「この辺りが人気のブランドで、これがセール品。そして10代くらいなら...このブランドが良いと言っている」


兄貴は今、聞いてきた話を包み隠さず俺たちに教えてくれた。まぁ、無難な服の方が良いと思うけど。


「そうですね~、若くて色も白いですし、この辺りなんかどうでしょう?」


店員さんもにこやかに話しかけてくる。手にはいくつかの服を持っていた。


「花柄のワンピースか...どうだ?」


黄色地に白やピンクの花柄のワンピース。ちょっと派手な気もするけれどこれくらいなら良いんじゃないかな。

試着室を借り、中で着替えるように促す。


「あとは、これとか~」


白いTシャツに、今流行りのガウチョパンツ。う~ん、清ちゃんのイメージには合わないかなぁ?


「ボンタンみたいなズボンか。裾が引っかかって動きづらいだろう」


「うん、工事してる作業着みたいで清ちゃんのイメージには合わないよね」


ここでまさかの兄弟一致。


「それならばこれとか...」


フリルのついたオレンジのスカートと腰にはベルト。水色のボーダー柄ノースリーブのシャツか。


「それで髪をアップにすれば~」


店員さんから髪留めを借り、紙を結う。おおっ、ちょっと見違えたぞ...


「あの、ちょっと、恥ずかしいです...」


スカートの裾を押さえながら顔を赤らめて言った。


「全部、お似合いですよ~?」


「そうだな、どれも似合っていたぞ。自分でゆっくり決めれば良い」


「お兄さん、妹さんに優しいんですね?」


「はっはっは、人間、タフじゃなくては生きていけない。優しくなくては、生きている資格はないからな、はっはっはっは!」


「?は、ははは...」


店員さんも引いてらっしゃる。妹か、そういう風に見られているのかな。


「あとは...これなんか...」


店員さんはあれよあれよと色んな服を勧めてきた。それを清ちゃんは全部着て、少し恥ずかしそうにリアクションする。そんな感じだった。そして


「合計で、7万3860円です」


結構な額の買い物になりました。普通なら驚く額ですよ、これ。まぁ、支払いは兄貴だから別に構いやしないんだけどね。


「さてと準備も完了したし、町屋を目指すとするか」


服や靴を買い、準備が整った...荷物持ちは俺と兄貴。スタート地点からフル装備になってしまって大丈夫なのだろうか?


「ちょ、ちょっと待って下さい、まだ慣れなくって...」


ヒール付きサンダルに慣れない様で、フラフラしながら歩いている。荷物は危なっかしくって持たせられないな、こりゃ。


「おっとすまん、すまん。ここから地下鉄に乗るからな、1回の乗り換えで後は座りっぱなしだ」


と先頭を歩く兄貴は階段を上っていった。彼には地下の意味が分かっていないらしい。

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