第24話 ボイスコさんとの出会い

【前回までのあらすじ】


 次々とボイスコさんが決まったりで、なんだか順調な感じ?



【女性フルボイスとは?】


 丹下学園物語(女性フルボイス版)の完成を目指して、開発は進みます。これが最終版となるのですが……。


 女性フルボイスって何だろ?


 という事で、その点をチョッピリ書いてみます。実は当時、ボイスコさんを探し始めた頃は、男性のボイスコさんを見つける事が出来なかったのです。自分が見た限りでは、ボイスコさんは女性の比率が圧倒的に高い様に感じます。


 それで「男性CVまで実装するのは難しいのではないか」という話になりまして、ならば「女性のみフルボイスという形にしてみよう」という発想に至ったワケです。ちなみに「真・丹下学園物語」では男性CVも含め完全フルボイスを実現する事が出来たのですが、それはずっと先の話となります。



【ボイスコさんとの出会い】


 ボイスを担当してくれた人の中には、その流れでサークルメンバになってくれる人も現れました。それまでも本格的に活動を展開していて、高い技術をお持ちの人です。実はダメ元で「サークルメンバとして力を貸してもらえないか」と頼んでみたら、なぜかOKしてくれた!という事でして……。


 それが「和泉りゆ」さんでした。


 ※ボイスコさんというのは性質上、他の担当種別とは大きく異なる存在に感じます。というのは、開発全体として見た場合、ボイスコさんが活躍できる期間は「非常に短い」のです。ゆえに、ボイスコさんがゲーム開発サークルの専属メンバになるとしたら、さすがにデメリットが大きすぎると自分は思います。その為、サークル規約上にも「ボイスコさんはサークルのかけもちOK」と明記してあって、むしろ推奨する形となっています。多くの場で活躍してもらうのが、サークルとしても嬉しいのです。


 なぜ自分が彼女に声をかけたのか? そこには明確な理由があります。ひとつは、異常なほど長いベースシナリオのヒロインをお任せした時に、とても真摯に対応してくれた事。ヒロインゆえにセリフ数は膨大な数にのぼったのですが、データは常に遅延なく、むしろ前倒しで納品してくれたのです。


 その上、セルフリテイクまでしてくれて、更に水準を高めてくれました。この一連の流れによって、一気にボイスの実装が具体化した面が大きかったのです。こうして納品されたCVは、サークルの皆が一瞬で納得するレベルでした。そして何より……。


 優しそう(゚ε゚ )


 話しかけても「何だこのハゲ?」みたいに冷たくされない雰囲気。つまり「技術と人柄」という事です。その後、ボイス関連については彼女に頼りきりの状態になりました。分からない事や悩んだ時などは、サークルメンバだからこそ頼れるのです。自分からのくだらない質問にも答えてもらったりも……。こうして彼女は、サークルにとって「ボイス関連の要」となる存在になってくれました。



【サークル構成メンバーは?】


 この頃になると、ほとんどのメンバーがセミプロ的、もしくはその方面で生計を立てている人ばかり。そんな状態になっていました。


 どうして、こうなった……?(゚ε゚;


 そういう方向性で、狙って人を募集した事は一度もありません。実際、常に「未経験者歓迎」を大きく掲げていたのです。


 なぜ皆が来てくれたのか

 サッパリ分からん(^ε^ )


 まさにそんな状態でした。なので、ある時に皆に何となく聞いてみたり。


 卍束「そっすね~、他のサークルじゃ使って貰えないだろうし」

 くみろい「ラクそうかなーと思ったもんで」

 あすか「勝手な事をしても怒られないし」


 聞かなければ良かった(^ε^ )


 それと、不思議な現象が起こりました。作品をリリースする毎に、サークルメンバ希望の問い合わせが目に見えて減っていくのです。サークルに実績が出来たり、作品のクオリティが上がるほど、急激に問い合わせが減っていきます。どういう事なのでしょうか?


 おかしい、まともになるほど

 問い合わせが減るなんて……(゚ε゚;


 しばらくの間、そう思っていました。どう考えても、サークルとしては以前よりも格段に良くなっています。開発体制もそれなりに整い、作っているモノも当初とは比較できない水準になっているのです。


 卍束「だから、じゃないですかね?」

 丹下「どゆこと?」


 簡単に言うと「ガッツリと開発に没頭しているサークル」であると誤解されているのではないか?という論です。気軽に参加したいという人たちから敬遠されてしまったのではないかという推測で、実際のところは分からないのですが……。


 あすか「勝手な事が出来て楽しいのにね!」


 そりゃアンタは

 楽しいだろうよ(^ε^ )



【ボイスを依頼する際の注意点】


 少しずつ、各ボイスコさんに依頼してあったデータが届くようになりました。皆さんのペースはバラバラですが、それは特に問題になりません。まだ時間があったからです。それよりも「自分の依頼方法では抜けがあった」と感じた部分がありまして、そのあたりをまとめてみたいと思います。


 ・「一括でUP」より随時UPが安心


 セリフ数が多い場合は、一括で全てのCVをUPしてもらうよりも、途中でも構わないので定期的にUPして貰った方が安心だと思います。進捗管理上の話もありますが、それよりも「その都度、気になった部分をお互いに相談できる」というのが大きいです。全部収録してもらった後で、もしも「こういう方向性が良かった」と思っても手遅れですから……。


 ・一気に収録しきる


 随時UPって言ったじゃねえか!と怒られてしまう話ですが、あまり収録時期に「間」が空かない方がいいかもしれません。というのは、間が空きすぎると「以前と全く同じ声」を出すのはボイスコさんにとって手間になると思うからです。それほどまでに、ボイスコさんの作業は繊細で集中力が必要だと思われます。


 ・振り仮名は入念に


 特殊な単語については誰しも気が回るのですが、例えば単純な人名、固有名詞などについては気が回らない事も多いと思います。そのせいでボイスコさんが読み間違えてしまうと、せっかく収録して頂いたデータが無駄になってしまうのです。これは本当に申し訳ない気持ちになります。


 サークルメンバであれば、そういった部分も開発チャット上でサッとやりとり出来ますが、アウトソース先の人にとっては「渡された情報が全て」なのです。そこを意識しつつ、台本は慎重に生成する必要があります。


 ・「間」を短めに頼む


 演技としての「間」は非常に重要で、そこに雰囲気や心情が込められたりします。大切な部分なのですが、ゲームの場合は「間は短め」かつ「やや巻き」でお願いした方がいいかもしれません。ゲームという性質上、シーンによっては、プレイヤ側は「待たされている」という感覚になってしまう事がある為です。「間は欲しい、けれど心持ち短めに」という事で、無茶言うな!という話ですね……ボイスコさんは大変だと思います。


 ・過去の実績にとらわれない


 これはどの担当にも言える事だと思います。「プロを目指している」という人も、フタを開けてみれば……成果物として実績値を見た時、ごく普通の高校生にアッサリ負けてしまう。そういう状況も普通にあります。


 これはスキルというより、誠意の問題かもしれません。いわゆる音信不通という事ですが、仮にブログ上にズラリと実績が書かれていたとしても、それだけでボイスコさんを判断すべきではありません。実績がなくても「真摯に協力してくれる人」は確実に存在するのです。



【シナリオ問題、再び】


 自分の担当した以外のルートも、開発は進んでいました。ですが、ここでいくつかの問題が発生します。まず、あるルートについて。


 グラフィッカから苦情が出た(゚ε゚;


 率直に言えば「とても読んでいられないレベル」という意見です。そうグラフィッカの皆が口を揃えます。でもまあ、落ち着いて下さい。リテイク要請ならばともかく、これでは「苦情」そのものです。いくら仲間内といえどその物言いは失礼ですし、問題があります。自分が読んだ限り、そこまで酷いシナリオという事は……。


 うむ、酷いな(゚ε゚;


 自分も冒頭はチェックしていたのですが、改めて読み進めてみたところ……かなり酷い内容だったのです。これは単純な「文章の問題」ではありません。何がマズイかと言えば「下品」過ぎるのです。簡単に言えば、主人公が女の子と出逢うたびに、その子を蔑むだけの内容でした。


 どぅへえぇぇ!!

 ナニコレ!? Σ(゚ε゚ )


 おそらくはオモシロ路線で書こうとした(?)のかもしれません。が、かなり盛大に失敗してしまったというか……。中には差別的とも思える内容も含まれていて、とても公開できる内容ではありませんでした。


 しかも進捗的には、まだ全く終わりが見えない状況に思えます。これではとても完成するとは思えません。おかしいです、どうしてこうなったのでしょうか?


 そのシナリオ担当さんと話し合ってみたところ「ならば路線変更するので書かせて下さい」と言ってくれました。その申し出は嬉しいのですが、とはいえ、そのまま頼む事は出来ません。何故なら、それまでにかなりの時間があったはずだからです。なのにこの状態ではどう考えても、今から書き直すスキルはないと思われます。つまり、そのルートの実装は絶望的という事です。


 こればかりは、どうする事も出来ないと思いました。自分としては「このルートはボツにして、次の開発の時に改めて頑張ればいいんじゃないかな?」という提案をする他ありません。ですがその人は、何故か「絶対に書きたい!」と言い張ります。でも、本人にそこまでの熱意があるならば、なぜに進捗が……テキスト量が、たったコレだけなのか? 正直、自分にはよく分かりませんでした。


 本人はそのルートを書く事に固執している様子です。何とも不思議に思えますが、最後はその熱意におされる形で、いま一度お任せする事にしました。まだ他のルートが未完成だった事もありますし、何よりも「書きたい」と言ってくれる担当者を強引に止めるのは気が引けたのです。それだけの気持ちがあるならば、きっと完成させてくれる事でしょう。人を信じる気持ちこそが尊く大切である、自分はそう強く思ったのでしたバックレた。


 やっぱりか……(^ε^ )


 疑う事ばかりではいけないですが、音信不通の前触れのひとつに「不自然な言動」があります。何かしらの矛盾を感じる場合は、やはり本人に隠れた問題が含まれている場合が多いのです。


 こうしてひとつのルートがボツになり、そのシナリオはサークル内で「色々とすごかった」と変な意味で高く評価され、今でも語り継がれる伝説となりました。


 いや、そんな事を言ってる

 場合じゃねえYO! Σ(゚ε゚ )


 このタイミングで1つのルートが消えるのはかなり辛いです。とはいえ「伝説となったシナリオ」を無理に書き進める事も出来ません。そのルートで使えそうなシナリオデータがあるとすれば、かなり昔に自分が試し書きしたデータだけです。とっかかり部分だけを書いた事があったのですが、まさかそれを実装出来るはずもありませんし……。


 ですが、そこにあすかさんが名乗りを上げました。


 あすか「これ、オーナーが書きかけたヤツ? 試しにオラが続きを書いてみようか?」


 !? Σ(゚ε゚ )


 突然の事に自分は驚きました。以前にも書いた通りで、あすかさんはシナリオについて全くの未経験なのです。"不運"(ハードラック)と"踊"(ダンス)っちまう事は、目に見えています。ですが、あすかさんは「ゼロからは無理だけど、とっかかりがあるなら~」と言っています。


 状況としては、この時すでに、あすかさんが担当していたグラフィックは全てが消化されようとしていました。つまり、もうじきあすかさんの手が空いてしまうのです。ならば、ここはシナリオをお任せするのが建設的ではないでしょうか? なにより、本人がそう言っている事ですし……。


 "待"ってたぜェ!!

 この"瞬間"(とき)をよォ!!


 こうして、あすかさんがそのルートのシナリオを担当する事になりました。これについては「大丈夫なのか?」という気持ちもありましたが……ですが、自分としては一気に面白くなってきた感じです。ナゼかって?


 底なし沼へようこそ(^ε^ )


 あすかさんは、自ら足を踏み入れたのです。ならば沈んでもらいましょう。

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