飯も食ったし、準備も終わったしそろそろ出発かな。時刻は朝7時。こんな時間から繰り出すのもどうかと思うが。


「そういえば、さ。清ちゃんの服ってそれでいいの?」


3人の視線が一箇所にお集まる。俺の中学時代のジャージにTシャツじゃあねぇ...流石に年頃の女の子がこの格好はマズイでしょ。


「そうだな。余所行きの服を準備しないといかんな」


「んーなこと言っても俺の服はもちろんの事、兄貴の服は論外、母さんの服だって似合わないよ!」


ああ、こんなんなら兄貴でなく姉貴が居る家に生まれて来るべきだった。


「仕方あるまい。もう少し待ってみよう、そして渋谷か池袋で買い物をした方が結果としていいかもしれん」


兄貴の口から都会の名前が!?


「兄貴、頭大丈夫?」


「ん?平熱だ、問題ない」


元からおかしい人に聞いたのはマズかったか...しかし、この際そっちの方がいいかもしんない。


「店はだいたい10時くらいから始まるだろう。多く見積もって、11時半くらいに買い物を終えてから向かえば12時過ぎくらいには町屋につくだろう」


「ってーと9時くらいには家を出れば十分間に合うって訳だね?」


「そうだ。皆の衆、遅れの無いようにな!」


そこで一旦、解散になった。まぁ、そんな壮大な話でも無いんだが...2階へ戻っていく兄貴。恐らく、トレーニングでもするつもりなんだろう。


「ねぇ清ちゃん?」


「はい、なんでしょう?」


「兄貴の勝手な独断専行で決めちゃって良かった?」


「いえ...お世話になっている身なので構いません...それに少し楽しみで」


「あ、そうなんだ...それなら良いんだけど」


兄貴の暴走かと思ったけれど、楽しみにしてくれてるんなら良かったかな。あと2時間...どうすっかな...とりあえずソファーで寝てようかな...


「あと2時間くらいあるからゴロゴロしてて良いよ」


「掃除や洗濯はございますか...?私、やりますよ」


なるほど...確かに折角の早起きだし、これを期に掃除をするのも良いかもしんない。が、リビングは掃除したしなぁ...


「じゃあ、掃除と布団干しをやろうか」


「はい!」


こうして俺達は朝から掃除と布団し、ついにはワックス掛けまで終わらせてしまった。清ちゃんはその一挙手、一投足を驚いた様に目を丸くしていたのが特徴的だった。そうすれば必ず...


「うわぁ...分かってたけど汗びっしょりだ...」


こうなりゃシャワーを浴びてからじゃないとダメだな。


「裕哉、風呂か」


「ああ、掃除したら汗かいちゃってな」


「俺もだ」


「兄貴は筋トレしてただけだろ!」


「ふふっ...」


その横でクスクスと笑う清ちゃん。彼女は汗とは無縁のようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る