連戦、連戦、また連戦(※プロローグはだいたいこの辺)
目が覚めたら魔物の大群に襲われていました。
まあ、よくある事です。
「やっぱり、さっきの一撃がまずかったみたいですねぇ」
さっき、といってももう半日くらい前になりますが、私がドラゴンと戦った際の余波で森を広範囲に渡って吹き飛ばして更地にした事がありました。それ自体はもう済んだ案件なのですが、どうやらその時の轟音や衝撃のせいで、近隣の魔物が暴走状態になったようなのです。
それで、しばらくは四人全員で戦って魔道車と中のカトリーヌを守っていたのですが、それがあまりにも長時間続くので、一人ずつ交代で魔道車の中で眠って休みを取る事になったのです。
戦闘中に悠長だと思うかもしれませんが、仮に全員が一度に魔力を使い果たしたら、それこそ最悪です。まあ私に関しては魔力量がかなり多いので例外かもしれませんが、本当に無限なのかどうかはまだ確定していません。
それに、魔物に襲われ続けているとはいっても、常時何百匹も相手にしているのではなく、この魔道車の付近に来たものだけを相手にしているので、大体は数匹から十数匹。その程度なら四人が三人になっても魔道車を守りきれる程度の余裕はありますし、たまに襲撃が途切れたタイミングで魔道車を押して進ませる事も出来ています。
「おはようございます。次休憩どうぞ」
「おう、任せたぞ」
私の次の仮眠はジャックさんです。彼は目の前の
「おはようございます。お水とか食事とか大丈夫ですか」
「じゃあお水もらうね」
「俺はまだ大丈夫だよ」
正面にいた
人間という生き物はどんな過酷な状況でもやがては順応すると聞いた事がありますが、あの言葉は本当だったようですね。
最初は緊迫していた状況にもだんだんと慣れてきて、飲食しながら戦うのももはや余裕です。寝ている時だけは魔法の効果が切れますが、それ以外なら刺されても噛まれても大きな怪我にはならないと身を持って学習したせいかもしれません。
せいぜいがかすり傷でそれもすぐに治る上に、マッチョ状態だとそもそも痛みをあまり感じませんし。どちらかというと、仮眠後の筋肉痛のほうが怪我よりキツイくらいです。
「流石に襲撃も減ってきましたね」
「この辺の魔物は大体狩り尽くしちゃったかもね」
いくらこの広大な森でも、そこに住む生き物の数には限りがあるはずです。我々の進行ルートを彩るように放置されている無数の死骸は既に百や千ではきかないでしょうし、流石にそろそろ打ち止めかもしれませんね。
私のうっかりでこの森の生態系に多大な影響を与えてしまいましたが、この世界に小うるさい環境保護団体がいるとは思えませんし苦情が来る心配はいらないでしょう。
「おっと、言ったそばから……『
近くに生えていた手頃な太さの木の根元にローキックを入れてスパッと切断。そのまま掴み、強く握りすぎて幹を握り潰さないように気を付けながら振り回して頭上から襲いかかろうとしていた大蝙蝠の群れを一網打尽にしました。
『
◆◆◆
「あ、ちょっと魔力足りなくなってきたかも」
「はいはい、じゃあまたいきますよ……『
時折、休憩時間を待たずに皆さんの魔力が切れそうになる事もあります。ロビンさんとジャックさんはそうでもないんですが、まだ魔法を使い始めて日が浅いせいかミアちゃんがそうなる事が多いですね。キャリア三日かそこらだという点を考慮すると、未熟どころか天才の所業だと思いますが。
まあ、そんな時でも私が魔力を肩代わりすれば問題ありません。
眠気や空腹はちゃんと休んだり食べたりしないとどうにもなりませんが、魔力は自前のものを使わなければ少しずつ回復していきます。私の『全体筋力強化』が効いている間に各々の魔力を節約していれば、戦いながらでも回復が出来るという寸法です。
「いや、自分でやっといてなんですが反則くさいですね、コレ」
同格とか格上を相手にこの戦法で回す事は無理だと思いますが、格下が相手ならばいくら数が多くてもこちらは疲弊する事なく一方的に戦い続ける事ができます。
いやはや、この世界がレベル制のシステムを採用していないのが残念です。
これだけ戦ったんですから、ゲームとかだったら大幅にレベルアップしていたでしょうに。確かに戦闘の勘とか慣れとか、あとグロ耐性とか得るものはありましたが、どうせなら見た目で分かりやすい成果の方がやる気が出るんですが。
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