればかりは仕方のない事です。自分としては気にしませんし、また機会があれば遊びに来て貰えれば嬉しいと思うのです。
ただ思うのは……。おそらく、どのサークル様でも同じだと思うのですが、関係者について問題が出た場合には、その言動についてのログやエビデンス類はかなりの長期間に渡って保管される事になると思われます。これは同様のトラブルを回避する為の「実績データ」として、かなり重視される情報となります。
ですから音信不通ではなく、ごく普通の行為として「理由を伝えて辞退する」形の方が遥かにベターであると言えます。辞退する理由が正当であれば、何ら苦言を言われる理屈は無いワケです。
※逆に、正当な理由を伝えたのに苦言を言ってくる様な企画主がいたとしたら、そこには関わらない方がいいと思います。
それと、これは辛い部分なのですが……。あまりにも長期間、収録のメドが立たない為、結果としてはサークル側から断念する旨の連絡をさせて頂いたボイスコさんもいました。納期的には非常に余裕があったはずなのですが、それだけでは回避出来ない状況もあり得るという事です。
スタジオ収録ではありませんし「肉声」ですから、収録が難しい場合もあると思われます。体調的、タイミング的、環境的などの問題で、しばらくは収録が出来ない……などという状況が続くならば、無理なお願いは出来ません。サークル側としては諦める他ないのです。
結果として、自分が担当したルートのヒロインには「CV担当が不在」という状況になりました。ですが、もうボイスコさんのアテはありません。これはかなり深刻で、どうにもならない状況です。週に一度の開発会議にて、すぐにその件が話し合われました。
丹下「このルートはボイス無しにするしかないよ」
卍束「でも、ここだけボイス無しなんて変ですよ。延期して、募集するとか……」
丹下「募集はするけど、現実問題としては何も保証できないし、期待しちゃダメだと思う。開発ルールに沿うなら、ボイス無しって事も覚悟しないと……」
くみろい「ボイスなんて最初から無かったんや~」
開発ルールに沿うなら、存在しないデータは「待たない」事になります。もしくは最終手段も、あるにはあるのですが……サークル規約上は「担当者不在の場合はオーナーが担当する」事になっているのです。
丹下「やむを得ない、ではワタクシが担当しましょう!」
卍束「それはやめましょう」
あすか「やめろ!」
当然の意見です。何が悲しくて、ヒロインにオッサンの声をあてねばならんのでしょうか。現実論としては、せめて女性である必要があると思います。
あすか「仕方ないなぁ、オラがやろうか?」
きえろ
ぶっとばされん
うちにな(^ε^ )
こればかりは、挙手してもらってもOKとは言えないです。実際にボイスを実装してみて改めて感じたのは「声の力はもの凄い」という事です。下手な事をすれば、全てが台無しになってしまいます。それならば、むしろ声がない方が遥かにいいです。
そのヒロインのボイスは諦めよう
そんな結論になりかけていました。でも、まさにギリギリのタイミングで「針山うに」さんが現れたのです。運命とは不思議なもので、これが開発の状況を大きく変える事になりました。
その時の針山うにさんは「全くの未経験者」に思えました。ブログすらありません。ゆえにサンプルボイスを聞いた事も無かったですし、自分から見ればボイスコさんとして「全くの未知数」でした。なのに、mobではない「ヒロイン」のCVを頼むのは(失礼な表現かもしれませんが)勇気が必要でした。根拠となるデータが一切存在しなかったからです。
丹下「いわゆるロリ声に部類されると思うのですが、どうでしょうか? やってもらえるなら……!」
針山うに「頑張ります! でも得意なのは、昔話をするインコのモノマネです」
ごめん、全然意味が分からない(^ε^ )
こうして色々なやり取りをした後、実際に収録してもらう事になりました。まずはサンプルを頂いたのですが、その時点で自分が思ったのは……。
ギリギリのライン
これが本音でした。単体で聞くならともかく、他のボイスコさんのCVと共に再生される事を想定すると「少々キビシイ」と感じたのです。声質というよりは、演技的な技術面で「他のボイスと合わせた時に浮いてしまうのではないか?」と思いました。
ですが、もう時間がありませんし、頼れる人もいません。そして何よりも、こうして協力してくれると言ってくれた事が、自分達にとっては嬉しかったのです。完成させる為に真摯に協力してくれる事が重要ですし、ここで多くを求めるのは違うと思い、全てを委ねる事にしました。
ですが、そこから変化が現れます。当初の自分の予想など、完全に見当違いだったのです。
針山うにさんは収録を進めていくうちに、どんどん上手くなっていきました。こんなにも短期間のうちに、ここまで変化するものでしょうか? そう思った程です。
それと、声質の幅。全く違うタイプのキャラや、更には犬までも担当してしまいました。プレイして下さった人からは「これが同じ人の声なの!?」という反応を頂いた程です。
その頃になると「華子」というキャラのCVも、収録の完遂が難しい状況に追い込まれていました。それも急遽、針山うにさんが担当して、しかも短期間で収録を終えてしまったのです。これはかなり負担がかかったと思います。
こうして複数のキャラを演じつつ、針山うにさんは高い実力を持っている事を証明してくれました。実際に、開発上の危機を乗り切る事が出来たのです。
こぼれ話としては、不足していたCVについて少女春文さんも協力してくれました。自分も何か出来ればと思ったのですが、マ○オさんみたいな声しか出せなかったのでアッサリ諦めました。
【そして最終デバッグへ】
あとは全員でテストプレイ、つまりデバッグをすれば終わりです。このゲームは内部的に「好感度」が存在しますので、注意しなければなりません。その変化によって、多少は会話が変化しますし、エンディングが異なってきます。全てを網羅しなければなりませんが、プレイ中に高速モードを使うわけにもいきません。それではトラジションやらエフェクトやらが確認できないからです。
各自が注意事項を理解した上で作業に入ります。ボイスも全て聞きつつ、誤字に目を光らせ、デバッグ作業が続くのです。ですが……!
1プレイ12時間(^ε^ )
これは辛いです。しかも、どんなに真剣に臨んでも、誤字はなかなかゼロになりません。特に自分で書いた文章というのは、無意識のうちに勝手に脳内補完して「読めてしまう」のです。明らかにアホな間違いで「ひと目でわかるだろ!」というモノですら、自分自身では気付きにくい場合が多々あります。こうして1週間ほどプレイし続けた結果……。
え?なに?何もシラナイ
何もワカラナーイ(゚ε゚ )
そんな状態になりました。「テストプレイなんて、プログラムのデバッグだと思えばいい」そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました。
プログラムのデバッグの方が明らかに気が楽だと、自分は思います。なぜなら、IDEがエラー箇所を示してくれるのですから。
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