後ろの正面だぁれ?

第5話 神西双葉は遭い慣れない

その日は夜に雨が降った。突発的豪雨だったので傘は持っていなかった。雨宿りを忘れてびしょ濡れになって帰路へとついていたのを明確に覚えている。その日は大切な日なのに頼まれたら断れない性格だった俺は学校の行事で遅くなってしまったのだ。


遅れるなら遅れると携帯で連絡をすれば良かったのだけど俺は失念していた。ただ急いで帰らなければいけない事を目標に家へと突き進むだけだった。


大切な日とは妹の、一花の誕生日。小学校最後の誕生日だった。妹思いで家族思いの俺はしっかりとプレゼントも用意してあった。プレゼントは一花が欲しがっていたヘアピン。普段はおさげをぶら下げているのだけど目に入る程の前髪を整える為にヘアピンをプレゼントして上げるのだ。


一花は女の子なのにそこらへんの事情は俺よりも疎い。と言うか気にしない。家では頭の上にパイナップルのヘタを模しているのか前髪を括っている場合もある。それもそれで愛らしいのだがおさげを見栄えさせるなら前髪を整えた後にヘアピンをつけたほうがなお可愛い。兄の個人的評価だけどな。


父も母も一花を溺愛していて俺は二の次、一花の次だった。別に俺はその扱いに不満はない。溺愛していると言っても目に見える物の差は無かった。ただ、今こうして言えるように感じる事はできた。


別段一花が羨ましいって思う事も無かったし、両親に反抗的な態度をとった事も無かった。それが我が家では普通で。世間一般の家庭だったのだから。


神西双葉じんさいふたば。それが俺の本名。何を思って長男なのに双葉なのかと訊ねたところ。『長男だからこそ支えるんだよ』とのこと。二つの葉っぱで神西家を支える人柱、大黒柱、大黒葉白。まるで一花が生まれるのを知っていたかのような命名だった。と、小さい頭で思った。


家へと辿り着くと玄関の仄かな灯りが俺を出迎えてくれた。おかえりと家が言っているように聞こえた。玄関で梅雨払いをして靴の中に溜まった水も流し、前髪から滴る水を頭を振って払い飛ばす。こんなことになると思って鞄の中には教科書は無い。置き勉万歳。


濡れた手で玄関のドアノブを掴む。ここで俺が傘を差して帰って来ていれば直様異変に気遣いていたのだろうか。傘を差して悠長に歩いていれば事に間に合わなかったのかもしれない。どちらが幸運でどちらが不運だったのかは結果を見た後でさえも判別が出来ない。結果、幸せは砕かれた。粉砕された、細粉になって散って行った。


「ただいま」と言った直後に少し奇妙な感覚が駆け抜ける。いつもと変わらないはずの玄関なのにまるで違う人の家にお邪魔した感覚。何ゆえ、どうしてそんな感覚に襲われたのかを確かめる為に昔絵本でやった間違い探しを始める。


灯りの灯った廊下。両親はこの日の為に仕事を早く切り終わり帰ってくるので何も違和感はない。靴の数もきっちり揃っている。廊下が少し濡れている。父か母のどちらかが俺と同じように雨に降られて帰って来たのだろう。


それが違和感の正体。


俺も靴を脱いで濡れた靴下も脱ぎようやく我が家へと足を踏み入れる。誰でも、一花でも帰宅の挨拶をしに来てくれてもいいのに誰もリビングからは顔を出さなかった。まぁ今日という日に限らずに俺は二の次なので気にも止めずにリビングへと向かった。


リビングへと続く扉のドアノブに手を掛けた時に違和感は存在感へと変わる。ガラス越しに誰かがいる。父よりも小柄で母のように髪が長いわけでも無い。一花よりも大きく、性別が違う。誰だ?一花の誕生日は神西一家だけでするはずだ。祖父母は呼ばない。ではこの男は誰なんだ?


俺はソーッと、自分家であるのに扉を慎重に開けた。


最初に目に入ったのは父の姿だった。父は仰向けで無残にも惨たらしく倒れていた。胸、腹、いや上半身全体は服を赤黒く染めて幾つも幾度も刺されたようにリビングの真ん中で倒れていた。


俺は一体何を見たのかを理解出来なかった。それでも体は扉を開くのを躊躇しない。


次に視界内へと入ってきたのは母だった。首を搔っ切られて父の隣で血の海を創って倒れていた。


俺は玄関での違和感の正体を確かに気づく。どの靴も雨で濡れてはいなかった。それが違和感の正体だった。


最後に目に入ったのは見も知らぬ男。髪は短めだが雨に濡れ、血に濡れ、ポタポタと両方の水滴を垂らしながら両手に何かを持っていた。持っているというよりは掴んでいた。持ちつ掴める何か。その何かを前にして男は息を上ずらせていた。人を殺した興奮で息が上がっているのはそれはそうなのだが、同じ性別として同調できてしまう息の上がり。興奮の仕方だった。


男が掴んでいるのは一花の腰だった。


目の前が、頭の中が真っ白になった。


「お兄ちゃん・・・大丈夫?」


その言葉で気がついた時には既に事は終息していた。一花がボロボロになった服で肌を隠しながら俺の肩を揺さぶっていた。夢?錯覚しそうになったけど夢では無いのはこの饐えた臭いが現実だと証明しているものだった。父と母は同じように倒れていて記憶を失う前と違うのは見知らぬ男が俺の隣で死んでいることだろう。


「うっおえぇぇ」


男の顔は顔とは呼べなかった。目はくり貫かれ、耳は綺麗に削がれて、鼻は鼻先が削がれて鼻腔内が露わになっている。口には使用した刃物が突き立てられていて喉の奥で刺さったままになっている。首は搔っ切られていて上半身は滅多刺しにされていた。中学生の俺、いや、初めて死体を見る人間にとっては刺激的過ぎた。抑えることのできない吐き気は口から吐露し、この空間に更に酸い臭いを充満させる。


「大丈夫?」


一花は冷静に俺の背中を摩ってくれる。まるで風邪で苦しむ兄を介抱するかのように背中を摩るのだった。


「一花は、一花は大丈夫か?」


喉が焼けそうになりながらも一花の安否を確かめる。美しい髪の毛は乱れ、可愛らしい服は破かれ、手首には締め付けられた痣が残っている。あの時、男は一花に手を出している最中だったのか、後だったのか、前だったのか、それを含めての安否を確認したのだが。


「大丈夫だよ、一花が殺したから」


思いもがけない言葉が返ってきたのだ。一花がこの猟奇的な殺し方をしたと言い張るのだった。


「何を・・・言っているんだ?」


確かに男を殺したのは誰なのかという疑問には最初に突き当たらないといけない疑問だけど一花がこの男を殺せる状況では無かった。一花は男に掴まっていて反撃を繰り出せる状況でも無かった。それ以前に一花は人をここまで無惨にも殺せる人間じゃない。誰だってそうで、俺だってそうだ。


それでも一花は。


「悪い人がいたから一花が裁いてあげたの」


そう笑顔で答えるのだった。


悪い夢だ。悪夢だ。夢を見ているのだろう。とてつもなく邪悪で邪な夢だ。一花がこんな事を言うはずがない。現実ではない。現実の一花は、俺の知っている一花はこんな事は絶対に言わない。言うわけがない。


そんな一花は一花ではない。こんな一花は俺が好きな一花ではないんだ。


一花は落ち着いた俺の背中を摩るのを止めて徐ろに俺の頭を抱きしめた。一花の温もりが伝わってきて、一花の匂いが懐かしいように感じられて、これが夢ではない事を再三確認させられた気がして。


「一花はずっとお兄ちゃんの事が好きだよ。何があっても、何もなくても、ずっと、永遠に永久にお兄ちゃんが好きだよ」


まるで俺の心を読んでいるのか、それとも兄妹のシンパシーなのかは知らないが一花はいつものようにお兄ちゃん大好き発言をしたのを最後に警察が入ってきたのをおぼえている。


これがお兄ちゃんが記憶している過去の、清算できない事件の全て。だけど私、一花だけはあの時の事も、今回の事も全て見届けている。大好きなお兄ちゃんが最高の自分を曝け出すその始終を。


ずっとお兄ちゃんには隠し通してきた事があるの。それをこの場を借りて言わせてもらおうかと思います。


お兄ちゃんは人殺しです。


人を、殺しています。殺人者です。犯罪者です。悪者です。悪人です。悪です。


だけどお兄ちゃんは罪を償わずにのうのうと平和な世界で生きています。息絶えるまで生きています。


お兄ちゃんと平和は正直なところ無縁です。お兄ちゃん自身が平和を象るには、象徴するには到底難しい事です。なんたってお兄ちゃんは殺人者なんだから、殺人者が平和を語るなんて片腹痛いです。


お兄ちゃん。憶えの無い過去を一花が語りましょう。語り継ぎましょう。訂正し、提言しましょう。神西一花が神西双葉の過去を暴いて見せましょう。


一花は誕生日パーティーの為にお母さんのお手伝いをしていました。お父さんも後ろで飾り付けをしていて家族団欒って雰囲気がリビング一体には漂っています。この頃の一花はここで一つ思っていました。反吐がでる、と。


小学生ながら辛辣にも親との団欒に反吐がでるなんて思う子供。悪い子ですね。悪い子には悪い事が起こるのは神が定めた必然であり、また、誰かの悪意が招いた偶然でもあるんですよ。


ガチャリと、お兄ちゃんが何時何時いつなんどきでも帰ってきても良いように鍵を開けておいた玄関が開く音が聞こえました。あぁ、お兄ちゃんが帰ってきたのだろう、誰もがそう思うはずです。まさか知らない人物が土足で家に上がりこもうなんて誰が予想だにできるでしょうか。厨二病の妄想も良い加減にして欲しいものです。


さて果て一花はお兄ちゃんが帰って来ると真っ先にお帰りを言いに向かいます。それが日課で日常です。お兄ちゃんの事は今でもいつでも大好きですからね。


して、日常通りに一花は玄関へ向かいました。するとあろう事か、何てことか、知らないおじさんが勝手に家に上がりこんでいるではありませんか。手には鋭く玄関の灯りを反射し外の雨を滴らせる刃物を持っていました。あ、強盗さんだな。と、一花は咄嗟に判断できました。しかし悲鳴も出さずに一花は踵を返してリビングに向けてこう言い放ちました。


「新聞屋さんが来てるよ」


一花は嘘を付きました。嘘を吐きました。悪気もなく、悪意もなく。これから起こる未来へ向けて善意だけで言いました。


その嘘に騙されてお母さんがまず玄関へ向かいました。入れ替わりに一花はリビングへと入って事の顛末は見ずにただ事が過ぎ、こちらへ向かってくるのを待っていました。お母さんの悲鳴と泡を吐く声が聞こえてお父さんが駆けつけました。しかし時すでに遅く、お母さんの死体を盾にリビングへと男は入ってきました。


お父さんはお母さんだった物を投げつけられてお腹を刺されました。呻き、のたうち回る前に男がお父さんの上に跨って胸、腹、胸、腹、肩、胸。順番はどうだっていいんですけど、取り敢えず刺しまくりました。


刺し終えて、二人の人間を物にした男は呆けた。惚けたように突っ立っている一花の方へと振り向きました。一花も殺されるのかと思いましたが一花には理解できました、この人は楽しみ、心行くまで愉しむ人だと。


「どうして嘘をついたんだ?」


どうでもいい事を訊ねられて萎えたのを覚えています。ですが一花も旧暦だったらもう大人。気分を害しても平然に平淡に答えます。


「一花は悪い子だから」


男はキョトンとした顔になったのを今でも忘れられません。まさか同じ日に二度することになろうとはこの時は男は思いもしませんでしたでしょうが。


「君は可愛くて、悪い子だな」


話は一転して一花の容姿へと変わりました。一花は同級生の男子にブスと言われた事がありますが、照れ隠しの一つだと熟知しています。お兄ちゃんがいつも欠かさずに一花はきれいだ、可愛いと言ってくれたので、一花は可愛くてなれたのでしょう。女性と生まれたれたからには綺麗であり続けたい、そのどこかに残っている欲望を満たしてくれたお兄ちゃんには感謝です。感謝御礼の極みです。


しかし、ある意味それが招いた悲劇と言いますでしょうか。一花の美貌が欲を狂わせたと言うのでしょうか。どちらにせよ強盗殺人者に強姦罪が適用される状況になってしまったのです。しかもロリコンとの合わせ技。その場にプリンと醤油があって、ウニが食べたい気分になった。なのでプリンと醤油を合わせてしまったのでしょうね。


別に受け入れた訳ではないですが特に抵抗する気もなく男に押し倒されました。男の息遣いが喉元に当たり気持ち悪かったです。手は片手で綺麗に押さえ付けられていて空いた片手で獣のように服を捲りあげられてしまいました。


その日の一花の服装は身動きの取りやすいワンピース一枚でしたので。それを捲りあげられては下着姿が露わになるだけでした。お腹からじょりじょりと剃り残しのある肌で堪能されたのは人生で初めてでそう言うのはお兄ちゃんにして欲しいなと考えていました。


男は次に、と言うかついに下の下着。パンツへと手を這わせました。いや、それは流石に変態糞野郎のお眼鏡に叶ったとは言えど羞恥心が勝りますよ、えぇ。一応女の子ですよ、一花。なので抵抗はしましたが虚しく脱がされてしまいました。


お兄ちゃんの過去を語るにあたっては自分の恥ずかしい過去もかたらざるおえないんです。


脱がされた時に何か言っていましたが聞く耳持ちませんでした。一花は怒ったのです。男は一花を怒らせてしまったのです。しょうもない殺人童女強姦野郎は一花の逆鱗に触れたのです。実際には腰を触れられ、掴まれていましたが。


そこへお兄ちゃんが帰ってきました。タイミングはバッチリです。最高のタイミングです。お兄ちゃん的には最悪のタイミングだったでしょうが。


「一花の彼氏か?」


扉の前で固まったお兄ちゃんがパソコンが再起動した後のように発した言葉でした。阿保かと、どこをどう見てこの状況で一花の彼氏に見えるのかと。ツッコミをノリツッコミを入れたくなりましたが、しょうもない上につまらない男は刃物を手にとってお兄ちゃんへ向けて刺しました。


ぶっすりと、ざっくりと、刃物は貫通しました。お兄ちゃんの鞄を綺麗に貫通しました。お兄ちゃんはいつものお兄ちゃんとは思えない程機敏な動きで男に対応します。貫いた刃物を引き抜かせることも、押し込むことも許さずに鞄の取っ手を持って自分と一緒に回転させます。すれば手を鞄の中に入れている男は対応できずに体勢を崩してしまい、更には血溜まりとなった足場の悪い状況にいたので滑りこけてしまいます。


お兄ちゃんはすかさずに鞄の中から刃物を取り出して立ち上がろうとしている男に馬乗りになり何も厭わずに、躊躇なく刃物を男の心臓めがけて突き立ててしまいました。男はビクンと体を震わせた後に動かなくなりました。しかしお兄ちゃんの手は緩むこともなく、そのままお父さんがされたように男を滅多滅多と刺します。これでもかと、合いの手を入れたいほどリズムをつけて刺します。その後に一息をついたのかと思いきや男を蹴って天井を向かせると目をくり抜き始めました。耳を、鼻を削ぎ始めました。喉をかっ切りました。まだまだ目を閉じる猶予は許してくれません。今度はポロんと出る前だった股間にある逸物を切り捨て御免と言わんばかりに切り捨て、口の中に突っ込みました。目玉も鼻先も耳も、全て突っ込みました。その上から仕上げと言うのでしょうか刃物を突き刺してしまいました。現代アートの誕生でしょうか。これがお兄ちゃんからのプレゼントでしょうか。


お兄ちゃんは一花にお願いをしました。


「一花、包丁」


恐怖で支配するような声は一花を黙って従わせて台所から包丁を持ってこさせました。


そして最後に自分の喉に包丁を突き立てようとした途端に倒れてしまいました。人を殺してしまったと罪の意識が強くのし掛かったのでしょう。だけど、それを感じる前に力を使い果たしてしまったのでしょう。


お兄ちゃん。訂正しましょうか。一花はこの時は人殺しでは無いんですよ。お兄ちゃんがあの犯罪者を捌いて裁いたんですよ。


まぁ言って仕舞えば、終えば。これは一花によって粗方仕組まれた事なんですよ。


あの男が我が家に入ってくる事も、お兄ちゃんが学校の行事で遅れてくる事も、全て一花が企てた事なんですよ。それもこれも一花がお兄ちゃんの事を思っての事。お兄ちゃんが自分を見つけ、見出せるように手続き、手解き、手慣らししてあげたのです。


事の終わり、この時の終わり。


一花はお兄ちゃんの犯罪的証拠を隠しました。刃物から包丁まで、全ての痕跡を一花へと変えました。結果、収束してからの結果。そうしておいて良かったと思っています。だってお兄ちゃんは自覚の無い殺人者なんだから。


覚醒するまでしわ寄せは全て、全て一花が被るよ。


ね、大好きなお兄ちゃん。



あ、そうだ。あの街については説明していなかったね。まだお兄ちゃんは寝ているから一応お兄ちゃんっぽく説明させてもらうね。


 昔から喧嘩は両成敗と言うけれど喧嘩が両成敗された事例は少ないはずだ。勝った者が正義で負けた者が悪。ずっとそうであり続け、今もそうであり続けている。勝った者が歴史に名を残し、負けた者は歴史から抹消される。末梢とは比喩ではない、人権を生命を敗者の全てを抹消するのだ。


 人殺しとは悪か?復讐心を持って生命を与奪すれば悪なのか?


 人殺しとは正義か?革命の志を持って支配者を淘汰すれば正義なのか?


 では人殺しとは何なのか。私達、そう、人類は人殺しを尊い行いだと決定付けた。人間とは個としては生きられない生き物。生命を奪い、取り入れる事で生きながらえる愚尊な生き物だと決定付けた。


 人を殺せない人間は異常であり。


 人を殺す事ができる人間は正常である。


 従来異常者は遮蔽物の中に隔離されてきた。犯罪者ならば刑務所。心的、外的、内的病人ならば病院。それもまたいつの時代も変わることなく紡がれる事なく受け継がれてきた。


 しかし現代においては我々人類は異常者の為に小さな箱庭を幾つも用意した。異常者から正常者へと戻すための措置の一環として異常者から正常者へと戻った肉親との面会を許した。そうすることで正常者へと戻すとの統計が取れているのだ。


 そんなことをせずとも小さな箱庭の中で正常者へと変貌する人間もいる。そう言った人間は箱庭から自ずと出て行く。稀に箱庭内の人間を殺害する例もあるが、多少ならば問題無い。


これは人類が更に進化する為に行われている計画の一端である。


これが正常で、正解で、正義なのだ。



ま、これも全て一花が外に出て調べた事でどこかの誰かが書いたもの何ですけどね。嘘が混じっているかもしれないし、全てか本当かかもしれない。少なくともお兄ちゃんがいる街に関しては本当だと言い切れる。世界の真実が知りたいのならば君の目で確かめてみろってね。


君に人を殺す覚悟があるならだけど。


おっとと、回答するならお兄ちゃんが言っていた親友のエピローグもここで話しておいたほうがいいかな。どうせ委員長さんとやらもお兄ちゃんに話す気は話を聞いている限りは感じられない。まぁお話はお兄ちゃんの塩梅で決まるんだけど、こちら側の人間としてはそう感じる。


簡潔に言うとお兄ちゃんの親友は死んだかな。死んだと言うよりは殺されたはず。どういた経緯かは知らないけど殺されたのは確か。その日にあの音楽が鳴って人が街から居なくなればそれは覚醒したって事だから。この街ではそういう仕来りだから。


誰が殺したって?それは考えられるのは一人しかいなくない?お兄ちゃんの情報源だけしかない一花でさせ想像出来るんだから妄想膨らます事が出来るんだから。ほんっと、馬鹿だなぁ。


そろそろお兄ちゃんも起きそうだから一花行くね。もうここには戻って来ないと思うと寂しいね。友達になれたと思ったのにね。


うすら寒い廃墟を後にする前に神西一花は壁に飾られた物に別れの挨拶をする。


「バイバイ、夏鈴ちゃん。豊君」

                             次回 影へとつづく

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