7
ガタン、ゴトン...独特な音をかき鳴らし、電車がホームに近づいてくる。ってここホームだったんかい!?そう思える程の、平坦な場所だったから気がつかなかったけれど、レールがうっすらと敷かれていた。
プシュー。
ドアーが開く音が鳴った。それに伴い、ゾロゾロと電車から降りる人や乗り込む人影が。
「どうしよう...兄貴?」
「うむ、ここに来た手前乗らないで帰るのも勿体無い。折角だから乗ってみよう」
そう言うと兄貴は立ち上がる。俺も清ちゃんの腕を掴むとその後を追った。ドアーが閉まる。清ちゃんは少々、息づかいが荒くなっている様子だが、どうしようもないって程では無さそうだ。それに運良く座席も空いているみたいだし。
「清ちゃん、座りなよ」
「あ...はい...ありがとうございます...」
どうにも元気が無い。
「う〜ん、大丈夫?」
「いえ、大丈夫です...少し目眩がするくらいで...その、私の為に連れて来て頂いたのに申し訳ありません...」
がっくりと肩を落とし、落ち込んでいる様子だ。
「いいよ、いいよ。こうしてちょっとした旅行が出来たんだからさ」
「そうだ。それにこの都電荒川線は現在、貴重な軌道路線。滅多に乗る機会が無いからな...」
兄貴は、感慨深そうに腕を組みながら頭を上下させた。
「そうだね...すぐ隣を自動車が走ってるなんて、普通の電車じゃほとんど見ないからね〜」
「信号で停車する光景は他では見る事が出来ん。せっかくだ、目に焼き付けておこう」
「でも凄いです。私が知らない事ばかり...」
どうやら、少し回復したみたいだ。
「知らない知識を得る事って楽しいですよね...驚く事ばかりで、勉強になります」
...なんて素晴らしい娘なんだろう!勉強が楽しい?聞いた事が無いぞ...そんな人間!
「そっか。まぁ若いんだし色んな事を覚えてみたら良いと思うよ。役に立つ日が来るかもしれないしね」
「はい!とても...とても楽しみです!」
初めてみたその笑顔はひまわりの様に眩しかった。ああ、夏よどうして君はそんなに俺を照らして行くんだい?何も言えなくて...夏。
おっと、一瞬、頭がおかしくなってしまった。夏バテだろう、きっと。
「さて...とじゃあ次は何処へ行こうかな...ん?」
その時、脳裏に記憶が蘇る。あれ?確か...。あれは中学の時だったような...?クラスの行事で連れて行かれた場所。
今現在の日本と異なった時代の生活が飾られていた場所...
「江戸...晴海?違う。江戸東京...」
「
「それ!それそれ!!確か、昔行った記憶があるんだけど...」
「方向としては真逆だが...行ってみるか?」
「江戸の町屋って言うのがそこにあるかもしれないからさ」
そう言うと俺たちは途中の駅で降りると、電車を乗り継いで博物館へと歩みを進めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます