第2話 フリーの闇


 フリー業務は闇。と前回締めくくったが、なにがどのように闇なのか。フリー麻雀に行ったことのある人ならピンと来るだろうが、麻雀なんて、天鳳やMJでしか打ったことがない、という方々にもわかりやすく説明していきたいと思う。

 まず、麻雀を打ちたいが友達がいないAさんがいるとする。Aさんは、常日頃麻雀を打ちたい打ちたいと考えているが、いかんせん、友達がいない。そんな時どうすればいいのか。

 そこでフリーの登場である。Aさんはひとりで雀荘へ行き、同じような境遇の人たちと麻雀を打つ機会を得る訳である。

 が、ここでひとつ問題が浮上する。なんと、そのような人たちが、ふたりしかいなかったのだ。

 ふたりじゃ、とてもじゃないが麻雀にならない。ここで登場するのが、「メンバー」である。

 メンバーは雀荘が雇っている従業員たちのことであり、セットのお客様に飲み物を持って行ったり、使った後の卓の清掃などの仕事をする。

 と、同時に、お客様が不足している時に、お客様の代わりに麻雀を打つのである。これを「入り」だとか「本走」だとかいうが、つまるところ、プレイヤーのひとりとして麻雀に参加するのである。

 麻雀好きの諸君らは、きっとこんな風に思うだろう。

「仕事で麻雀打てるなんて幸せじゃん!」

 あなあさはかきかな。これが闇の一歩目である。

 さて、それでは麻雀開始である。当然、お客様はお金を賭けて臨んでいる訳であるから、メンバーも同様にお金を賭ける。では、そのメンバーのお金はどこから出るのだろうか。

 雀荘が保証してくれる? 馬鹿を言うな。すべて、各メンバーの給料から出るのである。

 つまり、10000円負ければ、給料が1万円減る。といった具合だ。

「あれ、でもちょっと待って? それじゃあ勝てばいーじゃん」

 なるほど、至極正論である。勝てばいいのである。勝てば当然、その勝ち分は給料に上乗せされる。勝ち続ければ、反対に一日の給料にプラス10000円加わるかもしれない。

 が、現実はそこまで甘くはないのである。それは、勝ち続けるのが難しい、とかいうそういう次元の話ではなく、(むろん勝ち続けるのも当然難しいのだが)フリーという業務の仕組みにアナがある。

 セット業務における収益は、1時間あたり1000円と述べたが、フリーにおいてはどうだろうか。同じように1時間経ったら、参加者から250円ずつもらうのだろうか。

 しかしそういう訳にもいかない。例えば、1時間半遊戯したプレイヤーが急用で抜けなければならなくなった時、いちいち375円を彼から徴収する。なんてこと、とてもじゃないができやしない。作業が煩雑で、フリー卓が複数立ったりなんかして、客の数も増えた時、どうにも対処しきれなくなるだろう。

 そこで、フリー業務の場合、1半荘で料金を頂くこととなっている。すなわち、ゲーム1回分である。東南戦が終了し、各プレイヤーのスコアが出た際に、全員からゲーム代を徴収する。

 例えば、ゲーム代が1600円としよう。この場合、各プレイヤーから400円ずつ店が抜き取る。4人麻雀の場合、1回の半荘の平均遊戯時間は1時間前後なので、1600円毎時ということとなる。

 さて、敏い皆さまならばお分かりいただけることだろう。つまり各プレイヤーは、1半荘ごとに、店に400円ぶん取られている訳だ。

「1時間で400円くらい、大したことないんじゃないの?」

 と考える方もいるだろう。ここで、フリー麻雀における平均的なプレイヤーの損益について少しご紹介する。

 4人打ち、レートがハーフ(1000点=50円)の場合、

 1着=+2500円~+3000円

 2着=-500円~+500円

 3着=-1000円~-500円

 4着=-1500円~-2000円


 ぐらいが各プレイヤーの純粋な損益だろう(むろん、店舗のルールによってもう少し大きくなったり小さくなったりする)。そして、店側は、ここから各プレイヤーに-400円を課す。

 となると、トップであったとしても、だいたい+2000円~+2500円くらいがいいところである。

 1着2着1着と続けばよいが、麻雀なんて運の要素の強いゲーム。当然、調子の悪い時もある。そしてそれが続く時もある。

 仮に、4着4着4着と立て続けにとってしまうとする。そうすると、


 -1750(平均値)×3-1200(3回分のゲーム代)=-6450円


 の負けとなる。時給1000円だとしても、これだけ6時間ただ働きとなってしまう。

 仮に勝ち続けたとしても、少なくとも1時間あたり、400円は店に差っ引かれているのである。損な話じゃないだろうか。




■小話その1


 よく雀荘の業態を知らない人たちから、「メンバーはゲーム代支払わなくていいんじゃないの?」という質問を受けるが、とんでもない。メンバーもプレイヤーの一人として麻雀を打っているため、当然ゲーム代は納めなくてはならない。

 その代わりといってはなんだが、「ゲームバック」というものがある場合もある。これは、2半荘に1回だとか、3半荘に1回だとか、ゲーム代の一部が、メンバーに返ってくるというシステムだ。

 1回のゲームバックあたり100円とか200円だが、積み重なると結構馬鹿にならない額になる。まぁ、一種のメンバー救済システムだ。

 これがなかったら、今頃筆者の携帯は止まり、その上食うに飢えているかもしれない。

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