「3Dプリンター」という概念
……長々しゃべった後にやっと旅立ったはずのイケメン勇者だが、3週間後、仲間を伴って再び王城に現れた。
……まだこの付近にいたのか。
「よくぞ戻った。無事仲間を集めたようだな」
勇者の後ろには、大男と、細身の女性と、背広の男性と、小柄な老人の4人が控えている。
「はい。いずれも旅の途中、もしくはその前に出会った仲間です」
「ん? 旅の前というのは?」
「まずは情報収集ということで、城下町を中心に、入念に聞き込みを行いました。その時のことを指します」
「なるほどな。では、どのような仲間を選んだのか、紹介してもらえるか?」
「はい。ですがその前に、勇者の更新登録をお願いします。忘れるといけないので」
「ふむ。わかった」
更新登録担当官を呼び寄せて手続きを行う。この担当官は、美人で、お姉さんタイプの女性だ。髪も長くて艶がある。毛筆の美しさにこだわりがあるようで、しょっちゅう巻物を書き直している。私は彼女のことを心の中で「書き損じ姉さん」と呼んでいる。しかし、口に出す時は「更新登録担当官」だ。
更新登録に使う巻物は1つで、勇者への直接手渡しだ。私が介入することはできない。つまり、偶然手が触れ合う機会自体がない。残念でした!
更新登録手続きを見守った。ともあれ、これで次の更新期限は、今日から6ヶ月後へと延長された。初日は期間に算入しない。王国伝統の「初日不算入の原則」だ。
「して、どうだ? 旅の状況は」
「はい。色々とご報告したいことが」
「うむ」
「情報収集の結果、次のことが判明しました」
イケメン勇者は情報収集の結果を私に説明した。曰く、
1.魔物の中には、長となるものがいることが発覚したらしい。以後、魔王と呼ぶ。
2.魔王は、強大な力を有しているらしい。
3.北の山の向こうには洞窟があり、その奥に、岩に刺さったままの、強力な剣が眠っているらしい。
4.西の海を挟んだ向かい側の大陸は砂漠になっており、砂漠ならではの固い金属で作られた盾が手に入るらしい。
5.南南東の方向には小さな村があり、そこに、炎や氷の影響を受けない特殊な生地があるらしい。
6.城下町に住む発明家、モーゼス老が、伝説の3Dプリンターを開発した。
……ねえ? 最後だけ違和感覚えない? じゃあ正解発表!
「最後だけ、断定なんだな」
そう疑問を口にした。「そこかよ!」とか言わない! そこの人!
「ええ。なぜなら、モーゼス老は、こちらにおわす方だからです」
イケメン勇者はそう言うと、彼の後ろに控えていた、作業用ローブ姿の老人を私に紹介した。やや短めの白ひげを鼻下に蓄えた、小柄な男だ。
偽物じゃないだろうな? まあいい。私は次の疑問をぶつけることにした。
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