再会と宴会
ありのままに今起こったことを話します。
なんの前触れもなく再び異世界に来たと思ったらまさかのホラー展開。久々に再会した友人が何故か血塗れで、手には大きな刃物を持っていました。
超スピードだとか催眠術だとかチャチなものじゃありません。
もっと恐ろしいものの片鱗を現在進行形で味わってます。
「やあやあ、どうもお久しぶりですな、ミアちゃんや」
それはさておき、とりあえず挨拶をしました。
どんな状況でも挨拶は大事です。
どこぞの忍者を殺す忍者もそう言っています。
「えっと、あの……リコちゃ……う、うう」
「おや、どうかしましたか?」
しかし、ミアちゃんは俯いて何やら呻いています。
どうしたのでしょうかね?
もしかすると、これは選択肢を間違えましたか。
理不尽なデッドエンドでなければ良いのですが。
「う、うわああああああん……リコちゃん、会いたかったよぉ……!」
まあ、そんな心配は杞憂でした。
単に感情が昂ぶっていただけだったようです。
持っていた刃物を足下に放り投げると(危険!)、私に抱きついてきました。
私に会えてそこまで喜んでもらえるというのは……ええ、正直悪い気分ではありません。
「おお、よしよし。私も会えて嬉しいですよ」
「うえええん……」
彼女の背に手を回してポンポンと叩いていると、次第に落ち着いてきたようです。
ここまでの過程で私が着ているジャージは血塗れになってしまいましたが、まあ仕方ありません。日本で誰かに見られたらどんな言い訳をしても事件性を否定できませんが、帰るまでに入念に洗濯をすればなんとか誤魔化せるレベルまで持っていけるでしょう。
◆◆◆
「では、再会を祝して乾杯といきましょう」
「なんだか、変わった味の飲み物だねえ」
さて、不審な気配の正体も判明したことですし、私は先程までいた場所に戻って深夜の豪遊を再開することにしました。
当然ながら今度はミアちゃんも一緒です。彼女は着替えを持ってきていたので血の付いていない服に替え、私はジャージの上を脱いでTシャツ姿になっています。多少の血生臭さは残っていますが、だんだん慣れてきたので問題ありません。
コップがないので二人で同じボトルを回し飲みする形になりますが、以前一緒に旅をした際には彼女や他二名とも同じ水筒を普通に共有していましたし、今更気にすることでもありません。
ミアちゃんは飲み慣れないコーラの味と刺激に最初はビックリしていましたが、意外にもイケる口のようで。
「これが油っこいお菓子と合うんですよ」
「ホントだ。一緒に食べると美味しいね」
いや、あの時はこんなことになるなんて思っていませんでしたが、深夜テンションに任せて色々とお菓子類を買っておいて正解でした。
どうやら、ミアちゃんはチョコ系が好みのようで、私が勧めた某きのこと某たけのこを交互に食しては美味しそうに頬を緩めています。
「いや、美味しいですねえ」
「うん、美味しいねえ」
お菓子を肴に残っていた一リットル弱のコーラを早くも飲み干し、二本目に手を出そうかどうか私が迷っていると、
「…………いや、いやいやいや! おかしいよね!? なんで、わたし達普通に談笑してるの!?」
「おお、ミアちゃんや。とうとう、そこに気付いてしまわれたか」
本来入れるべきタイミングを体感で十五分ほど過ぎてから、ミアちゃんのツッコミが入りました。
心なしか以前よりツッコミの切れ味が増しているようです。
久しぶりですが、こういうやり取りは良いものですね。
……いえ正直に言いますと、意味深な血の理由とかあえて触れたくもありません。私としては当座の身の安全さえ確保できれば、それで充分なので。
私は友人がたとえ猟奇的な嗜好に目覚めていたとしても、法廷ではある事ない事証言して無罪を主張するつもりですが、知らずに済むならば出来れば知らないままのほうが精神衛生上よろしいですし。
ま、そんなワケで、なんとなくその件はもう済んだような雰囲気を演出して流せないものかと頑張ってみたのですが、どうやら失敗してしまったようです。
はっはっは、いや残念残念。
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