第11話 人を募集してみる

【前回までのあらすじ】


 なぜか自分が企画担当とオーナーをする事に。ナゼそうなったのかは正直、自分にも分からない感じ。これはもう、何か不思議な力が働いているのではないかと考えてしまうレベルです。



【募集する前に】


 この時点での自分の担当は以下の通りです。


 ・進行管理

 ・プログラム

 ・シナリオ

 ・企画

 ・サークルオーナー

 ・その他、雑用全般


 どうして、こうなった……?(^ε^ )


 グラフィックとサウンド以外は、ほとんど全て自分が担当している状態です。さすがに面倒そうではりますが、「シナリオ」以外については、まだどうにか対応できそうです。サウンドについてはフリー素材をお借りするのもアリだと思います。


  シナリオ担当かぁ(゚ε゚;


 シナリオ担当について募集をかけたとしても、ここは何の実績もない集団です。はたして、世の中の物書きさん達から相手にしてもらえるのでしょうか? せめて少しでも外ヅラは良くした方がいいと思いました。


 見た目で誤魔化すスタイル


 実際、他にどうしようもありません。そこで着目したのが以下の項目です。


 ・サークル規約の見直し

 ・ホームページの修正


 当時の規約は、そもそもが口約束レベルでした。その上、内容的にも穴だらけ。実効性が低い為、メンバー間で水掛け論になる事もしばしばありました。いま一度、全体的に再検討する必要性を感じていたのです。


 それとホームページですが、これについては改めて眺めるとショボすぎました。もはや丸ごと作り直した方が楽そうです。誰だよコレ作った奴は!


  ワタクシです(^ε^ )


 他の誰かがメンテナンスする事を前提として仮に用意したはずが、結果としては誰もメンテナンスする事なく。結局は、自分で泣く泣くホームページを作り直す事になりました。こういった「スケジュール上には載らない雑用」というのは、サークルを運営する上で無数に存在します。以前「皆様のしもべ」と表現したのは、そういった意味もあるのです。


 さて、規約を整理・追加したので、それについてはメンバーの皆に告知して了承を得なければなりません。「知らぬ間に変更されていた」となれば後出しジャンケンですし、大問題になりかねませんから、しっかりと注意深く伝達する必要があります。これについては、特に問題なく済みました。必要最低限かつ妥当性のある規約にした(つもりな)ので、話はスムーズでした。



【募集を実施する】


 ところで、人の募集はドコですればいいのでしょうか? フリーゲームに全く興味を持たない自分にとっては、完全に手探り状態です。自分なりに調べて、募集できそうなサイトを見つけましたが、どんな文章で募集すればいいのか……?


 かなり悩みましたが、考えるのがメンドウになったので普段のビジネス文書と同じ感じにしました。人を募集する場合、明確にしておくべきポイントがあります。


 ・募集する担当種別と人数

 ・作業の有償 or 無償

 ・想定される作業期間や工数など

 ・募集形態(サークルメンバ or 外注 など)


 他にも色々あるとは思うのですが、詳細な情報についてはサークルのホームページ上に公開する形でも問題ないです。ないと思います。たぶん。とにかく誰かに来て欲しい。開発が停滞している状態は、非常に危険なのです。だからと言って、自分がシナリオ担当になるのは無理です。祈るような気持ちで待ちました。



【殺到する応募】


 しばらくして、予想外の事が起こりました。募集記事を出してから半月程度の間、3日に1通程度のペースで「サークルメンバ希望」のメールが届くのです。


 え? それだけ!?


 そう思う人もいるかもしれません。ですが「誰からも相手にされないのでは?」と思っていた自分からすれば、


 すごく……多いです(゚ε゚;


 そんな感覚でした。自分は仮のシナリオを書き進めつつ応募メールに返信したり、skypeでお話を伺ったりと、かなり忙しい状態に。結果、数人のライターさんを迎え入れる事になりました。予想外にアッサリと人が来てくれた事には驚きましたが、これで停滞から脱出できそうです。


 余談ですが、募集時に「応募が多い」担当種別は、おおよそ以下の順でした。


 1)シナリオ

 2)グラフィッカ

 3)プログラマ

 4)サウンド


 上記以外については募集をかけた事がないのでよく分かりません。それと、これは当時の自分の経験でしかないので、今となっては何の参考にもならない気もします……。



【複数人でシナリオを書く】


 さて、ライターさんが来てくれて嬉しい限りですが、問題もあります。「どの様にして複数人でシナリオを書くか?」という事です。一見難しそうなテーマですが、実は考えてありました。以前に自分が企画書を書かされましたが、その時から想定はしてあったのです。


 その時点では、男女4人ずつのキャラが存在していました。ゆえに4組のカップリングが成立する事になるので、4つのルートを実装する話に。これは今にして思えば


 無茶するな(゚ε゚;


 という話です。ただでさえ状況がキビシイのだから、ここは少しでもボリュームを抑えて速やかにプロジェクトを終わらせるべきだったと思います。ですが、シナリオ担当さんが3人も来てくれたので、気が大きくなっていたのかもしれません。自分も含めれば「1人が1ルートを担当すればOK」な形となったのです。


 って、結局は俺もシナリオを

 書くのかYO!Σ(゚ε゚ )


 自分はシナリオを書きたくないので、あと1人ライターさんが来てくれる事を祈りつつ。とにかくその場は、4人で書き進めるという事で話が進みました。


 「各ルート間で話の整合性をとるのが大変ではないのか?」そう思うかもしれませんが、その点は心配無用です。


 1)ゲーム冒頭で主人公キャラを選ぶ

 2)その時点で各ルートに分岐


 これで各ルートが完全に分離されます。あとは各自が自由に書くだけです。ただし、それでは当然「ルート間で話の整合性」は取れません。あるルートではA男とB子は恋人同士としてイチャイチャしているかもしれないし、あるルートではB子がA男にめくりアッパー昇竜拳をブチかましているかもしれません。ですが……。


 関係ねえぜ! Σd(゚ε゚ )


 ルートごとに主人公とヒロインを固定するものとして、なおかつ、各ルートはパラレルワールドとして割り切る事に。とにかく、誰でも気軽にシナリオを書ける形としては、それくらいしか思いつかなかったのです。


 来てくれた物書きの皆さんに説明すると「その程度ならすぐに書けます」と余裕を見せてくれました。さすがに、物書きを名乗っているのは伊達じゃない!そう思いました。そのまま各自が、すぐに作業に突入していきます。いまだかつて、こんなにも安心して作業をお任せ出来た事があったでしょうか?


 バックレた(^ε^ )


 半月が過ぎた頃、早くも数名と音信不通になりました。きっとサークル側、つまり自分に何かしらの落ち度があったのでしょう。凹まないと言えば嘘になります。担当者が不在となり、書きかけで捨てられたシナリオデータ。そのファイルを削除しようと思ったのですが……。


  あれ?(゚ε゚;


 見れば、ファイルサイズが異様に小さいです。半月も経過しているのに20kbにも届いていません。その頃には自分も、多少はシナリオを書く事に慣れつつありました。普通に書き進めた場合、1日に2時間作業して10kb前後のペースです。ですが自分はプロットを書かない(というより当時はプロットさえ知らなかった)事もあって、日によって文章量にムラはありましたが……。


 とにかく、これはおかしな事だと自分は思いました。ライターであれば、サル以下の自分よりも遥かに書くペースが速いはずだと考えていたからです。なのに、明らかに成果物が少な過ぎます。


 冷やかしだったのか……(゚ε゚;


 元々、書く気がなかった。最初はそういう事なのだろうと思いました。ですが、残された文章を何となく読んでいるうちに、更なる違和感に襲われたのです。


 明らかに、自分よりも文章が弱いように感じました。書きかけではありますが、冒頭のツカミも非常に弱く、ストーリ自体にも魅力を感じない様な……? そこで、日々シナリオを読み漁っていたらしい、あすかさんに話を聞いてみました。あすかさんは暇人なのでしょうか?


 あすか「そのシナリオって最初の数日だけで、それ以降は書き進めてなかったよ?」


 自分はその状況に全く気付いていませんでしたが、話によれば「行き詰まっていた様子」との事です。それって、もしかして……。


 物書きさんでも「書けない」って事があるの!?(゚ε゚;


 自分の頭の中には「仕事でご一緒したシナリオライターさん」の姿があって、その人たちと無意識のうちに重ねて見てしまっていた部分があったのかもしれません。そのせいか、全く心配などしていなかったのです。


 それに皆、口を揃えて「すぐ書けます」と言ってくれていたのです。だからこそ行き詰まる可能性なんて、自分は想像すらしていませんでした。それならば、なぜ相談してくれなかったのでしょうか。


 とは思ったものの「シナリオ初心者のあやしいハゲに相談しても仕方ないっしょ」と考えたならば、それは適切な判断かもしれません。その頃の自分がシナリオについて何かアドバイスが出来たかといえば


 なんか、アレですよ!

 頑張って下さい!Σd(^ε° )


 くらいの事しか言えなかったと思います。


 あすか「正直、そのシナリオよりもオーナーのヤツの方がすんなり読めるよ?」


 これは、にわかには信じがたい意見です。もしかしたら、それはあすかさんの気遣いかもしれません。それはあすかさんの優しさであり、専門外ながらも頑張っている自分に対する、ねぎらいの言葉なのでしょう。自分は知っています、あすかさんはいつも無茶ぶりしてくるけれど、実はこんなにも優しい面があるのです。


 あすか「オーナーのシナリオも微妙だけど仕方ないっていうか、ギリで許せるよ」


 ぶっ飛ばすぞ(^ε^ )


 以前にあすかさんは「シナリオは無理だったからやめた」と言ったクセに、やけに上から目線です。何とも腹立たしい言い分が含まれていますが、少なくとも「気遣い」で言っているワケではない様子です。もしかしたら書き続けているうちに、自分も多少は文章が上達したのかもしれません。でもその時は、サッパリ自覚など出来ませんでした。


 こうして出会いと別れを繰り返しつつも、どうにか開発は進みました。でもそんな中、シナリオが鬼門である事を痛感させられる事件が起こるのです。

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