第20話 「ゆるゲ部」誕生

【前回までのあらすじ】


 サルからチンパンジーにジョブチェンジした。



【サークルを別物に】


 それまでの経験を経て、自分の中に閃いたものがありました。


 思いつきとも言う(゚ε゚ )


 サークル規約の見直し。開発上のルールを丸ごと変更する事になります。自分がやりたかった事、つまり目的の主軸となるのは……「一般的なソフトウェアの組織開発ルールを簡略化して、なおかつ趣味の開発に即した形にする」という事です。


 とうとう、ハゲが

 おかしくなった……!(゚ε゚;


 そう思われても仕方無いと思います。普通に考えれば、それらは相性が良くないです。犬猫同士のようなものだと思うのです。犬猿かもしれません。水と油かも?


 それはどっちでもいい(゚ε゚ )


「同人ならではのルール」など、元々存在しないのではないか? そう思いました。


 ・誰にも何の義務はない

 ・開発が停滞しない

 ・誰もが対等であり、納得できる


 それらの条件を「なるべく」満たす開発ルールを自分なりに目指したかったのです。ただし趣味であり無償ですから、カネに絡む部分と、それに付随する話については考慮しなければなりません。そこは自分なりにアレンジする他ありません。


 こうして、改めて規約を考えてみました。全てを書くのはダルいので……もとい、長くなるので割愛しますが、例えば以下の項目などです。


・プロジェクト制。参加したいプロジェクトに、自ら挙手する事で参加する。逆を言えば、サークルに籍をおいたままで何にも参加しなくてもOK。


・納期に間に合わないデータは実装しない。(※その代わり、納期は非常に緩くなる様に設定する)


・多数決が必要になった場合、沈黙および欠席は「true」扱いとなる事を予め了承する。組織としての意思決定を停滞させない。


・多数決の投票期間は2週間ほどを設ける事として、BBSを利用する事もOKとする。もし2週間もの間、BBSすら全く確認が出来ないという事であれば、いずれにしても開発への参加自体が不可能ゆえに諦めてもらう。


 他にも多数ありますが、当時の自分としては非常に思い切った内容でした。


 まあ、なんかまずかったら

 常に相談・修正する感じで(゚ε゚;


「報酬が存在しない」ので、例えば「報酬を大きくするから納得してネ」という常套手段は使えません。ビジネス上では活動の基本であり、切り札ともいえる「カネ」の力。そのモチベータが使えない以上、様々な割り切りも必要になりました。


 もちろん、ルールを固めれば何もかもバッチグー(死語)な状態になるかと言われれば、決してそうではないでしょう。ただ、だとしても。かつては各自が「趣味」「無償」という言葉を免罪符にしがちだったのも事実です。


 それは自分も例外ではなかったと思います。だから最後のギリギリな状況に直面した時に「仕方ないよね」と思考停止・断念する。そんな流ればかりだったと思うのです。それは表面上は優しく見えるかもしれません。ただし、良い結果が得られるかと言えば、そうではありませんでした。


 とはいえ、この方向性。

 どうなんだコレ?(゚ε゚;


 新しい規約案を相談すると、早速あすかさんに質問されました。


 あすか「実装しないって、どういう感じになるの?」

 丹下「ボツって事だから、グラフィックで言えば真っ黒画面になるね」


 無いデータは実装できません。ですが待ち続けたとしても、それがUPされる保証などないのです。むしろデータのUPを義務づけたり期待するよりも「待たなくていいや」という考え方です。担当者が嫌になってしまったのならば、それはもう仕方がない事ではないかと。


 なにそれ、馬鹿じゃないの!?Σ(゚ε゚ )


 そんな反応があってもおかしくないと思っていましたが、誰もそうは言いませんでした。単に呆れていただけかもしれないですが……。



【オーナーという存在の考え方】


 今回の件では「オーナー」についての考え方も変わってきます。まず、オーナーがメンバと約束する事は……。


 ゲームを完成させる事


 それだけです。他は知りません。言い換えれば、クオリティまでは関与しないという事で、そこはメンバの力が全てです。


 本性をあらわしやがった!

 命令だけして「高みの見物」

 全部メンバが悪いって話か!


 たしかに、これでは「ただオーナーの責任が目減りした」だけに思えます。ですが、自分が思い描くオーナーは「ボス」ではありません。他に何かしらの担当を兼ねる事が前提です。つまりオーナーは、必ずメンバーを兼ねる事を必須とします。


 というか既に、

 色々兼ねてる(^ε^ )


 カネが介在しないのだから、オーナーは作業を「頼む側」にはなれません。少なくとも「サークル内」においては、依頼主ではないのです。なおかつ、オーナーこそ「常に作業の当事者である事」が必須だと、改めて思いました。



【新規約で想定される状況】


 例えば、誰かが担当したデータが間に合わない場合は、未実装のデータが沢山! という状態になりかねません。どうすればいいでしょうか?


 関係ねえぜ! Σd(゚ε゚ )


 基本的にそのまま進みます。間に合わなくても待ちません。ですが、誤解しないで下さい。担当者ごとに都合はあるでしょうし、申請してもらえれば延期もOKなのです。その点をゴチャゴチャ言う必要はないですし、無理なく開発したいです。


 納期の延長は「悪」ではない


 明確な理由を提示して、場の皆を納得させれば問題ないわけです。それさえも考慮しないとしたら、理不尽な規約になってしまいますので。


 望むのであれば、誰かに作業を代わってもらうのも構いません。仕事やプライベートの方が重要で、この場はあくまでも趣味であり、無償作業なのです。ただし、逆に言えば「不明確な都合」は一切考慮しない、という事でもあります。明確な理由がない「惰性の納期延長」であれば、それは実質的にはバックレと何ら変わらないからです。


 でも、自分はちゃんと作業したのに、他の誰かが

 バックレたせいで「クオリティがガタ落ち」って、

 納得できなくね? そこんとこ、どうなのよ?


 それについては、場に残っている誰の責任でもありませんので、リスケジューリングが発生します。そういう事態がありえる事を、ある程度は皆に覚悟してもらうしかないです。あらゆる理由により「担当者が不在」となる状況はありえます。その場合は、新しい担当者を募る事も必要になるでしょう。


 なんだよ、やっぱり誰かが担当するまで、

 作業が止まっちゃうワケじゃん?


 そう怒られてしまいそうですが、そうではないです。希望者を募りますが、誰もいなければ……自分がやります。出来るかどうかは、もはや関係ないのです。外部に人を募集しつつ、ですが原則は「オーナーである自分が担当する」という事です。「人が来てくれる事」は自分には保証出来ません。でも「自分が担当する」事ならば保証出来るのです。


 もし、それがグラフィックでもサウンドでも、何であろうと関係ありません。その時は全身全霊を傾ける覚悟をしました。ただし、頑張ったところで酷いデータになる事でしょう。


 それが嫌ならば、

 誰か挙手してネ(^ε^ )


 クオリティはメンバー任せ、という意味はココにあります。他にどうしようもありません。もし余計な作業をしたくないのであれば挙手する必要はないし、それは悪くない。ただ、その結果についても同時に受け止めてもらうしかないと思うのです。


 結果、メチャクチャになったら?


 例えば、場合によっては黒画面だらけのゲームになる可能性もあります。その責任はオーナーにあり「無責任に人を集めてゴミを作らせた詐欺師」という事になります。これは自分が吊るし上げられて当然ですし、反論など出来ません。


 ですが、それならば少なくとも「メンバが悪い」という事にはならないので、それなら自分はOKです。もし自分がこの責任を負えないと言い出したら、この案は提案出来ない事になります。


「誰にも一切の義務はない」という考え方がベースですが、オーナーには責任があります。そうでなければオーナーの意味が無いのです。結果によっては、自分は二度とこうした開発に参加は出来ないかもしれません。でも、それで構わないと考えました。


 これでダメなら、そこまでよ。

 そうなった時はネトゲする(゚ε゚ )


 この吹っ切れ方が良いのか、悪い意味での開き直りなのかは、自分にもよく分かりませんでした。



【託された命】


 ここまでの話を簡潔に言えば「開発が終わってゲームがリリースされた時に、自分が詐欺師になっているか、それともチンパンジーであり続けるか?」という事です。


 間違えた(゚ε゚ )


「開発が終わった時、自分が詐欺師になっているか、それともオーナーであり続けるか?」という事です。その全てをメンバーに託す形になります。皆に、自分の同人生命を預けるのです。


 「同人生命」って

 何だか小さい響きだな(゚ε゚;


 作品が形になったとしても、クオリティが低過ぎる状態になるかもしれません。つまり参加したメンバーにとっては、作業や時間が無駄になるリスクがあるという事です。でも、元々そうだったはずです。これは今に始まった事ではありません。


 メンバー同士が協力出来なければ、ヒドイ作品に一直線でしょう。それは困ります、自分は詐欺師にはなりたくないのです。でも大丈夫、自分は皆の事を信じています。さて、そんな自分の気持ちを受けてくれたのか、皆の反応は……?


 くみろい「パンツ履かせないとダメ? もう描いちゃったんだけど」

 あすか「でもな~、モザイクはやめようよ」


 これは詐欺師になるかも

 わからんね……(^ε^ )


 一抹の不安を感じつつも、サークルは生まれ変わりました。こうして「ゆるいゲーム開発部」のベースが生成されたのです。

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