第12話 時間がない
【前回までのあらすじ】
我々の部隊は今、窮地に立たされていた。驚異的な身体能力を備えた化け物の大群に取り囲まれたのだ。奴らの攻撃を受け、なす術もなく命を落としていく仲間達。我々は万全の準備をして、ここにやって来た。そのはずだったのだ。だが……地球の命運を背負い、遥か遠い星までやってきた我々が目にしたもの。それは希望ではなく、殺戮と絶望だったのだ。
みたいな内容のアニメを見ながら、このコラムを書いていました。前回のあらすじでも何でもないですね。
【募集に伴うコスト】
募集をかけた後、かなりの数のご連絡を頂く事が出来ました。結果として、自分は多くの人たちと接する機会に恵まれたのです。まずメールで、このサークルについての説明を返信。最初に伝えなければならない事は、このサークルの良い点と、入った場合のメリット……のはずですが、自分の場合は逆にしました。
まず「悪い点」について重点的に伝える形です。最初にワーストケースについて理解・納得してもらった上で参加して欲しい、そう考えたのです。言葉は悪いですが、いわゆる「ひやかし」程度であれば、自分からの返信メールを読んだ時点で「やめておこう」となるはずです。本来であれば、連絡を下さった全員とお話ししたいのですが、他作業が多数ある為に時間が取れない状況でした。
サークルメンバになってくれた人には、ここでの開発の流れはもちろん、それ以外の部分でもフォローする必要があります。状況に慣れるまでは入念なケアが必須です。これは募集に伴う必要コストであり、実はかなり大きな負荷と言えます。それでいて削減する事が難しい部分なのです。とはいえ、参加してもらった以上は、
なんか無理だわ(゚ε゚ )
という感じで音信不通になってしまうのは申し訳ないですし、何より「お互いにとって無駄」なので……。そんなワケで、自分がやるべき事は多いのですが、時間が全然足りないという状況。時には外部からの問い合わせも頂きます。ホームページの管理をしたり、足りないドキュメントに気づいた時には追加・整理したりと、地味な作業が多いです。
メンバーさんからの質問も日々あったりします。各担当の進捗状況については、週に1度の定例会議で確認。慎重に作業を進めます。その際、議事録を書かねばなりません。常に雑用が多数発生する感じです。そんな自分の状況に気付いたのでしょうか。あすかさんが優しい言葉をかけてくれます。
あすか「大変そうだよね、大丈夫?」
丹下「そこはほら、分かってた事だからさ」
あすか「だよね、自分で選んだ道だからね~」
選んでねえよ(^ε^ )
引き受けてしまった以上は不満を言う気はないのですが、少々大変になってきたのも本音でした。ならば、せめて採用担当くらいは他の誰かにお任せすればいいとは思うのですが、自ら進んで「担当したい」という人は見当たりません。唯一、あすかさんに頼めそうな気もしたのですが……。
あすか「それって、企画書を渡して……あとは、どうしよ? そんな感じでいい?」
アンタふざけてるの?(^ε^ )
どうやら頼めそうにありません。ですがこれは、あすかさんが悪いワケではないです。自分も仕事上で人の採用を担当した経験がなければ、似たような状態だったかもしれません。
こうして時間の無さに悩まされながらも、どうにか「人の受け入れ」「シナリオ」「雑用」を並行する。そんな状態でした。普通に働いている自分としては、時間を確保するには「睡眠時間を削る」ほかないワケで、慢性的な寝不足状態に……。ツライという程ではないものの、昼間は常に「何となく眠いかな?」という状態でした。
あすか「ところで、そろそろシナリオ終わりそう?」
丹下「え!? あの……時間がなくて、まだ全然……」
あすか「ふーん。時間は上手く使わないとね」
きえろ
ぶっとばされん
うちにな(^ε^ )
【シナリオは順調に】
自分を含め、再び「シナリオ担当が4人」という状態になりました。
それまでの自分は「存在する画像だけを上手く使ってシナリオを構成すればいいや」程度に考えていました。これは通常とは全く真逆の手順になります。まずはシナリオがあって、それに対応した画像を用意するのが普通といいますか、理論上そうなります。ですが、このサークルの成り立ちと経緯から、既にそうもいかない状況でした。
まあ仕方無いか(゚ε゚ )
自分はあまり深く考えていませんでした。というのも、「絵の集合」に対してシナリオを当てはめる様に書く事については、自分は特に困らなかったからです。
ですが他のライターさん達にとっては、それは非常にやりにくいという事でした。自分に出来る事がライターさんには出来ない。不思議な感覚でしたが、それはライターさんとして様々なコダワリがある為である、という事に気付きました。なるほど……。
コダワリを持てるほどの
スキルがない(^ε^ )
そういう意味では、自分は有利だったのかもしれません。そもそもシナリオを書く事には興味が無い為、コダワリ以前の話なのです。なおかつ「使えるのは目の前に存在するデータだけ」という考え方が、仕事柄、染み付いていた事もあります。
そんなワケで、グラフィッカさんには「シナリオ担当から要望の出たスチル画像」をお願いしつつ、ライターさんは各自でシナリオを書き進める形になりました。今度は自分も、各自が日々更新していくシナリオに目を通す様に心がけたり。もしも困っている様子であれば「即時」にフォローする事が重要だと学んだからです。
シナリオの水準は、各担当ごとに格差があったのも事実です。そして書く速さも、それぞれが大幅に違いました。それでも、まずは停滞せずに進んでいる。それだけで十分に安心感があったのです。
ただ、少々「危惧すべき点」について意識し始めた頃でもありました。もしもライター側からの要望が増えていった場合、つまり必要となる画像が増え続けたとしたら、どうなるでしょうか?
たしかにこの場は、見かけ上のグラフィッカ数は多いです。が、もはや実際に「生きている」のは、あすかさんを中心とした数人だけでした。今は大丈夫でも、やがてグラフィッカが過負荷になる可能性も視野に入れておかねばなりません。ここは先手を打っておくべきだと思いました。
その頃、サークルメンバーは常に募集中でした。ですが、グラフィッカが来てくれるとは限りません。なおかつ「金を絡めない」事が、このサークルでの約束事でした。となれば有償依頼も出来ません。
そもそもカネがない(゚ε゚ )
例えば、プロではないけれどこの手の活動に慣れている、そんな「絶妙な立ち位置」の素人さん。もしも、そんなグラフィッカが身近にいてくれたら話は早いでしょう。ですが、ここは元々の自分が苦手だった世界です。知り合いなんて、ひとりもいるハズが……。
あ、1人いた! Σ(゚ε゚ )
既に20年近く同人誌を書いている知り合いがいました。長い付き合いなので、作業を押し付け……もとい、頼めるかもしれません。なので、巻き込んで……いや違います。連絡してみようと思いました。言葉は大切ですね。
気が付けばその時点で、すでに半年ほどが経過したでしょうか。自分もそれなりに、この活動に慣れてきた頃です。グダグダな状況ではありますが、もうすぐシナリオが揃うはずです。後は一気に完成させればいい。しかも先を見越して「知り合いの絵描きと連絡を取ろう」と、そこまでしているのです。もはや自分に、死角はありません。
そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました。
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