第23話 声優さんはどこに?
【前回までのあらすじ】
新体制になってからは順調で、サークルとして何度か作品のリリースを経験した。そして、ついに最終版となる「丹下学園物語(女性フルボイス版)」を完成させるべく、声優さんを探す事に。
【声優さんはどこに……?】
さて、声優さんを探す事になったワケですが、そういう方々はドコにいるのでしょうか? 当時の自分たちには、全く見当すらつきませんでした。
丹下「どうやって探せばいいんだろ?」
あすか「わからないけど、ボイスがついたらスゴイよね。楽しみだよー!」
そこに至るまでのコストを
考えちゃいねえ(^ε^ )
ですが、そういう「勢い」も大切かな?なんて思ったりもします。目的が明確である事は重要ですし、それがシンプルである程、到達点に向かって走りやすい。あすかさんの様に、達成後のビジョンを明確に持てる事は、ものづくりにおける素質のひとつと言えるかもしれません。
あすか「大丈夫! オラ気長に待ってるよ~」
いや、アンタも
探すんだよ(^ε^ )
何もわからないままに、とりあえず検索してみました。すると世の中には、自分が想像していたよりも遥かに多くのボイスコさんが存在している様子です。ネット上で調べた限りでは、女性の比率が圧倒的に多い様子でした。これならば、もしかしたらヒロインのCVを引き受けてくれる人がいるのかもしれません。意外にアッサリと事が進むかもしれませんね。
そんなふうに考えていた時期が
俺にもありました
【連絡できそうなボイスコさんを探す】
ボイスコさんのブログやホームページは、それこそ無数にあります。それをひとつずつ拝見し、サンプルボイスを拝聴していきます。その際「無償でも引き受けてもらえる」事が明記されているボイスコさんに限定しました。ですが……。
痛い(゚ε゚ )
耳が痛いです。サンプルCVを拝聴する為に、680円のヘッドセットを使っていたのですが、その出来が悪くてギューン!って感じで耳に食い込むのです。すごい痛いです。ボイスコさんを探すというのは、こんなにも過酷な事なのでしょうか。
というか、まずヘッドホンを
買ってこよう(゚ε゚;
で。
音を扱う以上、ある程度はまともなヘッドホンを用意しました。とにかくHPやブログに目を通し、サンプルCVを聞き続けたのですが、その作業は実に数日間に及んだのです。さすがに限界を感じたので、おおよそ100人のボイスコさんに達した所でストップ。その結果……!
100 → 無償受付の明示があるか確認
60 → 音質について確認
30 → キャラに合うサンプルCVがあるか確認
3
こんなに時間をかけて3人!? Σ(゚ε゚;
これは、すごいボイスコさんを求めたという事ではありません。むしろ皆さんが上手くてショックを受けた程です。一昔前ならば考えれない水準だと感じました。こんな時代になっていたとは……!
ただ、音質についてはボイスコさん毎にかなりのバラつきがありました。スピーカーでは気にならなくても、ヘッドホンで聞くと分かやすいです。ハード的な差異と思われますが、音のこもりやノイズが目立つ場合があったのも事実です。その場合は、やむを得ず諦める事にしたので、極端に数が減ってしまったという事なのです。
当時の自分達にはまだ、音声データを上手く加工するノウハウがありませんでした。今ならば、それなりに対応できるのですが……。それと、そもそもサンプルCVだけで判断するのはナンセンスという事です。これも「今にして思えば」なのですが、ボイスコさんのスキルはサンプルCV程度ではありません。つまりは「リクエスト次第」という部分が多分にあります。
キャラのイメージや情報を伝える事で、その雰囲気に合わせてくれる場合もあります。ボイスコとは、自分の様な門外漢の想像を超えて声を操る人たちなのです。ですが当時はまだ、そのあたりを理解出来ていなかった為、色々と難航した部分がありました。
【女性フルボイスの告知】
そんな中で、HP上に「女性のみフルボイスにするぞ!」的な告知を出す事にしました。これで後戻り出来ない事になります。ですが告知する事で、もしも誰かの目にとまって、連絡を貰えたら……などというぬるい事を考えてみたり。ですが、そんな展開になれば苦労はありません。
って、連絡来た!Σ(゚ε゚ )
どういうワケか、ある人から突然に連絡を頂きました。当ゲームのヒロインを名指しで希望して下さっている内容です。正直、驚きました。急いでその人のHPを拝見すると、数々のゲームで声をあてている実績もあり、活動歴も非常に長いです。
なぜ、こんなサークルに連絡をくれたのか……? よく分かりませんが、早速お任せしようという事になりました。我々は手早くデータをお渡ししてワクワクしながら待つ事にバックレた(^ε^ )
覚悟はしていました。最初に連絡下さった人は、そのまま音信不通に……人生、そんなものです。
【依頼のメールを出す】
いずれにしても、ボイスコさんを探す旅は続きます。全女性キャラ分のCVを確保しなければなりません。もちろん自分だけでなく、他のメンバさん達もボイスコさんを探してくれました。
ところで皆さん、どうやら「ボイスコ」という存在にかなり興味がある様子です。話を聞いてみたところ、なにやら非常に人気のあるジャンルという事で……自分には完全に知識がない部分で、そのあたりに疎かったのです。
卍束「声優はイイものっすよ!」
あすか「なんか華があるよねー」
皆は声優さんについてよく話すのですが、そこで色々な人の名前が出ても、自分には1人もわかりません。かつてアーケードゲームばかりで過ごしてきた自分としては、取り残されている感がすごいです。
卍束「でも神谷明さんは知ってますよね?」
丹下「あ、知ってる! オヨネコぶーにゃんの人!」
あすか「なにそれ……」
頼めそうなボイスコさんたちについて、まずは自分がキャラをアサインしてみました。それを叩き台にして皆で話し合い、固めていきます。そして、満を持してボイスコさんに連絡を入れてみる事になったのです。
ですが、いきなり「無償でお願いします」という連絡はどう思われるのでしょうか? いくらブログ上などで「OK」や「歓迎」と書かれていても、何だか気が引けるし申し訳ない気がします。何より「ワケのわからないハゲから脅迫メールが来た」と思われたらマズイです。
あすか「いい返事を貰えるといいなー! 失礼のないように、よろしくよ」
アンタも俺に
失礼のない様にな(^ε^ )
かくして、1キャラに対して1人ずつ、依頼のメールを出しました。
ツイッターもない時代だったのか、
そりゃ大変だなあ(゚ε゚;
そう思う人もいるかと思いますが、そうではありません。このコラムの話は、そこまで昔の話ではないのです。つまり、もっとツイッターを活用すればよかった……。当時の自分は、ツイッターを全く使っていなかったのです。アカウント自体は存在していたものの、まともに利用していない状態でした。ツイッターに限らず、もっと便利で楽なやり方が色々あったのかもしれません。ですが、当時の自分にはサッパリ分かっておりませんでした。
で。
なんと、連絡を試みた皆さん全員からお返事を頂く事ができました。それ以外にも、募集の記事を見て連絡をくれる人もいたりで、次々にキャストが埋まっていきます。さすがに皆さん慣れているらしく、サンプルのボイスまで添付してくれたり。早速、それを皆で聞く事にしました。
卍束「やべ~超かわいいよ!」
この人、中身は
オッサンだな(゚ε゚ )
これで全てのキャストについて、ボイスをお願いできる形が整いました。この時点では、まだ修正中のルートがある事も説明済みです。まずは完成された1ルートについてのみの依頼という事で、それ以外は後ほど改めてお願いする形にて了承してもらいました。これはあまり良くない事ですが、当時はバタバタ状態だった為の苦肉の策でした。本来は「全てのシナリオが完成している」状況にもっていった上でボイスの依頼を出すべきだと思います。
【台本と納期】
まずは完成しているルートの台本について、手早く皆様に送らねばなりません。
……あれ?(゚ε゚;
そういえば。そもそも「台本」とは、どんな形がいいのでしょうか? それに、納期の目安はどう決めればいいのでしょう? サッパリ分かりません。
コレって実は、
超まずくね!?(゚ε゚;
皆に相談したのですが、そのあたりについては誰も経験がない様子です。当時の自分達にとって「ボイスコ」は非常に遠い存在だったのです。
丹下「セリフだけ抜き出せばいいのかな? でも前後の状況が分からないと演技できないよね? 納期とかは?」
あすか「見やすければ大丈夫じゃないかな? で、納期は余裕のある感じでさ~」
アンタ適当なコト
言ってるよね?(^ε^ )
それで、納期についてはザックリと「2ヶ月くらい」と決めました。全く根拠がありません。初めての事ゆえ、自分達の中には「基準」が存在しなかったのです。遅れてもいいヨ♪ みたいな言葉を添えてお願いする事にしました。ぶっちゃけ、それだと納期を決めた意味がないですが、全く急いでいなかったのでヨシとしました。
台本については、スクリプトを元にしてそれっぽく整形するプログラムを急造して自動生成しました。そのボイスコさんが担当キャラのセリフにマークを付けて、一応は見やすく出力した(つもりの)モノです。しかし、そのルートの長さといったら……。
37チャプター(゚ε゚;
それがフリーゲームとして異常な規模である事に、まだ自覚がありませんでした。話のボリューム、つまりはプレイ時間の基準。自分としては、市販ゲームが基準だった為に「1ルートのプレイ時間が5~6時間もあれば短くないよね?」という感覚だったのです。これは良い事ではなく、見方によっては「フリゲならではの軽快さを潰している」とも言えます。いい意味での「手軽さ」もまた大切だと思うのです。今にして思えばボイスコの皆さん、よく引き受けてくれたと思います……。
こうして「女性フルボイス化」の実現は、意外な程に順調に進んでいる様に思えました。ですが、何が起こるか分からないものです。
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