作中の読み物
能力と、超能力という概念の変化
【能力と、超能力という概念の変化 】 著 大島 久幸
……超能力、あるいはサイキックという言葉が盛んに使われだしたのは20世紀の前半のことになる。ただしその存在はより以前から存在し、古くはその時代やコミュニティによって奇跡や魔法、神懸かりや霊能力など、様々な呼称が用いられた。
超能力が具体的にどのようにして人類に与えられたのかはわかっていない。種としての誕生時点から人類に備わっていたというものもいる。イエス・キリストの降臨と、一度は死した彼のその蘇生と共に、主によって人類すべてに奇跡が与えられ、以後人類は超能力の可能性を得たという集団も。また、それらは火星人や金星人などの宇宙人から与えられた力であると答える集団も存在する。
それに対する私個人の意見は控えるが、
同時に、宇宙人の存在を強く信じる集いと、そうではない普通のスポーツサークルなどの集いとを比較した時、後者よりも前者の集いから超能力者に目覚める可能性が高いことが近年の記録では示されている。
このことから神への信仰は絶対ではないが、天国や地獄、霊魂の存在であるとか、人類に眠る未知の力であるとか、そういった何らかの可能性を信じるものは、そうでない者よりは超能力の発現率が高いようだ。
……
超能力の存在が「奇跡」という形で少なくともイエス・キリストの時代には既に記録として存在していた事は明白だ。だが古い時代の神話や文献から超能力の記録を辿っても、当時の超能力は今ほどの多様性を持っていなかった事が伺える。
怪力、怪我の治療、遠く離れた人間に
だが、私がかつて見た超能力の中には、
・空飛ぶ潜水艦を作りだし、そこから光の矢を放つような能力。
・その身を鋼鉄の巨人へと変化させ、背中から炎を吹かして空を飛び、エーテルで作られた追尾性のロケット砲を発射する能力。
・「形状記憶可能な液体金属」なる空想の化学物質をエーテルによって作りだし、全身をそれらに変化させることで、攻撃を受け流したり、身体の一部分を鋼鉄の刃に変える能力。
・魔法陣から帽子を被った二足歩行の奇妙な兎を召喚し、それと対話可能な能力。
こうした実に不可思議な能力の数々を私は直接この目で目にしてきた。発火能力や伝心、予知能力のみが超能力とされてきた時代は既に二世代は古い考えだ。
(※ もっとも、その二世代古い考えに基づいた贋物が今日のテレビで見世物のように日夜流される現状を憂うと共に、それらの贋物の超能力や心霊を広く認知させることそのものが、超能力者の増加を抑制するための権力者の企みなのでは……と考えると私は寒気を覚える。)
火や天候を操ったり、伝心を行うのみの奇跡が超能力とされたのは、日露戦争の頃の極めて古い考えである。
大東亜戦争の頃には既に、翼を生やし空を自由に飛ぶ能力、植物を操る能力者、コンクリートを自在に生み出し操り、陣地を一晩の内に構築するような能力者が東西の戦場に現れていた。
(特に欧州の戦線では、当時のアドルフ・ヒトラーが率いた独逸軍の中から、現代となってからは観測の例のなかった新種の能力者が多数目撃されている。)
それだけでも既存の「奇跡」「魔法」「超能力」「霊能力」などの言葉の概念を大いに揺るがす先進的な能力の数々ではあったが、それとほとんど変わらない時期の戦中戦後に、私が上述したような、更に奇妙な超能力を用いる者が多数生まれ始める。
私は自身の戦いや冒険の中で目にしたこれらの能力を、記憶をもとにスケッチを行い、超能力者やそうでない者も含め国内の友人を何名も当たったが、当初はまるで手がかりを掴めなかった。
それがある日、社交界の席で一人の友人と超能力に関する話題になった所「詳しく聞かせて欲しい」と頼まれたので、私は彼を東京葛飾の自宅まで連れて行った。そこで彼にそのスケッチを見せた所、彼は映画の配給会社に勤めていた人物であったため、いくつかの児童書や小説、アニメフィルム、米国の映画フィルムなどを後日郵送してくれた。
すると成程、妻には恵まれたが、私の家庭では子宝に恵まれなかったため(これに関して妻に一切の責任はなく、私の所為である)、こうしたものは余り見る機会を得なかったが、これら少年少女向けのフィルムや本を見ると私は驚いた。私が実際に目にした超能力者の行使した、奇妙な能力の数々を思い出す潜水艦、機械の巨人、喋る兎などがそこにはあったからだ。
これらの経験から私は一つの仮説を立てる。かつての超能力は原始的な能力に寄っていたが、それらの能力が極めて多様化した原因について、文明と文化の発達によって、超能力を行使する者の想像力が2000年近く前の時代から進歩した事が原因なのではないだろうか、と。
――米国やソ連の政府はこれらの新しいタイプの超能力の解明に今もなお追われている。
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