第4話

真白さんのウイスキーまみれになったスラックスは、それほど時間が経っていなかったおかげで事なきを得た。

しかし洗いながらふと我に返り、とてつもない罪悪感に苛まれる。

今考えるとこれではまるでお持ち帰りしたいが為に連れ帰ったみたいだ。

そっとリビングの方を覗くと、未だ赤い顔をした真白さんが僕のスウェットを履いてちょこんとソファに座っている。ちょっとだぼっとした裾とか可愛い過ぎるだろ。


ってそうじゃなくて、真白さん怒っているだろうか。

なんであの時勢いよく店を飛び出してしまったんだろう。それはもちろんスラックスを洗わなきゃいけないからで、でも下心が全くなかったかと言ったら嘘になる。

あの時酔っ払っていたとはいえ、強気に出てしまったのが嘘の様だ。先ほどからため息と後悔が頭の中をグルグルしている。


いつまでも脱衣所に籠っている訳にもいかず、僕は大きく深呼吸してリビングの方に向かった。

ガチャッ


「真白さん、スラックスはシミにならずに済みそうです」

「そうか」

「あと、これどうぞ」


とりあえず冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し真白さんに手渡す。あくまで平静を装って。


「・・・すまなかったな」


真白さんはミネラルウォーターを受け取ると、目線を下げたままそう呟いた。

一瞬耳を疑う。あの真白さんが僕に謝るなんて。明日は槍でも降るんじゃないだろうか。日頃散々蹴飛ばしたり無理難題を言っても絶対謝ったりしないのに。

とりあえず真白さんが怒っていないことにホッと胸を撫で下ろす。


「いえ、僕も出過ぎたことをしてすいませんでした」

「それはいいが・・・一体あれはなんだ?」


真白さんが指差した方向は壁際にある本棚だった。ごく普通の本棚だろうと思い目を向けると、そこには真白さんの作品の載った雑誌やら本やらが綺麗に陳列されていた。

だらだらと嫌な汗が背中を伝う。まるでストーカーしてるのがばれた様な気分だ。


「えっと、これは違うんです!あのそんなやましい気持ちとかじゃ・・・っ!」

「今日沖田から、お前が俺の作品が好きなんだと聞いた」

「えっ!あっ、え・・・っと、あの・・・」

「なんだ、違うのか?」

「ち、違わないですっ」


そういえばこの前沖田さんにはそのこと言ったんだ。真白さんにはミーハーとか思われるかなぁとか、ファンだなんて言ったら公私混同で働かせて貰えなくなるかなぁと思って言えなかった。

もしかして、そのことが気に障ったのだろうか。


「そうか。まぁ今日はそのことで・・・少し気が高ぶってた」

「へ・・・っ?」

「だからっ、その・・・自分の手掛けた作品を好きって言われて嬉しかったんだよ!悪いか!だからいつも以上に酒が進んだんだ。お前のせいだぞ、俺は悪くないっ」


あぁ、なんでこの人はこんなに可愛いんだ。

そう思った時にはもう真白さんをぎゆっと腕の中に閉じ込めていた。

あの時と同じ、真白さんの匂いがする。


「な・・・っ!藤堂っ?!」

「なんでそんな可愛いこと言うんですか。普段は超鬼な癖に」

「はっ?!鬼ってなんだ鬼って」


このうるさい心臓の音は僕のだろうか?それとも真白さんのだろうか。


「真白さん、今の僕があるのは全部真白さんのおかげなんです。もっとずっと真白さんの側にいたい」

「・・・」

「好きです」


とうとう言ってしまった。

長い沈黙が訪れる。やはり男からの告白なんて気持ち悪いと思われただろうか。

一向に応答がないので恐る恐る真白さんの顔を見ると、腕の中の彼は顔を真っ赤にして俯いている。


「え、真白さん?」

「お前は本当・・・バカか!!バカ!よくもそんな恥ずかしげもなく好きだなんだとっ」


どうやら怒ってる訳ではなくただ照れているらしい。その可愛さに自然と口角が上がる。

そんな僕の視線を感じて、俯いていた顔はこちらを向いた。紅潮した頬と潤んだ大きな瞳を見た瞬間、俺の理性は呆気なく砕け散った。



「あっ!そこ、や、だぁ・・・っ!」

「真白さんっ」.

「んっ、あっ」


唇を重ねてからどのくらい時間が経ったのだろう。今僕たちは普段一人しか乗ることのないセミダブルのベッドの上でやましいことをしている。

真白さんのズボンと下着を剥ぎとり、熱をもった性器を僕は躊躇することもなく口に含む。

男相手にフェラをする日が来るなんて思ってもみなかった。今まで女の子たちにされてきたように口内で勃起した性器を扱く。

じゅぶじゅぶと卑猥な水音をたてて上下に動かしながら、同時に後孔にも指を這わせた。


「なっ!だめだっ!そんなとこ・・・っ」

「痛かったらやめます。だからちょっとだけ」


そこら辺に置いてあったオイルを臀部に垂らし、ゆっくり秘部に指を挿れていく。

昔罰ゲームで見た男同士のAVがこんなとこで役立つとは思いもしなかった。


「い、やだっ!抜けっ」


逃げ腰になっている真白さんに再びキスをする。力が抜けてきたところに指を2本に増やしていく。中を擦り上げ上げるようにぐちゅぐちゅかき混ぜると、いきなり真白さんの体がビクンッと跳ねた。


「ひぁっん!」

「・・・ここいいですか?」

「ちょっ、ちょっと待て!もういい!」

「すぐ良くなるはずですから」


にっこり笑い先程反応した箇所を重点的に擦る。

ぬちゅっぬちゅっぬちゅっぬちゅっ

真白さんの身体はびくんっびくんっと反応し萎えかけていたモノは再び固さを取り戻した。

じゅぷっじゅぷっと卑猥な音が室内に響きわたる。


「やっ、だぁっ!あぁっ!はっあんっ!あっ!」


明らかに先程の反応とは違う。


「イキそうですか?」


僕の問いかけに真白さんはこくこくと首を縦に振る。後ろを弄るのと同時に性器に手をかけると、あっという間にびゅるるっと勢いよく白濁が飛んだ。


「あぁ・・・ッ!はぁ・・・っあっあぁ」


絶頂を迎え、真白さんははぁはぁと肩で息をしている。


「すいません、僕も限界なんで挿れますね」

「へ・・・はっ?!ちょっと待て!そんなの無理・・・っ」


全て言い終わる前にその細い腰を持ち完全に勃起した性器を挿入する。ミチミチッと狭い真白さんの中に僕の熱が加わっていく。


「い・・・ったい!」

「すいません、あとちょっとなんでっ」


充分慣らしただけあって、思いの外スムーズに入った。恐る恐る真白さんの顔を見ると、不服そうながらも目は熱を帯びていた。


「痛かったら言って下さい」

「くそっ、言ったってどうせやめないだろ」

「すいません」


にっこり笑い形だけの謝罪をすると、なるべく痛くないようにゆっくり動いていく。

羞恥心からか真白さんは両腕で顔を隠していた。


「んっ、・・・っは、あっ」

「確かこの辺でしたよね」


先程反応していた場所を探しながら、奥の方を突いていく。何度か突くと、ある一箇所を摩った時に真白さんの声色が変わった。


「あぁっ!あっ!やっ・・・ひあぁぁっ!」

「・・・みっけ」


ぱんっぱんっと音を立てながら奥の方を突き上げる。前立腺ばかりを突けば、中はきゅうきゅうと物欲しそうに締めつけた。


「やぁっ!あっ!やぁっ!そこばっかぁっ!あぁっん!」


真白さんは涙目で首を嫌々と振っている。もう超絶に可愛すぎてすぐイッてしまいそうだ。しかしそんな嫌がる姿とは対照的に、ペニスはしっかりと勃起しテラテラと妖艶に濡れていた。

ぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっ


「やばいっ、でそうですっ」

「あぁっ!いくっ!またいっちゃ・・・あっあぁぁっ!」


真白さんがいくのと同時に僕も中に欲を吐き出した。


「あぁぁ・・・ッ!」



全てが終わった後、真白さんはお酒のせいか行為のせいか、死んだように眠ってしまった。

綺麗に後片付けを済ませ同じベッドに寝転がる。

もしこれで朝起きて夢だったらどうしよう。半ば半信半疑のまま、僕はもう一度真白さんに唇を落とした。

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