第3話 開発会議

【前回までのあらすじ】


 組織開発に必要なインフラを整備したものの、実はまだ企画案すら決まっていない状態だと知ってビビる自分。



【開発会議】


 さて、インフラも整って、ようやく「開発に着手しよう」という段階に来ました。当初はただの「スライドショー」的な発想だったはずです。が、「企画をツメて考えたら盛り上がるかも」という自分の言葉のせいで(?)話が少しずつ膨らむ事になります。


 開発が始まるにあたって、まずはskypeのグループチャットを実施する事に。


「ゲームを作るって楽しそう」

「セリフとか表示できるのかな?」

「恋愛ゲーム作りたい」

「音楽担当を探して欲しい」

「もしかして売りに出せたりして!」

「完成が楽しみだな~」


 いや、あのですね……(゚ε゚;


 場には約10名、学生さんから主婦まで様々な人がいました。ちなみに女性が圧倒的多数です。何だか盛り上がっています。ただ話の中には、明らかに非現実的な内容もチラホラとあったりします。ある意味ポジティブであり、ですが言葉を変えれば「簡単に考えすぎ」という事でして……。こうして、それぞれの人がフリーダムに話しているのは、少々マズイ気もします。


 そうです。まだその場には「まとめ役」が不在だったのです。組織開発がチームとして機能する為には、意見集約をするリーダー的存在、なおかつ全員に対して中立的な立場を保てる、意思の強い人物が必要です。場のイニシアチブをガッツリ握れる事が望ましいですね。


 よし、時は来た……!(゚ε゚ )


 自分はこの時を待っていました。場の皆様に代表者を告知・印象づけるには今がベスト! そう考えていたのです。当然、あすかさんが立つべきでしょう。なので、おもむろに声をかけました。


 丹下「そろそろ皆の意見を集約しつつ、話を進めた方がいいんじゃないかな?」

 あすか「だね~。でも、どうすればいいの?」

 丹下「え!? そ、そうだねぇ、例えば……」


 気が付けば、何となく自分がまとめ役となり、意見集約をする感じになっていました。でもこれは考えてみれば、仕方のない事かもしれません。未経験の人がいきなりまとめ役になるのは、たしかに無理があります。なので、その場は自分が「仮のまとめ役」を引き受ける形になりました。


 やがて話は「学園恋愛ゲーム的なモノを作ろう!」という流れになりました。ただのスライドショーだったはずが、話にかなりのズレが生じてきた事を感じます。


 でもまあ、余裕っしょ! ♪~(゚ε゚ )


 特に不安はありませんでした。少なくとも、簡易的なスクリプトエンジンを作る事に「技術的な問題」は全く感じなかったからです。それに、もしも大変になった時には、フリーの優秀なエンジンを使わせてもらえばいいのですから。ですが、そういう問題ではないといいますか、この考えがいかに浅く間違いだったかについては、後ほど気づく事になるのですけれども……。


 で。


 皆様、なんだか楽しそうです。各自で自由にキャラを描いて、それ用に短いシナリオを自分達で用意する!という話になりました。中にはもう、キャラのラフまで描いている人もいます。キャラ設定をコト細かく考えている人もいる様子です。


 その自由さが、仕事としてのゲーム開発に毒された自分には羨ましく、眩しく見えました。本来「モノづくり」とは、こういう風に楽しいはずなのです。それに比べて、職場で機械的に作業をしている自分の冴えない姿を想像すると……。


 こうして、会議は終わろうとしていました。そのタイミングで、自分は再びあすかさんに声をかけます。


 丹下「地道に進めれば完成するはずだから、頑張ってね」

 あすか「こんな感じで週に一度は会議をしよう!」

 丹下「それがいいかもしれないね」

 あすか「次の会議までに、ホームページの手直しが進んでるといいな」

 丹下「え!? でも俺はセンスないから、他の誰かに頼んだ方がいいよ?」

 あすか「じゃあ自分も、キャラ描いてくるね」


 人の話を聞いちゃいねえ(^ε^ )


 まさか、そこまで自分がやるの!? とは思ったのですが。それでも、あまり深くは考えずに引き受けました。理由は、その時点で「何となく楽しい」と感じていたからです。


 でも、少し冷静になって考えてみて下さい。もし、本当にただ楽しい「だけ」で済むならば、おそらくはもっと大勢の人が趣味でゲームを開発しているはずです。ですが現実には、趣味でゲームを作るというのは非常にマイナーな行為だと思います。自分はその事を、いずれ身を持って体験する事になるのです。


 とにかく、開発は少しずつ動き始めました。ここから実作業に突入していく事になります。

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