到着。駅を出るとそこには立派なビルが立ち広がっている。そして、国技館も見えて来た。その隣に立っているビル、そこに博物館がある。


「ここか...」


しげしげと外装を眺めてみる。厳かな屋敷では無く、近代的な建物だった。


「今は妖怪展とやらが開催中らしい。どうだ?行ってみるか?」


「よ...よ...妖怪...?」


後ずさりをしながら清ちゃんは俺たちとの距離を広げている。


「う〜ん...ダメみたいだね...」


白い肌が青白くなっている。下手したらここで倒れるかもしれないな。


「最近の妖怪は可愛いの者が多いと聞いたが...?」


「誰に?」


「職場に来る、主婦の方々からだ。なんと子供達の間で流行しているらしい。お清さんなら気に入ると思うのだが...」


チラリと視線をやると頭を勢い良く左右に振り出した。どうあっても妖怪の類いは苦手の様だ。


「苦手みたいだね。仕方無いからその案は、却下で」


「そうか。了解、では順番に見て回ることで良いか?」


それには賛成な様で、頭を上下に振っている。俺たちは5階から順番に見て回る事にした。そこには昔...江戸時代に使っていたと言う物がいっぱい。中には人力車もある。


「へぇ...凄いね。昔ってこんな生活してたんだな...」


中学生の時の記憶は忘却の彼方へ。改めて見る博物館はそれはそれで新鮮だった。昔の洗面道具、傘...鍋...ところどころ、現代に通ずるもの感じる。


「これ...懐かしい...使ってました。あ、これも!...これは乗った事ないなぁ...いいなぁ...」


嬉しそうな顔をしてはしゃいでいる。多分、嬉しいの中に懐かしさと愛おしさを混ぜた様な表情。ここに連れて来て良かったのかもしれない、思いつきの割に。


すずりも鏡掛も...母や姉が使っていました...懐かしいなぁ」


「この模様が入った櫛!数量が少なく、貴重な一品です!」


どうやらハイテンションスイッチが入ってしまったみたいだ。秋葉原にいる面白いお兄さん方と、趣向は異なるが同じ様な行動を取っていると思う。


「清ちゃん...何か、思い出せそう?」


「ええっと...漠然と思い出せてきましたが...まだ...」


迂闊だったか。勢いがみるみるうちに下がっていく。


「ま、気楽にやろうよ。それにしても大きな橋だなぁ...」


頭上には大きな橋が掛かっている。上のフロアに行けば渡れるみたいだし。


日本橋にほんばし...?何故、ここに...?」


清ちゃんは不思議そうに、首を小さく傾けた。

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