第4話 熱

午前七時三十二分出勤。指定の服に着替え、タイムカードを切って簡素な廊下を歩き、仕事場へと向かう。仕事場にはデスクが一つ置いてあり、その上にノートパソコンと書類が纏められて置かれている。近くには人気もなく、この場所には私一人しかいない。


午前八時就業開始。デスクに置かれている書類に目を通して、今日訪れる人間を両方確認する。本日は廓家と神西家がやってくる。これは昨日の時点で確認済みだが、当日になって相手方が来れなくなる場合もあるので再確認は必要事項である。


午前八時三十分、本日も経過観察の為にここに報告を残す。


午前九時三十分お手洗いへ。お手洗いは廊下を超えた先にしか無いので我慢の限界まで我慢をしているとオムツの世話になることになるので面会時の注意事項に書かれている。稀にその注意事項を読まない人間もいるが、仕方なく指で指示している。


午前十一時、当直のナースが言伝を伝えに来た。昼飯を食べ終えたら医院長室まで来るようにとのこと。この病院の最高権力者であり、世界の有識者から呼ばれてしまった。


午後十二時十五分配達された弁当を食す。


午後十二時三十七分、持ち場を離れ、医院長室へと入室する。


午後十四時二十分、頭がボーッとする。熱だろうか。


午後十五時、廓玉藻入室。熱が出てきたみたいだ、薬を貰ってこよう。


午後十五時二十分。私はやる。私はやる。私はやる。私はやる。私はやる。私はやる。私はやる。私はやる。私はやる。私はやる。私はやる。私はやる。私はやる。私はやる。私はやる。


午後四時二十四分、神西双葉が入室。


午後五時二分。R


午後五時三分。I


午後五時四分。P



学校に着いて思いもしなかった情報が俺の耳に入ってきた。それは長谷部が転校してしまった事だ。親友だと思っていた長谷部が昨日の今日で転校してしまった。あんな事があったから?あんな事を言い出したのは転校するからだと?


どちらにせよ長谷部は俺に何も告げずに親の都合とやらで転校してしまったのだ。


朝の短いホームルームは終わって。休み時間に変わった。


「神西君、ちょっと手伝って貰ってもいいかしら?」


休み時間に入った途端教室全体に聞こえるほどの声で教室の扉の前にいる委員長に声をかけられた。貴嬢な言葉遣いの筈なのに委員長の声色だと優しく聞こえてしまう。こんな大勢の前で何をと返すわけにも行かなく俺は委員長のいる教室の出口へと向かう。クラスの視線は俺にぴっしりと付いてくる。


「次の化学の授業の準備を手伝って欲しいの」


何だそんな事か。周りの一同はそう思って各々のやりたい事に戻る。


「いいけど」


長谷部がいれば何か茶化されていたかもしれないな。


教室を出て化学室へと二人足並み揃えて歩く。気まずい、昨日が真面に会話した初日なのに翌日にこの展開は気まずい。


「神西君って自分が殺される時の事って想像した事はある?」


委員長ってやっぱりこんな不思議ちゃんキャラだったのか。これまた一花に答える質問よりも返す言葉が難解だぞ。同級生の異性にこんな事を訊ねる女子高生がいるのか?いや、実際にここに存在はするのだけど、これが普通って言うならば俺は世の普通を疑わなければならなくなる。


「ないかな」


「やっぱり」


やはりも、見栄はりも無いだろう。誰が自分がどうやって殺されるなぞ想像するだろうか。将来自分がどうやって死んでしまうのだろう程度なら考えるかもしれないが、流石に誰にどうやって殺されるなんて考えもしない。


こんな物騒な話を続けるわけにも行かないので話のハンドルを右に切る。


「長谷部、転校しちゃったな」


「そうね。長谷部君は残念ね」


しかと前を向いて委員長は言った。長谷部君が残念だったら流石の俺でも憤りを感じたかもしれない。しかし委員長も長谷部がいなくなってしまって残念がるのだな。てっきり淡白に返すのだと今までの会話分析してしまった。


「神西君は長谷部君と仲が良かったものね」


「まぁ、一応な」


「クラス界隈ではBLと噂されていたくらいに仲が良かったものね」


「クラス界隈ってクラスじゃねぇか。てか、そんな事言われていたのか」


男と男が仲良くしているからってそういう目で見ないでください。俺は女性が破廉恥な服を着ていてもエロスティックな考えには至りません。身体は正直だと思うが。


「半分嘘よ」


俺の中の委員長のイメージが崩れていく。俺が勝手にイメージを貼り付けておいて烏滸がましいが、もう敬愛を込めて委員長と呼ぶ事は無いだろう。半分嘘って何?Bが本当でLが嘘って事か?逆だと性転換した上にまた変わってくる。


「まぁ私から見たらとても仲が良さそうに見えたわ」


委員長さん!


「そう見えていたのにあいつは俺に何も言わないで転校してしまったんだよな」


別に言ってほしかったわけでも無いのだ。言ったところでそうか、残念だ。元気でいろよ。程度の挨拶をするくらいだっただろう。だとすればこのような形の別れの方が良かったのかもしれない。ただ、最後の言葉が好きな人が親友に告白することを言伝するってのは心につっかえが残ってしまう。


「寂しい?」


「まぁ少しは」


嘘をついても良かったのだが、委員長はそう言う嘘を見抜くような気がして心の中を有りのままを晒した。


「他に友達が欲しいとは思わないの?」


「思わない」


「どうして?」


「俺と友達になりたいってやつがいないからかな」


俺が答えると委員長は足を止めてこちらを向いた。黒く大きな瞳と見つめ合う。委員長の口角が釣り上がる。


「じゃあ今は私だけ?」


とても嬉しそうで、とても美しくて、とても奇妙だった。


「そうなるな」


俺に考える友達とはいかないが、俺に無い部分を補ってくれる貴重で危篤な人物であるには違い無い。


委員長は再び前を向いて歩みを進める。今の笑顔は何だったんだ?足休めのフェイスサービスか?手伝ってくれるお礼の前払いか?どちらにせよ思春期真っ盛りの男子高校生には魅力的に映って見えた。


あのスマイル後でお金取られないよな?スマイルはタダだよな?


「私は、拷問からかな」


表情に出さずに考えていたらポツリと委員長が呟いた。拷問?何のお話だったかと試行している間に委員長は続ける。


「両手両脚を鎖に繋がれて三角木馬に跨わらせらると思うの」


何だその時代背景が中世の官能小説にあるような拷問わ。委員長はマゾヒズムだったのか?意外だ。いやいや意外がっている場合じゃ無い。健全な学び舎で何を言い出すんだこの女子は。俺の中の女子はもっと女子女子したお話をしている予定だった。女子はこんな事を言わない。


「どう思う?」


人が偏見を述べている間に変態的意見を求められる。何を答えても個人的にも社会的にもギルティだと判を押される。褒め言葉が見つからない時の常套句、いいんじゃないか?で済ますのもありだがそれでは俺に人を拘束し、拷問する趣向があると思われてしまう。困った時の相槌なるほどなも使えないし、一体どうすればいいんだ。


「す、素敵だと思う」


絞り出した回答は不正解だと自己採点できた。


「そ、そう?」


何故か委員長は照れていた。女子高生を未確認生命体認定していいんじゃないか?なんならば俺が認定してやってもいい。


化学準備室の鍵を委員長が開けて入っていく。


「そこの棚の荷物を降ろしてくれればいいわ」


指が指された棚の上に置かれている箱を確認する。確かに委員長の身長と華奢な腕では怪我するかもしれない。もやしっ子だが男子の俺に適任の仕事だな。男だからって力仕事を共用されるのは好かないが委員長の本来の目的は俺を元気付ける為に誘ったのだろう。それがクラス委員長の中の委員長の性分。


軽く声をあげて荷物を持って化学準備室のど真ん中にある机の上に置く。


「これだけか?」


「うん、それだけ。神西君、ありがとう」


「お礼を言われる程のことはしていない」


「それもそうかも」


「前言撤回する」


初めてお互いに笑い合った。俺としては一花の前以外、それも作り笑いではない笑顔を久しぶりにした気がする。


「あら?神西君、落し物」


委員長はいつの間にか落としていたボールペンを元々入れていた俺の胸ポケットに入れてくれる。気遣いができる委員長だ。


「神西君は今日も病院?」


「ん?そうだけど?」


あれ?俺病院のこと昨日話したっけ?記憶が曖昧だ。


「私も今日定期検診なの、もしかしたら出会えるかもね」


「委員長、どこか悪いのか?」


「ううん、ただの定期検診。もしかして心配してくれているの?」


「そりゃあね」


聞いたからには。


「そっか。あ、もう休み時間終わりそう。また病院でお話ししましょ」


ふりふりと手を振った委員長の記憶がまだ新しかった。


「で?」


少し不機嫌な様子で一花が口を尖らせながら続きを言えと圧をかけてくる。


「何を怒っているんだ?」


「怒ってませーん。お兄ちゃんが普通の恋愛漫画みたいな場面を楽しんでいるのを聞かされてイライラしてませーん」


あのやりとりが恋愛漫画では普通なのかよ。過激だな最近の漫画。規制しなきゃな!


「不甲斐ない、不甲斐ないよお兄ちゃん!男ならば、そこでガバーッと襲いかからなきゃ漢らしくないよ!性欲を抑えきれなくならないと駄目だよ!それが女性に対してのエチケットだよ」


「何で性犯罪者にならなきゃいけないんだよ」


檻に入ったら一花に会えなくなるだろう。


「あっちは好きなんだし同意の上のようなもんだよ」


確かにあちらは俺のことが好きだからチャンスなのかもしれないな。


「って、それでも駄目だろ!」


「フェミニストお兄ちゃん!」


捨て台詞を言い残して一花は顔を逸らしてしまう。二日続けて一花に会えるのは幸せだ。幸せのしわ寄せだな。今日の学校の件りを話しているのは一花が委員長と同じ質問をしたからだ。


どうやって殺されるか考えたことがあるか?


答えは同じだったが委員長も同じことを言っていたなと言うとガラスの遮蔽物を割らんとばかりに話を聞きたがったのだ。


話には続きがあり、俺と委員長は病院でばったりと偶然にも出会ったのだ。不貞腐れて聞いていないかもしれないが、不甲斐ない兄は最愛の妹に優しく話聞かせてあげるのだった。


「また会ったね」


いつもの受付が混んでいるせいで椅子に座って待ちぼうけていると委員長が朝とは変わって小声で肩を叩いた。


「この街に病院はここしかないしな」


「危ないお医者さんに通っているかもしれないわよ?」


「何だそのオマージュに失敗したドラマタイトル」


「第一話のサブタイトルは危ない定期検診ね」


「委員長が言うと如何わしく聞こえるんだけど」


「お医者さん何ていかがわしい生き物よ」


「よくお医者さんのホームでそんな暴言が言えるな」


委員長に変わって全国のお医者さんに俺が謝罪します。申し訳ありません。


しかし委員長を校外で見ると新鮮味があるな。お茶や炭酸飲料が並ぶ自販機の中に一つだけコーンポタージュが佇む新鮮味だ。いつもは隣に同じ奴がいるのにお前の仲間はどこに行ったのだ。例えがわかりにくいと自負しようか。それならばお祭りでもなく和の趣がある住宅街でもないのに和服を着ている人がいる。そんな感じ。


もしかしたら俺も周りからはそんな目で見られていたのかもしれない。私服でいる人たちの中に学校の制服を着用しているのは周りの情景とは不一致しているのだろう。俺が委員長を見てそう感じるならば、同じ感性を持つ人間がいるならばそうだと言い切れる。


「委員長はもう定期検診終わったのか?」


「いいえ、これから。そう言う神西君は何を待っているの?」


「俺は」


と言ったところで言葉を止める。昨日今日話したばかりの人間に一花に事を話してもいいのだろうか。家庭内事情を話して気まずい、尚且つ話したところで相手を不快にさせるだけなのは目に見えている。だったのならば適当にはぐらかす方が妥当で好投なのではないか?


「妹と会うんだよ」


妹と会う。それだけの情報を与えた。暴投したのではない、病院で妹と会う。たったそれだけの情報で察してくれとの俺からの内角へ様子見するお願い。聡明な委員長への祈願。人付き合いに対しての懇願だ。


「妹さん。・・・可愛いのかしら?」


委員長は触れてはいけない質問をしてしまった。


「世界で一番可愛い。世界に羽ばたく程可愛いし、天上界に行ってゼウスが求婚してくる程可愛い。いや可愛いじゃ表現は留まらない、錦上添花、絶世独立、眉目秀麗だ。それに何より一花は・・・・可愛い!」


饒舌に語ってしまった。禁断の質問なのだ早口で答えてしまうのは仕方無かろう。妹のことが嫌いな兄がいる訳がない。いたら一花の可愛さを説きに行ってやる。


「妹さんのことが大好きなのは理解できたけど、眉目秀麗は男性に使う熟語よ」


「今のは委員長を試しただけだ」


「神西君に試されるなんて思いもしなかったわ」


クスクスと楽しそうに委員長は笑う。いや本当に試したんだからな、眉目秀麗は男性に形容する言葉ってのは俺は知っていたし。・・・後付けするほどに言い訳がましく無様になるな。虚しい。


俺の願いを汲み取ってくれたのか委員長は一花の容姿へと興味を示した。目も当てられない不細工だった場合も俺は同じ事を口にしている自信があるな。


「神西さーん」


ふと、俺の苗字がロビーに響く。


「じゃあ、妹と会ってくる、また明日な」


「えぇ、また」


委員長は静かに挨拶をして俺を見送った。


「だから何で襲わないの!?お兄ちゃんはオオカミさんじゃないの!?性欲魔人じゃないの!?委員長さんきっと生殺しだよ!?股の間はモーセが海を割った様だよ!?性欲神としてそこのところは譲っちゃ駄目だよ!」


ここまで実の妹に性犯罪を強要される兄もそうそういない。時折歴史的人物に失礼な事を言う妹にはいつかもっと大きな罰が下るのではと兄は冷や汗ものだ。


そもそも一花が不機嫌だったのは惚気話しを聞かされて怒っていたのではなく、性欲神こと俺が委員長を性的な意味で襲わなかった事に対して激怒しているようだ。まだ両手で机を叩いて鼻を鳴らしている。餌を催促する小動物みたいで可愛い。GIFにしてずっと観ておきたいくらい可愛い。いっそのこと動くフィギュアにしよう。いやそれは不出来な邪神が出来上がりそうだから止めておこう。しかし可愛い。


「まぁそのうちな」


適当にはぐらかす事で有名なひと言で一花の怒りを抑える。その言葉に騙されて一花は笑顔を取り戻す。


「ほんと!一発で当ててね!」


「生命誕生の儀式をギャンブルみたいに言うんじゃありません!」


「はーい、反戦、間違えた。反省してまーす」


何をどうやったらそんな危なっかしい言い間違えが出来るんだ。


 後はいつも通りに長い廊下を歩いて不愛想な看守さんの前を通りこの部屋へとやってきたのだが。


「時にお兄ちゃん。時のお兄ちゃん」


「俺は時の涙は見ない」


「トキのお兄ちゃん」


「そんなに筋肉量はない!」


くだらない会話をしてしまった。


「どうしたんだ一花」


また変な質問だろうとたかをくくり軽々と訊ねる。


「後ろ・・・」


一花は俺の頭一個上を指差した。その次の瞬間に俺の首に細く長い指が力を入れて纏わりつく。咄嗟にその指を引き剥がそうとするが指は首を圧迫し隙間に入れる余地がない。その抵抗をすればグイグイと首に深く指が食い込んでいく。


先制を取られ、後手に回ってしまっている俺は立ち上がろうとするもそれさえもさせてもらえずに上から押さえつけられる。後ろには人がいて俺の首を絞めているのが現実。ガラス越しの一花は呆気に取られているのか動かない。


自分の血管が浮いてくるのが分かる。空気を一切吸い込んでいないのだ、そのサインが出てもおかしくはない。


体勢を崩せれば良いのだ。だったのならば!


俺は目の前のガラスを思いっきり蹴る。反動で背後にいる人物と共に背中からひっくり返り視線は灰色の天井を見る。ガラスにはヒビが入ったようだったがどうでもいい。


背後にいる人物は背中から受け身も取れずに盛大に倒けたので俺の首への拘束が緩んだ。それを機に俺は肘を立てて背後へ振り下ろす。肉に肘が入った感覚と背後にいる人物の苦しそうな声が聞こえた。間髪入れずに何度も幾度も相手の腹であろう部分に肘を打ち付ける。それでも首に纏わりつく手は離れない。俺に空気を、生きているとの実感を味合わさせてくれない。


頭の中で今日委員長と一花に言われた言葉がぐるぐると馳け廻る。俺はどんな人間にどんな殺され方をするのか。誰かも判別出来ない状態で絞殺されるのだ。嫌だ、殺されたくない。こんなところで、こんな殺され方、呆気なさ過ぎる。


肘を打つにも体力がいる。徐々に打つ回数は減って行き、気怠く、意識が朦朧とし始める。


一花がまだこちらをじっと見つめている。笑もせずに、泣きもせずに、無表情で、まるで道端で死にゆく虫を見るような眼でこちらを見続けている。


意識が飛びそうな中で手が前から後ろへと変わり。首筋にあった掌は喉を圧迫する。それは即ち相手が俺の前にやってきたという事だ。相手の体が俺の腰にあることから馬乗りになっているのだ。こうなってしまえば死ぬまで秒読みだった。


相手の顔逆光と涙で曇った視界のせいで一切分からない。


何で俺がこんな目に遭っているんだ。ついさっきまで一花と他愛ない会話をしていたのに、いつもと変わらない日常だったのに。あの時と一緒だ。父さんと母さんを失い、一花さえもを失いかけたあの時と同じ。日常の崩壊は突然に始まり、人間の生は突然に終わる。俺はあの時、何が出来た、何をした。何を成し得た。俺は。


「お兄ちゃん」


一花の透き通る声が響いた。


 いつもの響き。忌むべき響き。


 あれ?いつから一花の言葉を嫌っていたのだろうか。あの頃の一花は好きだった。今の一花も大好きだがそれは表面上の一花が好きで。いや違う何を言っているんだ一花の全てが好きで。兄として好きで。家族として好きで。人としても好きだ。


 そう自分に言い聞かせてきた。


「お兄ちゃん」


 お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん。


 一花の声が頭の中で反響する。


 煩い!五月蠅い!うるさい!


「がふっ」


 一花の幻聴を掃うために俺は何かをしたと思う。何をしたのかも定かではない。ただ意識を失う前に熱を持った何かが顔に振りかかり。幻聴ではない一花の声が聞こえた気がした。


「お兄ちゃんはそういう風にやるんだ」


                 次回 神西双葉は遭い慣れないへとつづく

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