第9話 シナリオという苦行
【前回までのあらすじ】
気がつけば、全員がシナリオを放棄する事態に。「誰かがやるだろう」的な雰囲気の中で、泣く泣く自分が挑戦する事に……。
【シナリオという苦行】
そんなワケで、自分はサンプルシナリオを書き始めました。でもスタートと同時に、いきなり手が止まります。何を書いたらいいかサッパリ分かりません。それは当然の事で、元々シナリオを書くという行為自体に、自分は全く興味がないのです。もちろん、そのスキルも持ち合わせていません。
ツライ……(゚ε゚;
それは自分にとっては「苦行」そのものでした。普段目にする文章といえば、技術資料のみ。ちなみに小説類は一切読まないし、興味もありません。自分の頭の中は、おっぱいとアーケードゲームのみ。文章を書くのは嫌いではないものの、ゲームのシナリオと言われたところで、全く何も浮かんで来ないのです。
画像を見たら何か思い浮かぶかもしれない。そう思い、あすかさんの描いたイケメンキャラの画像を開いてみました。そしておもむろに眺めます。
無駄に爽やかな顔しやがって……!(゚ε゚;
眺める程にイライラするだけでした。それくらい本当に、何も思い浮かばないのです。無理です。技術的な部分や開発進行ならともかく、今回ばかりは……自分では、どうにも出来そうにありません。担当外だし、こんなモノやってられるか!という話です。ヤメだヤメ。もー無理、マジでホントに無理。
いや待て、落ち着け自分(゚ε゚;
ここで自分が投げ出したら、本当にプロジェクトが終わってしまうと思いました。それに、気負う必要はないのです。書こうとしているのはあくまでもサンプル。適当でいいのです。とにかく無理矢理にでもいいから、何かを書かないと……という事で、思いつくままに書いてみる事にしました。
で、どうせなら直接スクリプトで記述しようという発想に。自分が作った簡易スクリプタですから、頭を使わずにそのまま記述できます。そこでまず、あすかさんの描いたイケメン男子たちを画面上に登場させてみました。で、何かこう、それっぽい掛け合いを……ハイ! ここでセリフ!
キャラA「バカヤロウ! お前、花子の気持ちを考えた事があるのかよ!」
キャラB「参ったな。丹下さんのイケメンぶりには、かなわないや……」
なんだこれ。花子って誰だよ(゚ε゚;
ワケがわかりませんが、この際、内容はどうでもいいのです。このサンプルを見た事によって、自分のキャラが喋ってる!ゲームっぽくなってきた!シナリオを作るのって楽しそう! 皆がそう騙されてくれればゲフンゲフン。興味を持ってくれれば十分なのです。とにかく「何となくそれっぽいならOK」と思いました。
「存在しない叩き台は、叩く事さえ出来ない」
これはひとつ真実です。とにかく書き続けて、たたき台になればいいのです。少なくとも「何もない」という状況からは脱しなければなりません。
では次に選択肢を出して、よりゲームらしい振る舞いにしてみましょう。
「呼び鈴に気づいた俺はドアを開ける。そこには、ひとりの女の子が立っていた。」
【部屋の中に入れる】
【追い返す】
んー、「だから何だ」という感じ(゚ε゚;
ここは刺激が欲しい気がします。よし、それならば……!
「彼女は突然に襲い掛かってきた!」
「あなたは90兆のダメージを受けた! 国家予算レベルだ!」
唐突すぎた(゚ε゚;
どうも上手くいきません。では、いま少し情景描写を増やしたら、雰囲気のいい文章になるのでしょうか? そう思い、少し慎重になって書き進めてみました。
「俺は乱暴に戸棚を開けると、インスタントコーヒーとカップを乱暴に取り出す。そしてカップを乱暴にテーブルの上に置き、その中にコーヒーの粉を乱暴に注いだ。」
無意味に乱暴者になった……(゚ε゚ )
これはいけません、もっと優しい感じにしてみましょう。
「俺が優しくポットの頭に触れると、その下にある口から、勢い良く熱い液体が溢れ出る。それを零さない様に気遣いながら、俺はカップで受けとめた。やがて俺は、そっとポットから手を離す……。だが液体は、まるでだらしなくピチャピチャと音を立てて滴り落ちるのだった。」
……何か違う(゚ε゚;
ですが、この際もう細かい部分は諦めて、とにかくキャラやセリフが画面に表示されればヨシとしました。こんなの、自分にはどうしようもないって事です(逆ギレ)とにかく進めるしかありません。
【サンプルシナリオのお披露目】
さて、内容はヒドイものの、とにかく作ったものを皆に見せる事に。シナリオとしては「まさにゴミ」という内容で、あくまでも仮のものです。でもいいのです。スクリプトエンジン上、つまり実際のゲーム上にいくつかのキャラを登場させて、それっぽい雰囲気を醸し出せればいいのです。
ゲーム上では、あすかさんのキャラの水準が飛びぬけて高い事もあって、非常に目立っていました。心なしか本人もご満悦の様に見えます。
今のあんたの気持ちと、
ゴミみたいなシナリオを晒して
グッタリ中の俺の気持ちを
今すぐにすり替えたい(^ε^ )
内容はともかく、実際に描いたキャラが登場する。これはかなり効果的でした。あすかさん以外の人たちも、かなり興味を持ってくれた様子です。これぞ計画通り!という感じです。
これを見た事によって「かつて皆で集まり、作り始めた頃の気持ち」を取り戻して欲しい。そう思っていた矢先に、自分はあすかさんから質問されました。
あすか「コレって作るのは大変なのかなぁ?」
素晴らしいです、とてもイイ質問です。あすかさんには、自分の意図が十分に伝わっているのでしょう。自分としてはその質問に乗っかる形で、一気に場の皆にアピールする事が出来ます。
丹下「いやいや大丈夫! 簡単だよ!」
あすか「そうなんだ! こうして実際に見ると嬉しいね~」
丹下「だよね! すごい手軽に作れるからさ!」
あすか「そっか~。じゃあこのまま、よろしくよ」
え……?(゚ε゚ )
一瞬、固まりました。いや違う、待ってくれ。そういう事じゃないんだ……!「誰でもスクリプトが組めるし、ゲームが動くのは楽しい事だ」という事を伝える為のデモであって、決して「自分がシナリオを担当する」という意味ではないのです。
丹下「いや、それはちょっと……」
あすか「手軽に作れるなら良かったよ」
丹下「え!? う……ん。そう、だけどさ……」
確かに「手軽」と言いました。でもそれはシナリオの事ではなく「スクリプトの記述」についてなのです。自分にとってシナリオが簡単ならば、あえてゴミみたいなシナリオをお披露目したりはしないでしょう。
ごめん、ウソでした! Σd(^ε^ )
今さらそんな事は言えない雰囲気です。マジでヤバイ超ヤバイ。自分にシナリオが書けるとは思えません。こればかりは本当に無理なのです。しかもこの状況、冷静に考えると……。
・開発進行管理
・プログラム
・シナリオ
・HP管理ほか雑用全般
気が付けば自分だけが、やけに色々と担当している状態です。
わし、もうすぐ
死んでしまうん……?(゚ε゚ )
なぜ毎回、こうなるのでしょうか。引っ込みがつかなくなった自分は、強く「身の危険」を感じていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます