最終章

 僕がここで自殺しようとしたのは、三日前のことのように感じられた。実際は三年前のことなのだが。

 ここからの夜景を見て、クソみたいな世界だと思った。まがい物の夢でできた光で、本物の星を見えなくさせるこの景色が、世界が、大嫌いだ。

 僕が今から自殺するのは、三年前の約束を復活させたからだ。彼女と出会って、あの約束は保留になり、彼女が死んで復活した。そのように解釈することにした。

 つまり、これは僕の勝ちだ。

 「俺は先に行くぜ! 馬鹿ども!」

と叫んで助走をつけ、走ろうとした。

 その瞬間だった。大きな地震が発生し、僕は立っていられなくなり、地面に尻もちをついた。

 揺れが収まるまで一分もかかった。そして、自分が暗闇に閉じ込められていることに気づく。自分の手が見られないほどで、死んだのかと勘違いした。

 だが、上を見た瞬間に僕は生きていることを実感した。

 頭上には‘本物の世界’があった。大地震による大規模停電。本来、それは悲劇のはずだ。一方で、僕は不謹慎にもそれを喜劇だと思ってしまった。

 圧倒されるほどの星々。こんな奇跡があっていいのだろうか。僕はなぜか笑えてしまった。

 そうだ。この世には本物がこうやって隠されているのだ。僕はこれからその本物を少しずつ探していけばいいのだ。本物の愛、本物の人生、本物の正義、本物の友、本物の世界。

 明日はきっといい日になる。そんな気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

永遠の三日後 赤秋ともる @HirarinWorld

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ