第4走 お姉ちゃんと童女の熱い夜
指定された場所は鈴鹿女学院の中庭だった。
日本庭園風の造りをした中庭は、茶道部がよく
その
ぽつりと立ち尽くすのは、振り袖に
――本当に、この小さい子供が?
確かに女教師からは《少女》だと聞かされていた。だが、それを差し引いても小柄過ぎる。厚底のぽっくり下駄を履いているが、それでも身長150センチの
「来たネ」
童女とも老婆ともつかない、若くて
不思議な声だ、と
そして、この声には覚えがあった。
こんな声、そうそう聞けるものではない。
甦るのは昨晩の記憶。
二人の《
そして
「九時間と三十二分ぶりだネ、
「昨晩はアリガトウ。寝かせてやれなくてすまなかったネ」
「ああ、いや――」
「それにしても
「……激しく? 熱い?」
「あァ。
と、何者かの咳払い。
「あのさ、どうでも良いんだけど。本当にどうでも良いんだけど。お姉が誰と何をしようとあたしには
聞いた者の足元が凍りついていくような恐ろしい声。
何か誤解があるようだったが、弁解しようとした途端に殺される予感がする。それは日頃から
と、同時に
こういうのも悪くない。
「ああ、君は
が、
「申し訳ないんですけど、あたし、まだ部活があるんです。用件は早めに済ませて貰ってもいいですか?」
「……それは、済まなかったネ」
取り出したのは、やや焦げ茶色に近い、黒い革の手帳。それを
そこには《警視庁》と書かれた記章がある。
「まず自己紹介。警視庁捜査一課の
「警視庁?」
「まあ……すぐに信じろとは言わないサ」
言って、
途端、絹糸のような白髪がふわりと地面へと広がった。小さな体躯を覆わんばかりに長い髪。中庭に燦々と差し込む陽光が、キラキラと白髪を輝かせる。
垂れ衣に隠れていた素顔も露わになり、見覚えのある幼さの残る口元と、朱の入る頬が目に入った。顔の上半分は長い前髪に隠れてしまっており、目元までは見えない。
が、その程度ならば、少々個性的な人だと思うだけだっただろう。
「…………え、」
ソレに気づいたのだ。
最初は髪飾りか何かだと思っただろう。当然だ。一度『ソレ』を見ている
まるで、鬼のツノのように。
「しかし、事態は一刻を争う。まずは話を聞いて欲シイ」
鈍く二本の六角ボルトを輝かせて、
「
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