シロコナカブリ(Mycena alphitophora)

 きのこを探していると、おのずと日常的な視点を崩して世界を見るようになる。ちょっと視点を変えるだけで世界はとてつもない広がりを見せる。小さい小さいきのこに夢中になってその形状を観察していると、その周囲の小さな小さな生き物も一緒に目に飛び込んでくる。小さな昆虫の体に寄生しているもっともっと小さな生き物が這いまわっているのが見えてきて、ゾッとしたりする。なんて世界は奥深くて広大なんだと、意味不明な恐怖感がこみ上げてくる。


 そんなわけで、今回は「シロコナカブリ」の話である。


 ラッシタケ科クヌギタケ属のきのこで、学名を「Mycena alphitophora」、漢字で書くと「白粉冠」、あるいは「白粉被」であろうか。たぶんきのこを探そうとでも思って歩いていないとまず見つからないような小さな小さなきのこである。傘も柄も透明感がある白色で、全体が白色の粉におおわれている美しい容姿はいくら見ていても飽きが来ない。ちなみに食用には向いていないと文献には書かれているが、食毒は不明である。


 このきのこが生えていたのは松江城でもいちばん人通りのある本丸手前の門の脇で、ぼくがうずくまって必至で写真を撮っている際にも沢山の人がぼくの背後を通り過ぎていった。「あの人はあんなところにウ◯コ座りして、いったい何をやっているんだろうか、もう間に合わなくてウ◯コでもしているんだろうか、かわいそうね。」と完全に異人扱いされていたことであろうが、それもまた一興である。ぼくは松江城できのこを探しているのだから。


 まあそんなこんなで、視点を変えることでもっともっと広大な世界にダイブできることを、きのこは教えてくれる(幻覚キノコを食べるってことじゃないよ)。


 もっと世界の深淵に目をむけたまえ、人々よ。

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