第7話 引っ掛けリーチをさせてくれ
今回の話は、麻雀の技術部分に突っ込んだ話であるので、あまり麻雀に詳しくないという方は読み飛ばしていただく方がよいかもしれない。が、「引っ掛けリーチ」という言葉に聞き覚えのある方々は、ぜひ読んでほしい。
メンバーのあれこれについては、今までの話でいろいろと書いたが、さらにメンバーが麻雀を打つ上では、様々な「縛り」がある。明確に禁止されている時もあるし、マナーと扱われる時もある。
たまに「当店ではメンバーの打牌制限はありません。あらかじめご了承ください」という張り紙をしている店もあるが、だからといって、率先してなんでもやっていいという訳でもないから、辛いものがある。
その最たる例が、「引っ掛けリーチ」である。
そもそも引っ掛けリーチとはなにか。ここまで読んでいただいた方は、ご了承済みのことだろうが、改めてちょこっとだけ解説する。
麻雀用語に「筋」というものがある。これは、1-4-7、2-5-8、3-6-9のことであり、「1と7は4の筋」というような言い方をされる。だからなんなのか、というと、麻雀で好形の待ちとされる両面待ちの場合、必ずこの筋で待つことなる。例えば、
23 なら1と4で
45 なら3と6で
という風に。
これを翻して考えれば、事前に4を切っている場合、1は当たりにくい、という理論になる。これは実際に有効な理論で、和了りやすさを追求した場合、平均的に両面待ちになるから、現物がなくて困った、という時は筋を追う。
そしてこれを逆手に取ったのが「引っ掛け」。「筋引っ掛け」とも言うが、「4が切れてるから1や7が通りやすい」という理屈に対して、1や7で待つ戦略である。
特に筋というものを覚えたての初心者は引っかかりやすい、いわゆるチープなブービートラップみたいなものに過ぎない。
が、多くの店舗ではメンバーはこれを制限される。曰く、マナー違反。
筆者は――きっと多くのメンバー諸君が思っていることであろう――この制限を非常に不快に感じている。憤激している、とさえ言い換えてもよい。
マナー違反? 金を取り合う卓上においてマナーも糞もあるか、と言いたい。引っかかる方が悪いのだ。確かに筋を追うのは有効な方法だと言ったが、とはいっても、待ちの種類は両面の他に、ペンチャン、カンチャン、シャンポンとある。両面なんて、4つの内の1つにしか過ぎないというのに、筋を過信してきたブービー(間抜け)を討ち取って何が悪いというのか。
また、手なりで筋引っ掛けができてしまう時もある。例えば、
③⑤⑦⑨2345678白白
という形で、筒子が飛び飛びのカンチャン3の形から、1を引いたなら、とりあえず打つ⑨だろう。そして、続いて6を引いてしまったら、一気通貫は消失し、③⑤⑦の形から、③or⑦の選択を迫られる。
この時、既に河に①を捨てていた場合、この手牌が両面になることを至難であるから、カンチャンリーチを決行することとなるが、
③を切った場合はカン⑥
⑦を切った場合はカン④
どちらにせよ、中筋の引っ掛けとなる。
また、リーチ宣言牌と引っ掛けをすることを「モロヒ」(モロ引っ掛けの略)という。上記リーチも一応モロヒの類型のひとつとなろうが、4、5、6をリーチ宣言牌にして、その筋で待つことを言う。
例えば、
①②③④⑧⑨456789中中
の状態から④切りリーチで待つことを、嫌う客は多い。
まあ、この場合は①を切ってリーチならば、引っ掛けにはならないが、例えば次の場合はどうだろう。
②③④④⑧⑨456789中中
この状態からどうしろというのだ、⑧⑨のペンチャンを払って、③や⑤の引っ付くの待って両面にする、とか、中で出たらそれをポンして①-④に受けろとでもいうのか。
たしかに、⑧⑨をカンチャンを払いに掛かって、次巡のツモで運よく③や⑤を引ければ幸運だが、そんな都合のよいことは珍しいし、むしろ直接⑦を引いてしまったら痛恨の一撃だ。中をポンしろといっても、いつ出るかわからない中なんか待っていられない。それに和了時の期待値も下がる。④切ってヤミテン? バカか、それこそ他家から⑦が出た時のダメージがでかい。
素直に④切りリーチをさせてくれ。これくらいいいじゃないか。
それに、昨今の研究では、リーチ宣言牌の筋は比較的危険という結論が出ている。468のリャンカン系から4切ってリーチなどの場面が多いからだ。そんなことも知らずに間抜けにも4の筋を追って7で振り込んでも、それはブービー君が悪い、ということにならないものかしら?
基本的に、麻雀は振り込むやつが悪いのだ。大物手と大物手のリーチ合戦の末、打ち込んでしまった、という場面もままあるが、この場合だって、悔しがるにしろ怒ったり機嫌を悪くするべきではない。
いわんや、気軽にペンチャンでリーチして、親の両面に振り込むようなことをしておいて、頭に血を上らせているようなやつは、それこそ間抜けである。舐めリー打ったやつが悪い。
カンチャンの役無しで待ちが不安なら、しばらくヤミテンにしておいて両面の十分形になってからリーチすればいいし、ペンチャンの役無しなら延々ヤミテンにしておいて、親のリーチが掛かったらそこから降りればいい。
リーチは打点が跳ね上がるが、同時にリスクも跳ね上がるものということを常に留意しておきたい。
……話がそれた。リーチのメリットデメリットなんてどうでもいい。閑話休題、引っ掛けリーチの話に戻ろう。
引っ掛けリーチをさせてくれ、という場面は他にもある。例えば、
33677⑨⑨⑨白白白中中
という手牌で、中を引いてきた。言わずもがな、四暗刻聴牌である。が、もちろんただの三暗刻に取ることもできる。
とはいえ、これを7切ってリーチに行くやつがいるか? まぁ、既に3と7が枯れていたり、親のリーチが掛かっていて7が現物、という状況ならそうなるだろうが、完全フリーの状態で先制リーチなら、まず間違いなく6を切って威勢よくリーチをし、そして一発3か7をツモり、高々と役満を和了りたい。その上裏も乗っけてご祝儀ごっそり頂きたい。
だから筆者は高々と6切りリーチを行った。結果は、筋を追ってきた対子の3を討ち取ってリーチ一発対々和三暗刻に落ち着いたが、この客が帰りフリーがバテたあと、この対局を見ていたオーナーに呼び出され注意を受けた。怒りを通り越してもはや屈辱であった。
要するに、引っ掛けリーチはマナー違反という風潮はどうかしてるぜまったく、というお話であった。これを読んだ諸君らには、ぜひ引っ掛けリーチを悪びれない気持ちを抱いていただきたい。
小話4
ちなみに、筆者は客としてほかの店舗でフリー麻雀を打つときは、引っ掛けを多用する。サンマは基本的に全赤華アリルールと述べたが、それゆえ、468のリャンカンの形なんかの時は、打点を狙って8切りリーチをする人も少なくない。
が、筆者はノータイムで4切り一択である。例えそれが、リーチドラ1の手であっても、揺るぎはない。
なにせ、サンマにおいてはリーチ後に華を引いて打点が伸びる可能性があるし、牌の種類が少ない分、裏ドラも乗りやすい。しかも、仮に一発で7をツモって来た場合、リーチドラ1のカンチャンリーチが、リーチ一発ツモドラ1の満貫和了りに化けることだってある。そこに暗刻や雀頭が裏ドラに乗ってみろ、それだけで跳満だ。
4人打ちをする時だって、迷わず引っ掛ける。4人麻雀においては、打点よりも基本は和了りやすさ重視だ。ただでさえ出にくい5と、筋を切ることでわずかでも出やすい7なら、当然の後者である。
そういう戦略面の話もあるが、それ以上に、筋を追いかけて打ち込んだ間抜け面を拝むのが好きなのもある。
……これは悪い例。
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