ヘビキノコモドキ(Amanita spissacea)

 ある文献に、「毒茸の下には毒蛇が棲む」という中国の故事があると書かれている。松江城内で一番多く目にするきのこには蛇という名前が付いているが、同時にその牴牾もどきでもある。ちなみにそのきのこはなかなかの猛毒らしいので、毒なんだか蛇なんだか牴牾なんだか、もうなんだかよくわからない。


 というわけで今回は、「ヘビキノコモドキ」の話である。


 テングタケ科テングタケ属の外生菌根菌きのこで、学名を「Amanita spissacea」、漢字で書くと「蛇茸擬」である。前述のとおりヘビと名が付いているくらいだからなかなかの猛毒キノコである。毒成分はアマトキシン類、溶血性タンパク。


 アマトキシン類とはα-アマニチンという毒素を含む化合物の総称である。α-アマニチンはテングタケ科の毒きのこから発見された毒素で、熱に対して安定しているため一般的な加熱調理程度では分解されない。ようするに焼いたり煮たりしても毒が消えませんよということである。またこの毒素は遅効性を持ち、症状が現れた際には摂取した毒素の大部分が生体内に吸収されてしまっているため対処が困難であり、加えてこの毒素に対する解毒剤は存在しない。さらに溶血性タンパクを含むので、赤血球が破壊される。


 はい、みなさん、松江城内に山のように生えているきのこはとっても危険な毒きのこだということです。よい子のみんなはけっしておやつ半分に食べてはいけませんよ。


 またこのヘビキノコモドキには近縁種が複数存在するので、微妙に形状の違ったものや色味の違ったものも多数見受けられる。もしかしたら松江城内にだって新種のテングタケ科のきのこが生えているかもしれない。新種のきのこを見つけたら、発見者が名前を付けられるのだろうか?


 それならば次の目標は新種発見ということで、今回はお開きである。

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