第6話 出来る事と出来ない事
【前回までのあらすじ】
背景やキャラクタ、それらの画像データを作り進めている状況。ゲーム画面上にキャラクタが表示される日は近い。かもしれません。わかりません。
【それぞれのコダワリ】
時間の経過と共に少しずつ、開発チャット上の会話内容に変化が現れ始めました。細かい話や、各自のコダワリ等の話題が増えてきたのです。これは作業に慣れてきた証拠でもあります。例えば……!
・各キャラで光源を統一しよう
・服のテクスチャサイズを正確に統一しよう
・制服の色について各自でRGB値をチェック!
絵が専門ではない自分としては、そんなやりとりを心強く感じました。もちろん、他にも色々な話が……。
「メガネ男子っていいよね!」
自分もメガネ男子です。どうでもいいですね。了解です。
「BLが大好きです」
そうなんですね。ちなみに今回は無難にNLという事になりましたが、各種の趣向を否定するものではありませんので……!
「ちっぱいが好きです」
自分は大小に関係なく好きです(^ε^ )
「今どきアホ毛を描くのはナシにしましょう」
いや、それは別にいいんじゃね?(゚ε゚; そこは皆様の自由でいいかと。
「胸毛は直毛でなくクセ毛で描いてみました」
あ、はい。そうですか……(゚ε゚;
なるほど。自分の知らない世界というか、皆様それぞれに趣味・趣向がある様子です。自分はそういった部分を考えた事すらなかったので、会話自体を眺めているのが新鮮でした。
【設定にこだわる時の注意】
やがて各自が、自分のデザインしたキャラクタのプロパティについて凝り始めました。年齢や性格、口調その他の設定です。そのあたりのこだわりが加速度的に強くなっていくのが、見ていて少々心配にも思えましたが……。
そこには非常に強力な「魔力」がある様子です。本当に細部に至るまで、こと細かく色々と考える人もいたり。中には、設定を考える事から戻って来られなくなり、グラフィックを描く手が止まってしまう人もいる程です。
設定を考えるのって楽しい!
それは分かる気がします。趣味の活動ですし、楽しめているならベターです。なので「凝るのはいい事だ」と、その時は単純に思いました。ただ、適度に抑えて切り上げないと、開発上のデメリットになる場合もあります。
「設定は細部まで熟考するほど良い」という考え方もありますし、それは正しいと思います。ですが、特に組織開発の場合は、細部よりも開発全体を意識すべきです。つまり、極端に細部までこだわるのは控えた方がいい場合もあると思います。バランス感覚が大切、とでも表現したら伝わるでしょうか?
あまりにも設定をツメすぎてしまうと、完全に「考える余地」が無くなります。例えば、それでシナリオ担当が窒息してしまう事もあるのです。多少は、いわゆる「あそび」というか、マージンを残した方が後で色々とやりやすい場合があります。更に言うと、設定ばかりにこだわって実作業が停滞する場合もあって、経験が浅い人ほどその罠にやられがちな傾向がある様子です。
なにごとも「ほどほど」がいいのかもしれません。(超・月並みな意見)
【出来る事と出来ない事】
さて、各自がこだわりを持つのは良い事なのですが。結果として、各メンバー同士で小さな意見の衝突もチラホラと出る様になってきました。例えば、以下の様な話です。
・塗りは○○さんを基準にして統一すべきだ
→自分は自分のやり方でやりたい
→あの塗りは自分の絵柄に合わない
→難しくて自分には無理です
ちょっとハラハラしつつ会話を眺めていたのですが、その手の話が出る度に、あすかさんが取りまとめてくれます。さすがリーダー的存在です。中でも、
あすか「こだわらなくていいんじゃない?」
という発言。これは実に深いです。そこには「我々は不慣れだからこそ、細部にこだわりすぎて開発が滞る様ではいけない」そんな真意が込められている事を、自分は瞬時に察知しました。さすがとしか言えません。グラフィッカ統括はダテじゃないです。
あすか「細かい事を言われてもメンドクサイし」
真意もクソもなかった(^ε^ )
真面目な話として、いい意味での適当さは大切です。誰しも理想はあると思うのですが、それに固執する事なく、まずは「自身が責任を持てる範囲で出来る事」を各自がカッチリこなした方が、より良い結果が期待できると思います。組織開発に関わる場合は、諦めるべき点は諦める。それが良い意味での「こだわり」か、それとも単なる「エゴ」なのかを冷静に見極める事は大切です。
より実質的な部分を言うならば……。画像について、本来はある程度の統一は必要なものの、この場は「あまりコスト(=時間)をかけても、思った程の効果は出ないだろう」と予想しました。もちろん、調整する事で全体としてのクオリティは上がるはずです。
ですが前述した通り、各自の絵柄や水準は大きく異なるのです。それぞれのキャラを同時に画面上に表示したら、違和感が出るのは避けられない。更に言えば、背景も担当ごとに水準の差が大きいのです。それらの違和感を消し去るというのは、実は要求レベルの高い話だったりします。
ならばいっそ「そのまま」でいい。乱暴な話ではありますが、この集まりは「皆の絵が表示されるゲームを作る事」ですから、目指すゴールとして間違えていないはずです。
たぶん。(゚ε゚ )
なので、お互いに指摘をしつつも、なるべく描きなおしは避ける事。まずはデータを揃える事を優先して、余力がある場合のみ描き直す……と、そんな形が無難だと判断しました。大らかな気持ちで行きましょう。イージーね、イージー。
そんなこんなで、キャラが出揃いつつありました。中には清書が完了したキャラもあったりで、それを見た他のメンバーさんがキャッキャウフフしています。開発の流れが勢いに乗っている事を、強く実感する瞬間です。
簡単に完成するんじゃね?(゚ε゚ )
きっと誰もが、そんな気持ちになっていたと思います。ですが、そこから遥か彼方へ伸びる果てしない道筋。それがまだ目に入っていないだけだったのです。
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