間章
インターバル《生きたい》
やはり、
月は中天を過ぎ去り、ビルの山際へ沈み行こうとしている。街灯どころか星明かりすらないその場所は、黒い水の中に浸かっていると錯覚するほどに、暗い。
そんな暗闇の中で《
興奮を抑えきれず、黒い外骨格に包まれた左腕を握りしめる。
途端、くぐもった悲鳴があがった。
《
《
ああそうだった、と《
そして女性の左脚を根元から切り落とす。
途端、ひときわ大きな悲鳴があがる。だが《
そして《鬼憑き》は、左脚の血抜きが済んだことを確認すると、その場に放り捨てた。
まったく面倒なことこの上ない。
しかし、どうしても必要な行為だった。
それは《SCT》を騙す為。
この左脚が《左脚の
《SCT》が、遺体を《
ともかく《左脚の
二週間前に《SCT》が発見した左脚の遺体も、こうして《
この偽装は捜査撹乱の為に行ったものである。少しで構わないから《SCT》の捜査を遅らせ、その間に本物の《左脚の
本来、《
では《
過去に《
本当に、幸せな一年間だった。
たった一年だったが、人間に戻ることができた。
もう一度、その一年がどうしても欲しいかった。
その為に行った偽装は、今日まで上手くいっている。――だが、逆を言えば『本物の《左脚の
つまり、水無瀬飛鳥は誰も喰らっていない、という事になる。
とても不愉快な事実だった。
既に《
一刻も早く、水無瀬飛鳥を喰わねばならない。
水無瀬飛鳥が《左脚の
この五年間、警察と《SCT》を騙し続けてきた。
――が、もう潮時ということか。
「……た、すけて、」
ふと、足元から声が聞こえた。
地面に転がる女性が
だが、それでも女性は懸命に生きようとしていた。助けを求めていた。
諦めなければ、助けが来ると信じたいのだろうか。
《
この女性の気持ちはよくわかる。かつて自分もそう信じ、そして差しのばされた手に――《
本当はもう、こんなこと一刻も早くやめたい。
《
だけど、
それでも生きたいのだ。
そして《
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